ワンルームマンション、室内は汚れていて薄暗い。玄関前には数名の捜査員、
ホークスは捜査員たちよりすこし下がったところに立っている。扉に一番近い場所でしゃがみこんでいた捜査員が合図を求めるようにホークスを見た。それにうなずき返すと「GO!」と がかかり、捜査員たちは部屋の中になだれ込んでいった。
玄関から真っ直ぐ伸びた廊下の床にはゴミの入った袋が散乱している。ミニキッチンを通り抜けると、奥のリビングの隅には小さな箱が山積みになっていた。捜査員はそれには目もくれず、潜伏しているはずのヴィランを探す。
後からゆっくり入ってきたホークスは、周りを見渡しながら足元に転がった箱庭を拾い上げた。二階建ての、青い屋根の家とこじんまりとした庭。ごく当たり前だが、酷く精巧にできている。まるで本物の家を上空から見ているようだ。ホークスはかつて、自分がその俯瞰で地上を見下ろしていたことを思い出す。
その家の2階の窓には、人の影のようなものが写っていた。
公安のホークスの執務室。
ソファに向かい合って座るジニとホ。テーブルの上には行方不明事件の資料とコーヒーカップが置かれている。
ジニ「行方不明?」
ホ「なんですよ。三日前から家に帰った形跡がないそうで。冬実さんが心配してて」
ジニ「娘さんとは一緒に暮らしているわけではないんだろう。たまたま不在だっただけでは?」
ホ「それが、作りおきの食事にまったくてをつけてないんですって」
ジニ「ほぅ」
だがそれだけだろう、と言いたげな顔をするジーニストに、ホークスは真剣な顔つきで
ホ「それに、三日前のお茶が出しっぱなしになってたんです。あの人、そういうのちゃんとする人なのに、変だなって」
ジニ、ホが炎に、ものを出しっぱなしにするなと怒られていた場面を思いうかべる。
ホは苦笑いしながら「ね。 変でしょ」
ジ「しかし、何故それが三日前のものと?」
ホ「ああ、俺が行った時のまんまだったんで……」
轟家の客間、大きな座卓の上にホークスが飲んだ湯飲みが置かれている。その横に、ホークスの持ってきた菓子も置かれていた。
ジーニストが怪訝な目をする。
ジ「別れたんじゃなかったのか」
ホ「別れましたよ。今回は、ちょっと仕事の相談で」
ジ「静岡まで?」
ホ「至急確認取りたくて」
ジ「それで公安委員長、直々に静岡まで行って、不在の確認までした、と」
ホ「……あーもう! そうですよ、未練がましくすみませんねっ?!」
気を取り直して、ホークスはテーブルの上の捜査資料を手に取る。
ホ「まあ、冬美さんにはまだ三日だし、ひょっこり帰ってきますよとは言ったんですが……こっちの行方不明事件とは関係がないといいなと」
真剣な顔で資料を睨む。連続行方不明事件、と書かれたそれをジーニストに渡した。冒頭の家宅捜索はこの容疑者の家に押し入った時のものだ。
ジ「今回の家宅捜索は空振りだったんだな」
ホ「残念ながら、被害者も見つからなくて。今回で8人目なのに、いったいどこに隠してるんだか……」
ホ「とにかく俺も、3日も連絡取れないのは初めてなので、心配で」
小さく溜め息を吐いたホークスを、目を丸くしてみるジーニスト。
ジ「別れたんだろ」
ホ「一応……」
ジに「なのに3日に一度は連絡をしている、と?」
ホ「いや、連絡はほぼ毎日――」
うっかり口を滑らせたホは、むぐ、と自分の口を塞ぐがもう遅い。ジニは薄目でホークスを見てからコーヒーに口を吐ける。
ジ「それでよく別れたというもんだ」
ホ「しつっこいな!」
ホークスは自暴自棄になったようにソファに身を預けた。
ホ「仕方ないでしょ。俺、振られたことに納得しとらんし。アタックくらいしますよ。エンデヴァーさんも、やめろって言ってこんのやもん。諦めきれるわけなか」」
ジ「そもそもどうして別れることになったんだか」
ホ「振られた俺にそれ、聞きます? 知りませんよ、理由なんて」
ホ「エンデヴァーさんは俺のため、とか言ってたけど、嫌いになったって言ってくれた方が全然ましだった」
落ち込む顔をするホークス。
ホ「まあ 仕事以外では なるべく 連絡しないようにはしてますよ 」
炎に振られた、と嘆いていた時のホークスを思い出し、
ジ「 お互いいい大人なんだ。お前が平気なら何も言わんが…炎は嫌がるだろう」
ホ「多少は。でも、お互い仕事なんで割りきってますよ」
ジ「なら良いが」
話が終わり、ジーニストが席を立つ。
と、ホークスの事務机の上に小さな箱が置いてあった。
「あれは?」
「容疑者の部屋にあった箱庭です。そいつが作ったものなのか、いっぱいあって……参考にひとつ、持ってきました」
「なるほど」
ちらりと見ると、精巧な作りの日本邸宅が三十センチ四方の箱に収められていた。
「すごいな。本物みたいじゃないか」
「趣味だったんですかね。犯罪に走らず、真面目にこういうの作ってればよかったのに」
ジーニストが帰り、ホークスがその箱庭をじっと見つめる。
執務室を出るホークス。(もしくは夜、自宅へ戻ってきたホ)手には箱庭を持っている。
翌朝早く、ホークスは目覚めるとカーテンを引き、ベッドの脇に置いた箱庭をじっと見つめた。
その箱庭の扉ががらりと空き、人が出てくる。エンデヴァーとそっくりな男だ。
無言で庭に出ると、ホースを取り出し庭に水をまき始めた。
それをじっと見つめていたホークスは、にこ、と微笑み「おはようございます、エンデヴァーさん」と呟いた。
ある日炎が行方不明になる。どこを探しても見つからない。ホも血眼になって探すが、ハム案のネットワークを持ってしても手がかりも見つからなかった。
けれどホの家には小さな箱庭がひとつある。細かなところまで炎の本家とそっくりな箱庭だ。その箱庭に、毎朝六時に赤い髪の人形が水を撒く
#るねた