「困りましたねぇ。だけど、グラシアさんは困っていないみたいだし、報告しなくてもいいのではないでしょうか?」
 眼鏡を拭きながら、そう言ったのは分隊長のダルミロ様で、お貴族様。
 問題を起こしたくないが口癖、現場にも極力行きたくないため、呪いを受けた日も別行動をしていた。
 ……貴族様だからいいのかな?
 分隊長がこんな感じでも、実の兄は焦るはずだと、グラシアの兄で、現副団長のエレダー様にも伝えてみた。
「そうか。男になっちゃったか。まあ、しかたないね。本人喜んでるし、いいんじゃ?」
 エレダー様は苦笑しながらも、問題とは思っていないらしく、グラシアの受けた呪いはそのまま放置されることになってしまった。
 まじで?
 僕は、俺は、グラシアを守れるくらいの騎士になりたかった。
 彼女が俺を庇って、呪いを受けるまでは、俺の方が強かったんだ。
 でも今は……。
「参った」
「勝ったぞ!」
「おお、グラシア。本当に強くなったな」
 アリシオ先輩はグラシアの赤色の髪をくしゃくしゃに撫でる。
 
「カミロ。そう落ち込まないの。ね?」
 俺を慰めてくれるのは、ギエム先輩。
 だけど、その手の動きが怪しい。
 
「グラシア。俺が勝ったら、呪いを解くことをかんがえてもらってもいいか?」
 三本勝負の模擬戦で、俺は三本とも負けた。
 本当は、三本目はしなくてよかったんだけど、一勝でもしたかったから、三回目も挑んだ。
 だけど、結局負けてしまった。
 グラシアに勝っていたのは、体力と腕力だけだったみたいで、男になった彼女に俺は敵わなかった。
 だけど、悔しくて聞いてしまった。
「いいよ。だけど、私は絶対に負けないけど」
 グラシアは俺の挑戦に不敵に笑い返す。
 凛々しくなったグラシア、でもやっぱり元の可愛さも残っていて、可愛いと思ってしまった俺は病んでるかもしれない。
 元のグラシアに会いたい。
「約束な。俺は絶対に強くなる。そして君に勝つ!」
「ふふ。受けて立とう!」
 グラシアが手を差し出し、俺がそれを取る。
 俺たちは握手を交わした。
「いいなあ。燃えてきた!カミロも、俺の下で鍛錬するか?」
 ということは、グラシアと一緒に鍛錬?そうなるときっと俺は強くなれない。彼女より。
「アリシオ。カミロは私が受け持つわ」
「ギエム先輩?!」
「カミロ。あなたもわかっているでしょ?アリシオの下で鍛錬しても、グラシアを超えることはできないわ。それなら、私があなたを鍛えましょう」
 ギエム先輩は、女性的な話し方して、その、男好きなんだけど、強い。
 いわゆる細マッチョ。
 アリシオ先輩より体は小さいんだけど、互角に戦うことができる。
 だけど、問題は……。
「カミロ。大丈夫?ギエム先輩と一緒で?」
 グラシアは心配そうだ。
 彼女に心配されるなんて、男らしくない。
 俺は彼女より強くなるんだ!
「大丈夫だ。ギエム先輩。よろしく指導お願いします」
「おっけー。ふふふ。たっぷり指導してあげるわ」
 ぞわっと鳥肌が立ったんだけど、気のせいだよな?
 こうして、俺はグラシアに勝つために、ギエム先輩の下で鍛錬することになった。
「はいはい。皆さん。午後からは魔獣退治に出かけますよ。準備してくださいね」
 ぱん、ぱんと二回拍手の音が聞こえ、分隊長のダルミロ様がふいに現れた。
 
「魔獣退治。今日はどこに行くんだ?」
「カルテナの森です。近くですよ」
 カルテナの森は、馬で二時間のところにある。 
 街を出てすぐのところにある森だ。
 俺たち四番隊は通常、そんな近場の仕事はないんだけど。
「前回のあの呪いを使う魔獣が出たようです。私は話してないのですが、呪いのことは広まっていましてね。誰も行きたがらないのです。だから、私たちに声がかかったということです」
「同じ魔獣?!」
 もしかして呪いを解く鍵があるかもしれない。
 っていうか、もう一回呪い受けたら、女に戻るとか?
 うん、うん。そんなこと考えたらいけないぞ。カミロ。
「それでは後二時間後に出発です。各自用意してくださいね」
 ダルミロ様は俺たちにそれだけを言うとまたいなくなってしまった。
 
「魔獣相手に、今の私の実力が試せる!楽しみ」
「また呪いを食らわないようにしろよ」
「あ、私は食らいたいかも。女の子になりたいわ」
 ギエム先輩は俺をちらりと見ながらそんなことを言う。
 俺の卑怯な考えを見透かしているみたいだ。
 一度呪いを食らっているグラシアがまた食らったらどうなるかわからない。
 正当な方法で、グラシアを戻そう。
 まずはその魔獣から何か情報を得よう。
 そして、グラシアより強くなって、呪いを解いてもいいって言わせるんだ。
 がんばれ、俺。
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ありま氷炎
楽しくかくぞー
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