「可愛いわあ。やだ。女の子欲しかったのよね」
「……いいんじゃないか」
家に戻った俺に対する両親の言葉はこれだ。
ちなみに、グラシアの時と同じで、呪いは解かない方向になってる!
理不尽、なぜ?!
なんていうか、俺、別におっぱい大好きでもなかったし、なんていうか、理想がグラシアだったから、別に巨乳の趣味がない。
しかも自分の乳に興奮するわけないし。
なんていうか、おしっこするのもなんていうか、難しいし、ああ、もう嫌だ。
「……何かあったら頼ってよ。私、女の子だったから、なんでもわかるから」
「う、うん。ありがとう。だけど、俺は絶対に元に戻るつもりだから」
「なんで?こんな可愛いのに」
「え?いや」
グラシアが目をキラキラ輝かせてそう言って、決心が揺らぎそうになった。
だって、グラシアが男のままだったら、俺が女であったわけがいいわけで。
「カミロ。惑わされないのよ。頑張って呪いを解きましょう。私が手伝うわ」
「ギエム先輩」
そうだ。
俺は男に戻る。
そしてグラシアも!
「グラシア。君の呪いも解いて見せるから!」
「う~ん。カミロの呪いが解けたら、考える。それでいい?」
「うん!」
よかった。
女のままじゃ、絶対にグラシアに勝てない。
だって、男の時も男のグラシアに勝てなかったんだ。
今の俺は、本当、非力。
情けない。
「カミロ。力の使い方を教えてあげるわ。その代わり、男になった時は、ご褒美くれるかしら?」
「カミロ。だめ。聞かないで。ギエム先輩、カミロに変なこと吹き込まないでください」
「変なこと?何かしら?じゃあ、あなたが私にご褒美くれる?今のグラシアも私の好みの範疇ではあるのよね」
「……嫌ですけど、カミロがギエム先輩に何かするのはもっと嫌だから、いいですよ」
「グラシア?ギエム先輩、何をグラシアにさせようとしてるんですか?」
「秘密。グラシア。約束よ」
「わかりました」
「だったら、いいわ。じゃあ、カミロ。一人で頑張ってね」
「え?ギエム先輩?」
力の使い方教えてくれるんじゃ?
ギエム先輩はあのアリシオ先輩と互角に戦えるし、今の非力の俺に技術を授けてくれると思ったのに。
俺の嘆きを無視して、ギエム先輩は手を振っていなくなってしまった。
「大丈夫。カミロ。私が守るから」
「それは絶対に嫌だ。俺は、グラシアに守られたくなくて、グラシアを守りたくて騎士になりたかったのに」
「え、そうなんだ」
グラシアが動揺していた。
ちょっと顔が赤い。
凛々しいグラシアが可愛く見える。
だけど、グラシアは男だ。
今の俺は女。
グラシアに守ってあげると言われている非力な存在。
「やっぱり、戻りたい。呪いを絶対に解く!」
「……カミロ」
グラシアは少し悲しそう。
なんでだろう。
「俺、呪いを解いて、男になったら、グラシアにもう一回勝負を挑む。そして勝ったら、グラシア。元に戻ること考えてくれないか?」
もしかしてグラシアは戻りたくないかもしれない。
だけど、俺は
「いいよ。カミロが男に戻ったら、もう一回勝負しよう」
「うん」
グラシアの気持ちはわからない。
でも俺は男に戻りたい。
だから、男に戻ったらグラシアの気持ちを確かめたい。
「おう、おう。青春してんな」
アリシオ先輩の姿が見えないと思ったら、どこかに行っていたみたいだ。
っていうか、誰か一緒にいる?
え、あ?
「ブルーノ殿下」
グラシアがそう言って、俺はやっとアリシオ先輩の背後の人物が誰なのか、気が付いた。
俺もグラシアの隣で慌てて頭を下げる。
現れたのは第二王子であるブルーノ殿下だった。
アリシオ先輩は平民だけど、街にお忍びで降りていたブルーノ殿下を助けたことから、仲良くなったって聞いたことがあった気がする。
なんていうか二人並ぶと、全然ちぐはぐなんだけど。
「畏まらなくもいい。今日はアリシオの話を聞いて、面白そうだから来てみたんだ」
そう言われ、俺たちは顔を上げる。
ブルーノ殿下は顔が整っている。
グラシアの方がカッコいいけどね。
ギエム先輩を少し男っぽくした感じの美男子だ。
筋肉の付き方が理想的だなあ。
俺もそうなりたい。
早く男に戻ろう。
「おお。なんてまあ。君、カミロという名だったかな?」
「は、はい。殿下」
なんか急に近づいてきたぞ。
ブルーノ殿下。
「可愛いね。本当。可愛い。そうだ、護衛騎士にならないか?」
「は、はい?」
「ブルーノ殿下。恐れ入りますが、カミロは女性化してその、あまり戦える状態ではありません。なので」
グラシアがすぐに傍にやってきて、殿下に申し出てくれる。
ありがたい。
男だったら、即答なんだけど、今の状態でとても殿下を守る騎士なんて無理だ。
平民が護衛騎士になるなんて、夢のような話だけど。
「じゃあ、君も一緒にきて。それならいい?」
「え?」
驚いた声は俺と、グラシアから同時に出た。
「ははは!面白いこと考えるな。俺もいいか?」
「君は駄目。絵柄がよくない」
「絵柄?」
なんだ、それ。
「あの、殿下。私たちは平民でして、とても殿下の騎士に相応しい身分ではありません」
グラシアは本当に嫌なんだな。
俺は男だったら、すぐに頷くんだけど。
だって護衛騎士だぜ?花形。
でも今はだめだ。
女のまま護衛騎士。
しかも、グラシアまで巻き込んで。
無理だ。絶対に。
「私がいいって言えば大丈夫だよ。君たちの隊長のダルミロにも話を通しておくから。じゃあ」
「殿下!?」
グラシアと俺は必死に殿下に呼びかけるが、無視して元来た道を戻っていく。
一人で。
殿下を呼び止めるなんて失礼なことできないから、俺たちは諦めるしかない。
「諦めな。あいつは一度決めたら引かない。ああ、残念。カミロの立派な乳を拝めなくなってしまう」
「アリシオ先輩」
グラシアの先輩を呼ぶ声は低かったが、アリシオ先輩は気にしていないようだ。
「カミロ。触らせろ」
「嫌です」
触られても減らないけど、なんか、嫌だ。