知っているのは、その寝顔だけ。
それでも弟は、世界じゅうでいちばん、僕に近い存在だった。
その弟が――今はいない。
この世でたったひとりの、血を分けた兄弟。僕と同じ体を共有している、僕にもっとも近い存在。
そして、一つの心臓を、命を共有している存在。
その弟が――いない。
ずっと弟と一緒に身を横たえていた白いベッド。その左を見る。――誰もいない。
そう、誰もいない。
弟が、死んだ。
円柱の立ち並ぶ[[rb:大広間 > ロッジ]]に整然と並ぶのは、背に偽りの翼を背負った偽装天使たち。そして、壇上に翻るのはひときわ大きい純白の羽根。
「聞け!」
傾聴の姿勢を取った偽装天使たちに向けて声を発するのは、教団を率いるトップであり、教団でもっとも大きな偽翼を背負った男。
その白金の髪と真紅の瞳の異貌に視線を集め、上級天使は宣言する。
「我らが教団が擁する神、創造維持神。その[[rb:御言葉 > ダァバール]]は未だに得られていない。なぜか? それは、我々と神とのあいだの[[rb:媒 > なかだち]]となるものがなかったからだ」
壇上の傍らから、[[rb:黒白 > こくびゃく]]の偽翼を持つ教団第二位の偽装天使、天導天使がストレッチャーを押して壇上に上がった。ストレッチャーの上には純白のシーツがかけられており、その上にはひとりの……否、