「映像化は不可能と思われていた」の惹句とともに押井守監督の手によって1995年に劇場アニメとして公開された攻殻機動隊。
以来、劇場用アニメやTVシリーズ、そして実写映画までさまざまなメディアで映像化されてきた本作ですが、今回の新シリーズは今まで誰もが待ち望んでいながら半ば無理だと思っていたであろう「原作テイストの攻殻機動隊」のアニメ化となります。
いやー生きてりゃこんなこともあるんですね。攻殻機動隊といえば押井監督の劇場版のパブリックイメージがあまりにも強すぎて、士郎正宗による原作のテイストがある映像化作品は数ある中でもPS1での発売されたゲーム版のみ。そんな中で今回、原作コミックスに忠実にアニメ化された新作の攻殻機動隊の制作ニュースが入ってきたときは驚きました。多分今回の新作で原作テイストの攻殻に初めて触れるという人も多かろうと思います。
で、感想なんですが、まず言いたいのは以前に劇場でリバイバル上映されてた「天使のたまご」のときにも同じようなことを思いましたがすげえ! 士郎正宗のが動いてる!
これまで映像化されてきた攻殻はやはりソリッドなイメージでしたが、今作はなんというか90年代くらいのOVA全盛期に逆行したかのようなアニメアニメしたアニメになっててまず驚きました。たしかこれほぼ全部手書きアニメでやってるんですよね。
演出なんかも多分意図的にやってるんでしょうけど古い! キャラの頭に血管マークとか冒頭の制圧部隊がダンゴ状態で室内になだれ込んでくる描写とか、「この演出を令和にやる!?」といった感じで、そういった古さもそのままにアニメ化してる印象です。このマンガっぽい演出をそのままアニメにした感じ……そうこれ「まんが映画」だ! 東映まんがまつりのあのニュアンスだ!
近年のアニメはとにかくゴージャスにリアルにって傾向を感じますが、本作は思い返してみれば流麗なエフェクトや複雑なカメラアングルとかはほとんど使ってないんですよね。さっきから言ってますがとにかく「まんがをそのままアニメにしました」というか「まんがをそのままアニメにすること」を非常に重視してる印象です。
だからキャラの表情もコミカルさが前面に出てる原作テイストがそのまま残っており、押井版しか知らない人が見たら相当面食らうんじゃないでしょうかね。特に少佐は押井版やその他の映像化作品では絶対に見せないような表情とノリを見せてくれるので必見です。
そして声。放送直前まで伏せられていたようですが、坂本真綾さんという当然と言えば当然の、順当と言えば順当な配役でしたね。
攻殻機動隊のメイン声優陣は完全にキャラとイコールになるほど一貫して少佐=田中敦子さん、バトー=大塚明夫さん、トグサ=山寺宏一さんで通してきたわけですが、今回の新シリーズでは声優陣を一新したのは、イメージを切り替えるという意味でも大成功だったと思います。
では各キャラのイメージもこれまでとは全く異なるものになったかというと答えはNO。なんというか、これまでのメインキャストが演じてきた攻殻キャラのイメージの延長線上にちゃんといるという感触です。
特に少佐は田中敦子さんがこれまで演じてきた少佐のイメージとPS1で鶴ひろみさんが演じた少佐のイメージを足して生まれたイメージという感じで違和感なく「新しい草薙素子」として受け入れられました。ちゃんと田中敦子さんの少佐のテイストが残ってるのが嬉しい。このイメージの配分をきっちりできているあたりに改めて坂本真綾さんの声優としてのすごさを感じました。いやほんとにちゃんと少佐なんだよな。
押井版をはじめとする攻殻機動隊シリーズは、たぶん全部攻殻機動隊が組織として固まった状態からスタートしてるんですが、本作は原作コミックス準拠なので部隊設立のところからスタート。なのでトグサがいかにも新米っぽいミスしてたり独立愚連隊的なノリがあったりとこれまでの攻殻にはない新鮮さがありました。
新鮮といえばタチコマではなくフチコマが動いてるのもだいぶ久しぶりに見た気がします。そして担当声優が金田朋子という神采配。
あとオペ子可愛いよおかわいいいよォモノ子ォォアアァァア アァッ!!(絶頂)
全国5405694056834人のオペ子ファンの皆さん、ようやくその魂が報われるときが来ましたね。SACの海自のメガネっ子オペ子も可愛かったですがやはりポニテ。時代はポニテ。ポニテはすべてを救う。
ポニテオペ子はPS1でも登場してましたが、今作はコミック版に準拠してアニメ化してくれるので出番が大幅に増えると思われます。立てよオペ子好き。吠えろオペ子好き。
あ、あとこの令和の時代に聖庶民救済センターのお歌が聞けるとは思わなかった。楽しい楽しい救済センター。サントラにはぜひとも収録していただきたい。
こうしたコミカルさを前面に出してる一方で、改めて見てみると説明が全然ないんだよな本作。いや説明はなんか字幕で出してますがそういう話ではなく。
押井版なんかはかなりの説明をセリフでやってるんですが、本作はマンガマンガしたノリとは裏腹に今どういう状況でなにをしててこれをやったらどうなるのかっていうような説明を全然しておらず、淡々とプロとしての仕事をこなしていく流れでやってるんですよね。これに比べると押井版やSACのほうが分かりやすさでは上かも。これ、原作コミックスを副読本として読むのがちょうどいいんじゃなかろうか。
……といった感じで勢いのままに長文感想をぶちかましてしまいましたが、これでまたひとつ生きる理由ができました。生きていくぜ。というか本作は原作の最後までやるんだろうか。そしてこの勢いで「戦術超攻殻ORION」とか「ドミニオン」とかをアニメ化してくれないかな。あ、「ブラックマジック」はあれが完成形なのでだいじょうぶです。