運がよいのか悪いのか、カルテナの森に入るとすぐに、あの魔獣が現れた。
紫色で、蜥蜴によく似た魔獣だ。
口から吐き出す紫色の液体に触れたら、呪われる。
景気よくそいつらは現れて、俺たちはコアを探して切っていく。
液体を吐かれる前に、殺す。
そのつもりだったけど、油断したのか、グラシアは背後の奴に気がついてなかった。
口が開く。
(呪いが再びかかれば、呪いは解けるかもしれない)
そんな考えが一瞬過ったが、俺は頭を横にふり、駆けだす。
グラシアは俺のために、呪いにかかったんだ。
あの時ちゃんと、殺していれば。
「このやろう!」
俺は剣を被り振り、そいつを叩き切った。
「カミロ!」
背後から声がした。
振り返ると、紫色の魔獣がすぐそばにいて、その後ろではグラシアが剣を振りかぶっていた。
魔獣を切る音と、俺が紫色の液体を全身に浴びるのは同時だった。
「うう」
紫色の液体は蒸発していく。
同時に俺の体が変化する。
手が小さくなった。それから胸が膨らみ……。
「カミロ!なんで、そんな胸が!」
「がはは!カミロ、そのデカパイがお前の趣味か?」
俺は、呪いを受けて女体化していた。
しかもかなり胸の大きな……。
「私が女性だった時より、胸がおっきいね。すごい。触っていい?」
「だ、」
口から出た声が甲高い。
胸を触られるのは嫌だ。
だけど、グラシアなら。
「うお!やわらかいなあ。カミロ、すげぇじゃねーか!」
「アリシオ先輩!」
俺とグラシアの声は同時だった。
しかし、彼女の声には怒声が含まれいてる。
「その手、切り落としていいよね?アリシオ先輩?」
「グラシア?何、怒って。お前も興味あれば、さわ」
「触らない。絶対に!」
え?グラシアは俺の胸に興味ないの?
え?
「ふう。こんな展開は予想してたけど、残念よ。女の子のカミロになんて興味ないわ」
「ギエム先輩!?」
「まあ、あなたにとってはいいことじゃない?これで告白できちゃうじゃない。お付き合いも可能だわ。私はとても残念だけどね」
「ギエム先輩。何を言っているんですか?こんな呪い、解くに決まってますから!」
「カミロ。え?呪い、解きたいの?カミロ、可愛いよ。初めて会った時みたい」
「そうだ、そうだ。カミロ。そのむね、」
「アリシオ先輩は黙って」
グラシアのアリシオ先輩に対する態度がものすごい怖いんだけど?
和気あいあいしていたよな?
「まあ、とりあえず戻るわよ?分隊長が首を長くして帰りを待っているだろうし」
「そうだな。そうしようぜ。カミロ、後でシャワー一緒に浴びようぜ」
「浴びるわけない。カミロは私と浴びるので」
「は?グラシア?」
カミロは私の手を掴むと、ぐいぐいと歩き出してしまった。
「グラシア、カミロ!後始末はちゃんとつけるわよ。また戻ってきたい?」
「すみません」
「ごめんなさい」
俺があやまり、グラシアもそれに続く。
隙あれば俺に近づいてくるアリシオ先輩を牽制しながら、俺たちは倒した魔獣を一か所にまとめたり、そのコアを集めたりした。
魔獣のコアを放置していると、他の魔獣がそれを吸収して強化されたりするから厄介で、倒した魔獣のコアは壊れていても集めないといけない。集めたコアには魔力が含まれていて、魔法具などで使えるのだ。
ちなみに俺たちの中で魔法を使えるのは、分隊長だけだ。
分隊長がかなり強力な魔法を使えるので、俺達が魔法使えなくても問題ないって第四部隊は魔法を使えないものが集まっている。ちなみに魔法を使えない市民は多い。
魔法の元となる魔力は、血に連なり、貴族のほぼ全員が魔法を使えるくらい、魔力が高い。
市民でもまれに魔法を使うものがいるけど、そういう特別な人はすでに王宮の魔術師協会に見いだされ、立派な魔術師になっている人が多い。
「分隊長から預かった火の筒で、魔獣の体を燃やすわよ」
魔獣にしか効かない火があって、それを筒に詰めることができるのが俺たちの分隊長だ。
呪いの魔獣の体を集め、その筒を使って火を放てば、あっという間に燃えて、煙に変わる。
「さあ、戻るぞ」
「アリシオ先輩。カミロに触らないで」
「いいだろう。減るものじゃないし」
「つまんないわね」
俺の右側にはグラシア。
なぜかアリシオ先輩が俺の左側に来ようとしていて、グラシアに怒られている。
森に来るまで、あんなに仲良さそうだったのになあ。
「ああ、つまんないわ。本当」
俺の背後では、ギエム先輩が悪態をついていた。
馬を駆り、俺たちは来たときと同じように戻る……。
俺だけは姿が違うけど。