「チャーリー、マルク。よくきたな。取引といこう」
待ち合わせ場所に、チャーリーとマルクは共を連れず、二人で現れた。
アーロンとリアムは二人を出迎える。
「森、の民か」
「そうだ。チャーリー。十九年ぶりだな」
アーロンはチャーリーに笑いかける。
「イザベラの友達か」
「まあ、そんなところだ」
アーロンは特にイザベラと親しくしていたわけではない。
あの時、たまたまイザベラと他の二人の娘の護衛をしていたのだ。
イザベラはあの中で一番若く、アーロンが親しかったのは別の二人の娘だ。チャーリーのことがあってから、ぎこちなくなり、結局二人の娘のどちらとも付き合うこともなく、未だに独身を貫いている。
「イザベラに似たあの子を欲したか?」
「馬鹿野郎。そんなわけないだろうが」
「アーロンはあなたとは違うよ。陛下」
二人の話にリアムが割って入り、チャーリーは彼を睨む。
そしてリアムが城に入り込み、不死身の兵士を作り出した元凶だと気が付き、視線に殺気がこもる。
「怖いなあ。冗談だよ。まったく」
「陛下。戯言はその辺にして、本題に入りましょう」
チャーリーの背後にいたマルクはしびれを切らして、口を開いた。
「狂人博士のマルク様。そう焦らなくてもいいのに。あなたは俺たちの血も欲しいんだよね?俺たちだったら、チャーリーが止めないから、解剖したいとか思ってる?」
「森の民。あなたの口はよく回りますな。その通り。私の実験にお付き合いいただく気でもあるのですかな」
「嫌だな。気持ち悪い」
リアムが両腕を抱え込み、震えるような動作を見せる。
「もう十分だ。娘を返してもらおう」
「いいよ。はい」
リアムは乱暴に麻袋を放り投げる。
鈍い音がして麻袋が床に落ち、チャーリーが慌てて麻袋に駆け寄る。
「殺したのか?」
「とんでもない」
チャーリーは麻袋を開けようとした。
その瞬間を狙って、アーロンが攻撃を仕掛けた。
しかし、チャーリーは普通の人より身体能力が高い。
しかも日々鍛錬をしている。
麻袋を抱え、彼の攻撃を避けた。
「すごいな。お前」
外の人間だと甘く見ていたアーロンは驚く。
「俺たちの血が入っていると、こんなに動きが違うんだね」
リアムはすでにチャーリーと対立しており、その実力を知っているので、驚きはない。
「二人がかりでやるぞ!」
アーロンがそう言って、攻撃を仕掛けようとした瞬間、八方から矢が飛んできた。
「そうは甘くいかないか!」
いつの間にか兵士たちがアーロンたちを囲んでいた。
遠くから弓矢を構えている。
こうなればとる道は一つだ。
アーロンはマルクを捕まえ、その首に小剣を当てる。
「チャーリー。叔父を不死身の兵士にしたいか?」
「陛下!」
マルクは戦闘に参加したこともなく、剣すら持ったことがない男だった。
まさか自分が人質になると思わず、泣きそうな声でチャーリーを呼ぶ。
チャーリーは麻袋を開け、中身を確認していた。
中にいたのはレイアと同じ大きさの人形。人形はレイアが来ていたドレスを身に着けていた。
「レイアは、どこにいる?」
チャーリーは低い声でアーロンに問う。
マルクなど眼中にないようだった。
「陛下!」
「明日になればわかるかもね」
リアムがおどけて答え、チャーリーが睨む。
そろそろ潮時だろうと、アーロンがマルクを拘束したまま、逃げ出した。
マルクは王(チャーリー)の叔父で、子供がいないとされているチャーリーの次に王位継承権を持つ。
兵士たちはマルクを連れたアーロンに矢を射かけることができず、とアーロンとリアムを見逃した。
マルクが叫ぶため、アーロンは彼の口を布で縛りつけた。
隠れ家に戻ってから、マルクの手足を括り付けて、床に放置する。
マルクはアーロンたちを睨みながら、唸っている。
「殺したほうがよかったか」
「そうかもね。生きていても俺たちの害にしかならないだろうし」
「まあ、今は生かしておくか。人質としては役にたってくれたからな」
多勢に無勢だったところを無傷で逃げることができたのは、兵士がマルクを傷つけようとしなかったおかげだ。
しかしチャーリーはマルクに対して何も感じていない様子だった。
「お前、実の甥に嫌われているかもな」
「アーロン。痛いところつくね」
マルクは顔を真っ赤にして唸っているが、口を塞がれているため、ただ唸ることしかできなかった。