「………」
「………」
 息苦しいほどの沈黙。ドアのない密室。光源が存在しないにも関わらず視界が確保できる謎空間。「脱出条件はキスで〜す!(意訳)」と記された紙。壁を背もたれに体育座りする女と、その横で同じようにもたれながらあぐらをかいている男。
 以上が私たちを俯瞰的な視点で観察した際に得られる情報である。女とは私で、男とはこの同じ大学に通う同期であり、それなりに付き合いの長い友人のバデーニだ。どうだろう。これを読んでいるあなたが、気心の知れた友と空間を共にしながら会話の一つもせずひたすら黙り込んでいる私たちの心情について僅かでも慮ってくれたなら幸いだ。
「………」
「………」
 そう、私たちは二次創作によく出る「キス部屋」に閉じ込められている。多分。経緯は以下の通りである。
 まず、先に私の目が覚めた。見知らぬ、天井。そんな堂々たる白地の明朝体が黒一色をバックに浮かび上がるモノローグを思い出しながら使徒と戦うこともエヴァに乗ることも多感な時期にCV:石田彰のミステリアス色素薄い系イケメンから一方的に親しい関係を迫られるというときめきを経験することもないまま健全な発達を成してきた身体を起こし、同じように倒れていたバデーニを目覚めさせ、出口も無いしここに来るまでの経緯も思い出せないね、何故かしらねーなどと宣い、二人して部屋着を着用していたこともあって緊張もなく自宅のように床で寛ぎながら情報を整理していたところ、彼の方がその辺でぴらりと落ちていた紙切れに気づいたのだ。何か落ちているぞと指す爪の延長線上にあったそれは端的に、「脱出条件:口腔的親密行為」とだけ書いてあった。
 壁も床も真っ白な密室。その中に閉じ込められた数名の人間。そして、脱出の条件として特定の行為を指示する文章。これは、完全に…!オタク御用達の大手イラストコミュニケーションサイトやX(旧:Twitter)で散々見かけた王道シチュエーションに、私は寝転がっていた上半身を背中から跳ね上げ、驚きと興奮で声高らかに宣言した。
「完全に同人誌だ!!」
 これって、これって、同人誌でよく見るやつだね!? 頭の中で改悪した西野カナの名曲「君って」を歌唱してしまう程度には盛り上がった。まさかマジで体験できるとは。これが現実で起こるというのであれば、どこかの世界の推しカプが本当の本当にキス部屋へ閉じ込められている可能性も微レ存。人生捨てたもんじゃないな!?
「どういうことだ」
「あの、同人作品にこういうのがよくあって…」
 無駄に長い脚であぐらをかいているバデーニへ向かって床に肘をつく姿勢になりながら「〜しないと出られない部屋」に関する概要を大まかに説明する。彼は「つまり理由も無く監禁された上に何かしらの行動を取るよう強要された対象の反応を空想し、それを物語にしたものということか」と〜部屋についての情報をフラットな視点からまとめた。完全に犯罪である。しかし二次創作における倫理観は無ければ無いほど独創的で面白いものになるのも事実。そしてオタクはその非人道的な一冊を作成するのに自らの血と汗と涙とYoutubeショートを見る時間の全てを費やしている。
 非道徳と信念、その二つの性質を併せ持つ…。ヒソカになりながらバデーニの質問にそうだねと肯定の相槌を打った。理解できる範疇にないのだろうオタクの心理に対し、バデーニは眉をひそめている。
「なんでそんなことする?」
「分からない…」
 本当に、一体何が彼らをそうさせるのだろう。読み専の私にはさっぱり分からないが、ただオタクというのはいつだってAM2:00くらいに見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込み、原作を切り裂いていくつもの二次を描いてしまうものらしい。そしてそれをいつまでも追いかけオーイエーアハーと叫ぶ生き物であるらしい…。全オタクを代表し一般的なオタクの生態系について伝える。かいつまんでの説明だが、大きな齟齬はないだろう。強い偏見と思い込みによって過大解釈されたオタクの生き様を聞いたバデーニは肉の薄い顎を指で支えるようにしながら、眉間にマリアナ海溝よろしく深い皺を刻む。
「では、なんだ。君含め、オタクというのは自らの二次創作を絵や小説で表現する特技や趣味を持ち、それらの構想が浮かんだときなどに興奮し、衝動的に夜中、歌い出す習性があるということか」
「うん」
 大まかには間違ってはいないだろう。私の小気味良い肯定に、バデーニもまた「なるほど」と頷いた。
「気味が悪いな」
「は?」
 これにはさすがに高い伸縮性とかなりの強度を兼ね備えているはずの私の堪忍袋の緒もキレかけた。お前みたいに突然嘔吐したり壁を殴ったりするほうがどう考えても気味が悪いしキモいし怖いだろうが。壁相手に手数の少ないスマブラ繰り出して自ダメ溜めるだけの雑魚ファイターがどの口で言ってんだ? 叫びながら立ち上がりと同時に飛びかかろうとしたが、
「しかしまあ、分からないでもない」
「えっ」
「そもそも研究とは他の研究者の考案した理論や公式を元として自らの研究課題を設定する側面もある。それは原作を元に自分の内で解釈や物語の空白を埋めようとする二次創作とやらと共通する部分があるかもしれん」
 突然理解を示したのでそれはやめることにした。な、なーんだ、ちゃんと分かってんじゃん…。どうやら豊富な知識と同じ程度に自らを客観視する度量も持ち合わせていたらしい。でも自然科学の分野で言うと実際の現象や観測データを元に研究内容の広がりが生まれるわけだから捏造はできないという点において大きく違う気がするが、もしこれが聞かれたら二次創作を楽しんでいるオタク全員が各々持てるだけの凶器を手にうちのアパートのチャイムを鳴らしに来る事態になりかねないのでこれ以上は黙ることにする。ごめんて。
 しかしまあ、冷静に考えると夜中に突然歌い出す方と夜中に突然吐いたり壁を殴ったりし始める方のどちらも気味が悪いしキモいし怖いよな。オタクじゃなくても夜中にいきなり今何してるのってライン送る元カノもいるし、オタクに限って奇行に走ることを前提とするのも違うか。あからさまな態度には出さなかったとは言え、一方的な価値観で友人を変人扱いしてしまったのは少し視野が狭い結論だったかも。それに天体観測のオーイエーアハー以外にも、西野カナの好っき〜だよ〜とか、嵐のlove so sweetsとか、今日のオタクがその胸を焦がした感動を外へ発散させるのに適切なフレーズは多種多様にあるし、そのどれを口ずさむかはオタクによって違うしね。
 今更ながら反省し、深夜、衝動的に歌唱するかしないかはオタクによるからとバデーニに訂正する。バデーニは何が気になったのか、私に対し「君も歌うのか」と聞いてきた。きゅ、急になんだろう。どきまぎしながら答える。
「あーまあ、歌うときもある…けど…」
「その望遠鏡の歌をか」
「あ、て、天体観測ね」
「何? 天体観測という曲名なのか」
「マジで知らないんだ…」
 大して寝心地の良くない床の上、今度は仰向けに転がって逆に感心する。ジョジョを読んだことがなくともだが断るは知っている、本編は見たことないけどこのすばというアニメがあることは知っている、glayの誘惑と言われてもピンとこないが曲を聴けばああ!となる。そういうものの代表だと思っていたが、どうやら違ったらしい。バデーニって、ホントに世間とは少し線引きされている世界で生きている人間だよなあ。様々なソーシャルメディアが必要以上に発達してしまったこの情報社会で、本人だってそこで主要な役割を果たしている情報端末を手に生活しているというのに、どうしてそこまで流行や噂みたいなものに疎いままでいられるんだろう。
 天井と床が逆さまになった世界で何を考えているのかよく分からない無表情のバデーニが見下ろすようにこちらを見ている。この国に住所を持ちながら天体観測と聞いて望遠鏡を担ぎベルトにラジオを結び2分後に遅れてやってくるらしい誰かを待つ人間の姿を記憶させないまま人生を送ることが可能なのか。山奥で虎とかになってたのかな。ペロッ…これは我が友、李徴氏ではないか? 声を聞けよ。
 頭の中で一人でくだらない妄想を広げていると、バデーニと李徴の雰囲気が割と似ていることに気が付いた。なんか、孤高な感じとか。毎日へらへらちゃらちゃら他人と慣れ合って退屈を紛らわせたい私からしたら、天体観測なんか知らなくてもSNSなんか見なくても、そうやって誰かや何かと繋がらなくても、自分だけの目とその蓄えた知識で世界の美しさや日常にあるちょっとした自然現象に意味や理屈を見出すことができるんだろうな。バデーニの世界はきっと常にそうやって蠢いていて、退屈なんてしないんだろう。それってやっぱり羨ましいし、憧れるし、すごくかっこいいと思ってしまう。
 そんなことを考えながらぼーっとバデーニを見ていると、おい、なんだと声をかけられた。そうだ、質問されてたんだった。
 ぐいと体を起こして少しだけ髪の毛を整えながら答える。ごめんごめん、天体観測ね。
「男性の4人組バンドが歌ってて、すごくいいんだ。イントロの何かが起動し始めるような音からテンション上がるし、歌詞もすごく良いし…とにかく、すごく良いんだよ」
 いくらなんでもオタク過ぎ。早口なところも、良いと言う割に具体性の無い説明しかできなくて何の情報も伝えられないところも。いや、先程同様、オタクの全員が全員そうというわけではないか。あくまでも私がそうなだけか…。全く中身のないアピールしかできない不甲斐なさとBUMPに対する申し訳なさで滲んだ涙を指の背に乗せた。泣いてただろう…あのとき…僕の語彙の貧しさに…。脳内で流れ出した車輪のオタに耳を澄ませながら目線だけを上げるが、相手は特に反応することなくただこちらを眺めている。あー駄目だこれ、全然伝わってないな。せっかくバデーニの方からこっちの趣味に関する話題を振ってくれたのに、勿体ないな。その興味関心をもっと上手く引っ張ってやりたい。それこそ、今ここにスマホがあったらすぐに聞かせてあげられるのに。そこで私は思い立った。そうだ、一緒に聞けばいいじゃん!
「ねえ! ここから出たら一緒に天体観測聞かない? イヤホン、片方貸すからさ!」
 口をついて出てしまった陽キャみたいな台詞にすぐ後悔した。何を言っているんだ私は。絶対断られるって。そんなものに興味はないとか、そんな低俗なものを鑑賞するために費やす時間はないとか、研究してたほうがマシだとか、さぞかし冷たい言葉で断られるに決まってる。拒まれると分かっていながらどうして人は他人と分かり合いたいと思う自傷行為をやめられないのだろう。顔を引き攣らせて傷つく準備をしている私に、しかしバデーニの回答は意外にも前向きなものだった。
「…いいだろう。君がそこまで言うなら聞いてやらないこともない」
 マジで? ハッと顔を上げる。バデーニは色素の薄いが故に目立つ小さな瞳で確かにこちらを捉えていた。
 バデーニがBUMPを? こいつが、見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込むのか? 見えているものすら拒みがちなこの男が? 信じられない気持ちで仰向けになっていた体をぐるりと反転させた。今度はうつ伏せのまま、バデーニに何度も確認する。
「ほ、ほんと? ほんとに聞く?」
「くどいぞ。何度も言わせるな」
「バデーニ…!」
 どんな風の吹き回しだろう。これも藤原基央の成す力なのだろうか。自分のことも、自分の作っている音楽を知りもない人間にすら、世間話程度に出したタイトルだけでその対象の気を惹かせることができるとは。でもリバイバル公演の最中に楽曲の元になった宇宙探査機が復旧するくらいだもんな。やっぱ基央ってすげーよ。推しに神秘を見出す過剰な迷惑ファン思想に熱くなりつつ、バデーニへ素直な喜びを口にする。ちなみに探査機の信号を受け取るのに貢献したのはエンジニアであるはずなので、基央はあまり関係ないと思われる。
 ありがとうと胸で吸った息をいっぱいに込めて礼をした私を、バデーニは冷静な顔つきで少し声が大きいと窘めた。ごめんごめん、苦笑いをしながら私は勢いよく立ち上がった。
「じゃあ、早くここから出ないとだね!」
「初めからそのつもりだろう。何を改まって宣言する必要がある?」
「それはそうなんだけど、バデーニが天体観測を聴いてくれるって言うから、余計にさ」
 そうだ、こんなところで立ち止まっている場合ではない、早々にここを出てその内耳にまでイヤホンをぶっ刺してやらねば。天体観測がバデーニに受け入れられるようだったら、同じ星のモチーフとしてorbital periodの何曲かを聞いてもらいたいところだ。興味が持てたらライブに誘ってみるのもアリかな。それはさすがに無理かもしれないけど、誘うだけならタダだよね。次々湧いてくるバデーニとの推し活ビジョンに一人にやついていると、バデーニもやれやれと言わんばかりにゆっくりと腰を上げた。
「君が何の根拠も無く今後の展望を前向きに捉えることができているなら結構だが」
 その目がちらりと私の手元を捉える。正確には、私の手にしている皺の寄った一枚に。
「それはどうする」
「うーん…そうだね」
 苦笑いとと共にただのコピー用紙のひとかけらをぴらぴら宙で遊びながら、一つ提案をする。
「一旦、これ以外で脱出できる方法がないか調べてみようよ。もっとハードルの低い手段で出られるならそっちの方がいいでしょ」
「………」
 バデーニは特に答えずに無言でこちらを見つめてきた。な、なんだろう。もしかして不安を感じているのだろうか。でも確かにもう閉じ込められて30分以上は経っているような気がするし、そうなるのも無理もないかも。何の根拠も無く身勝手な気を遣った私は「任せてよ!」と素早く力強い拳を相手に見せつけた。私なんか家に帰ってからの50時間をX(旧:Twitter)とYouTubeショートの視聴に費やしているのだ。この空間が「~部屋」という概念として非現実的に成り立っているとしたら、世間のセンシティブな内容の二次創作から得た情報を駆使して何か糸口が掴めるかもしれない。
「大丈夫だって! 私、少なくともバデーニよりかは同人作品に詳しいんだから! 多分…いや絶対! 絶対、口腔的親密行為以外の方法でここを出よう!」
 同人ものへの造詣が深いことで胸を張れるの、今後の人生でこの瞬間しかないだろうな。もう二度とない機会ならばここでどんどん威張るべきだろう。開き直った開放感に満ち溢れた私は「安心してよ!」なんてウインクまでしてしまった。嫌悪も照れもない彫刻のような表情の顔がそれを受け止める。こういう場合、迷惑そうな顔をするかはっきり気持ち悪いと言ってくれるほうがオチが付くんだが。バデーニからは大きく吸った息が吐き出されるのと共に
「…分かった。君がそう言うならそうしよう」
とだけ返された。なんだその態度は。私がそう言うならってなんだよ。じゃあここで私が口腔的親密行為の実行を申し出た場合は快諾できんのかよ。どうせできないだろ。不遜な態度にムカつきつつ、いつものことなのでその場で6秒を数えてみる。…よし!
「絶対にここから出るぞ! おー!」
 一面の白に突き上げられた腕は一本のみ。
 白い部屋の隅々に響き渡るおー!という勇猛な雄たけびも、一人分。
 しかしBUMPの天体観測で繋がった人間はここに二人。
 その確かな事実を胸に再度バデーニを見る。その瞼は重たげに沈み、退屈そうであった。ノリ悪過ぎるだろコイツ。
 その後、私たちはまずバデーニの「『口腔的親密行為』が脱出の条件だとなされているのであれば何かしらの方法で中にいる人間がそれを実行しているか否か確認する必要があるのだから、そのための録画機器や盗聴器がこの部屋のどこかに隠されているはずだし、それを設置するのに部屋の壁や天井の一部に細工を施しているとすると、そこから物理的な刺激を与えることにより脱出が可能なのでは」といういかにも理系らしい考察から発案された「ブ。─意外と物理的なアプローチであっさり出られたりして計画─」を実施した。内容は視界に収まる範囲の部分からその外にまで広がる壁や床の隅々まで観察し、触れ、押したり叩いたりすることである。シンプルにこの部屋自体を調査するというわけだ。
 当然のように結果は惨敗であった。築何年?どこ住み?火災保険やってる?思わず壁相手にナンパ式の聞き取りを行ってしまうくらいには綺麗な塗装がされており、この計画は失敗に終わった。
 次に取り組んだのは私の「X(旧:Twitter)のTLで見かけた二次創作では、指定された通りの条件を達成せずとも中の人間同士が親密な会話や軽度の身体的接触を交わすことにより何故か脱出が可能になるという展開を見たことがある」などと根拠の薄い情報より考案された「コ。─口腔的親密行為から連想される別の解釈について計画─」である。
 「指定された通りの条件を達成せずとも中の人間同士が親密な会話や軽度の身体的接触を交わすことにより何故か脱出が可能」になる理由。それはズバリ、肉体的な交わりを介して観測される愛情表現を、肉体ではなく言語的、もしくはもっと軽度な接触にて表現される場合があるためである。もちろんそれは主観によって変わるし、行為を要求されている対象者の経歴によっても様々な意味合いが生まれてしまうため「条件通りの行為をしなくても脱出が可能である」と言い切ることはできないが、人と状況によっては観測している側の人間に「これは実質キス」と錯覚を覚えさせることが可能なのである。
 「実質無料」は決して無料ではない。だが、購入した側にとって、購入したもの以上の利益がそれにかかった費用を上回るものなっていると認識したが故にその言葉が生まれたのだ。つまり「実質キス」もキスはせずとも交わされたコミュニケーションの内容がキスのように濃厚で濃密で親密でなんならキス以上の行為、つまり「言語でエッチしている」と思わせることができる可能性があるのだ。言葉ってすごいわあ。そら神もバベル壊すよな。地球上の人類が皆共通の言語を用いている以上、そういうことが昼夜を問わずあっちでもこっちも起きるってことでしょ? ちょっとエロ過ぎる。エロの箱舟だよ。何を言うとるの?
 まあまとめると、キスをしなくともお互い絆を深めることによりこの舞台を作り上げた何者かに瞼からきしめんのような落涙と共に「実質キス」と書かれた札を上げさせた末に希望へのドアが現れるかもしれないということだ。
 エロの方舟のくだりのみ省いた「実質キス」の内容を伝えると、バデーニはとうとう隠しもせずハァ…と大きな溜息を吐いた。そうよな、もうわけわかんないよな。キスしろって言ってるのにキスしないままでも出られるとか、その一貫性の無さは既に恐怖の域に達していることだろう。ホントごめんな。オタクを代表してここに謝罪します。バデーニはもう考えることを諦めたらしく「君の指示に従おう」とだけ答えた。許可が降りたため、ここに来る直前にしていたこと、最近あった出来事、オクジーくんの小説の進捗について、ヨレンタおすすめのカフェについてなどの会話を重ね、唐突に手を繋いでみたりどっかのアーティストのジャケ写みたいに背中合わせに座ってみたり多様な角度から「対人交流」と解釈されるに値する行為を重ねてみたが、お互いのことをもっとよく知るいいきっかけとなりもっと仲良くなった以外でこの状況そのものには何の変化も見られなかった。仲良くなれたのは良いけどさ別に。
「どう思う? バデーニ」
 隣に座るバデーニに問いかける。
「何がだ」
「私たち、仲良くなったよね。すごく」
「…これまでの私たちの様子を第三者が見たらそのように受け取られる可能性は非常に高いだろうな」
「だよね」
「……」
「……」
 逆側の窓が割れてあんたに笑顔を持ってきたと叫ぶ誰かがこの空間に飛び込んできてはくれないだろうか…。叶うはずもない淡い期待に目を閉じ、両手で顔を覆ってテレパシーを放つ。
 ───私たち、結構仲良くないですか。お喋りもしたし、手とか握っちゃったし、手とか握った状態でまたお喋りとかしたし、一昔前のSNSでは「私の一番かわいいところに気づいている君ってすごい!そして君が知ってる私が一番かわいいって私自身も気づいた!」といった内容の歌詞が流行っていたのだが、この部分は非常に読み取りにくい内容になっているように感じないか、実はこの曲の作詞者は有名大学の出身で哲学を専攻だったという経歴を持っているのだが、このような複雑な構造となっている歌詞に哲学や論理学の理論的な要素が含まれているようで、ちょっとなんだか興味深いと思わないかという私のよく聞くラジオ番組でのトーク内容の受け売りをそのままバデーニに振ってみると微妙に口角を上げて「確かにその片鱗は感じるかもしれん」と返してくれたしその話をするのに夢中になった私は疲れてしまって居眠りしちゃって、気づいたら相手の肩を枕になんかしちゃったりしたんですが、開かないんですか。異性との交流でここまでしたんですよ。ドアのドの字も部屋に現れないのって、おかしくないですか。これだけ活発にコミュニケーションを取った暁に、これまでのどこかの何かを切り取って「実キス」と判断していただくことはできないでしょうか。仲良いだけじゃ、だめですか…?
 掌の肉感に瞼越しの眼球を押し付け右左正面、及び上下様々な角度から私たちを監視しているであろう何者かに向けてメッセージを発してみたが、それでも部屋は部屋のままだった。見ている者をキュン死させるまでの親密さとまではいかなかったらしい。しろよ。面のいい鉄仮面がちょっと笑ったかもしれないんだぞ。それに免じてキュン死してくれよ…。一体何が足りなかったのか、結論としてこの計画も失敗に終わった。またこの結末から相対的に「口腔的親密行為」とかいう単語はやはりキスという行為を指し示しているのだということも分かってしまった。「口腔的」という単語からもしや音声でのコミュニケーションもその内に含まれるのではないかとこれまたオフホワイト張りに淡い期待を抱いていたが、やはりキス部屋はそう簡単に突破できるものではないようだ。
 手詰まりになった。完全に。出られない。詰んだ。どうしようもない───…それらの事実に少しばかり絶望し、お互い頭を使うことにも体を使うことにも励ましの言葉をかけ合うことにも疲弊し始め、しかし漂う絶望感を払拭したく思ってまた他愛もない話を吹っかけてみるもまるで油の切れた歯車が重みをかけてもろくに回らないそれのようにうん、とかああ、とか大した相槌も打てず、話題は尽き、停滞は止まらず、まるで止まった命を伝える心電図のモニターにただ真っ直ぐ伸びた線のような沈黙が流れるのみだった。
「……」
「……」
 空気が重い。岩石の内部で呼吸しているかのような閉塞感すら覚える。ここからどう行動すればいいのだろう…。いや、まだ一つ残っている。できれば極力…いや、なるだけ…命と引き換えにされたら実行するほかないが、そのように危機的状況でなければ絶対に避けたい方法が一つ。そう。「口腔的親密行為の実行」である。
 とはいえ、でも…。思案しながら膝をさらに小さくさせて腕で抱く。ただの手段とは言え、なんだか、相手にとってとても酷いことをしてしまうような気がして前向きに提案できないし、したくもない。どこまでも続く感情と状況の平行線に深く溜息を吐いた。直後、バデーニが不意に呟く。
 
「口腔的親密行為、か」
「………」
 このタイミングの発言に意味がないわけがないだろう。同じ方向を向いているという信頼感から窺い知ることなく済んでいた仲間の表情に確信が持てなくなり、その不安から私の背骨がさらに丸まった。肩に首を埋め膝小僧に頬を押し付ける。何故かバデーニを見ることができず、生活感のない真っ白い部屋をただただ直視した。返事もせずさらにコンパクトになっていく私に、バデーニは「一つ聞こう」と前置きしながら会話を始める。
「何故できない?」
「…えっ」
 何故って~…何故って~…普通はできないもんなんじゃない? カナ、もういいよ。横浜で全国アリーナツアーの追加公演するんでしょ。いつも汎用性のある名曲に付け込んで変な替え歌ばっかり、しかもごくごく一部のワンフレーズのみを切り取るばかりでさして広がりのない退屈なものばかり作って、ごめん。配信限定ベストアルバムのリリース、おめでとう。心の中の横浜駅その改札でカナの後姿を見送ってから私はバデーニに目をやる。私と同様、壁にもたれた姿勢で、視線も同じ向きへと投げたまま、重ねて私に尋ねる。
「…答えなくても構わないが、君は、自分が既に特定の異性と交際関係にあるために、私との口腔的親密行為を忌避しているのではないのか」
「え…」
 予想だにしていない質問に首を伸ばし、まじまじとバデーニを眺めてしまう。何故、突然、そのような。
 不可解な問いに頭が混乱し始め、横浜駅で見送ったカナを呼び戻したい気持ちになる。しかしその前にとりあえず聞かれたことに答えてやりたいし、そもそも芸能人が都内を移動する際は電車ではなくタクシーが一般的なのではないかといった疑念がふと頭をもたげた。
「そういった相手は、いないです…」
「何? いないだと? ふむ…では何故だ」
「そ、そんなに気になること? 恋人でもない相手とキスするのって、普通に誰でも嫌だと思うけど…」
「今は手段を選んでいる場合ではないだろう。ここでそれをしない限り、私たちは永遠にここに閉じ込められることになる」
「それはそうなんだけど、なんか申し訳なくて」
「申し訳ないだと? それは誰に対する感情だ」
「そりゃ…そりゃバデーニにだよ」
「何?」
 落ち着いたグレーの色味がこちらを捉えた。既にちょいちょい述べてはいるが、こいつはちゃっかり頭だけではなく、顔もいい。端正な顔立ちに眺められているのが恥ずかしくて、何もない斜め上を見ながら言葉を紡ぐ。
「私がそれをできるだけ避けようとしているのは、大切な友人に、そういうことをしなきゃいけないことが嫌だからだよ」
 相手への好意的な感情をちゃんと相手に伝えようとするのって、やっぱり難しい。口が変なタイミングで閉じてしまったり、相手の目を見ると急に顔が熱くなるから視線は逸らすしかないし、でも伝えるにはやっぱり目を見たほうがいいよね、というマナーを志している己の無駄な生真面目さがそれをまた相手の方向へ戻そうとしてくるし、どうしても変な顔になる。特に対面だとそういう顔をしているのが相手にバレてしまうというのが一番やりにくい。
 相手はふむ、と視線を斜め上に向けた。伝わっていないのだろうか。一人で恥ずかしがって大切な友だち、とかって馬鹿正直に口にしてしまって、変な奴だと思われているかもしれない。弁解をするように早口でまくし立てた。
「キスって、好きな人に好きって気持ちを伝える愛情表現のための行動のひとつでしょ。それって人間関係においてすごく重要な行為じゃん。だから、大事な友だちに、そういう大切な意味のある行為を、私っていう、あまり意味のない相手にさせなきゃいけないってのが嫌というか…」
 真夏で使用している平成中期に発売されたアンドロイドくらいのオーバーヒートを起こしている頭ではもうそれ以上の言葉が出てこなかった。それを探そうと焦る私の視線がまた彷徨い、手がざわついて指を握ったり開いたりしてしまう。どうもまとまりそうもないので、自分の感情からちょっと距離を取って、ぐっと端的に結論づけた。
「つまり、友人であるあなたのことをできるだけ大事にしたいってこと」
「…君が私に最大限の配慮をしてくれていることは分かった」
「は、はい」
「それで、君はどうなんだ」
「私?」
「そうだ。君はさっきから私の視点に立った場合の感情について話している。君は、私とその行為を交わすことをどう考える」
「ど、どうって」
 どうって〜…どうって〜…? 脳内にいる本人は既に横浜Kアリーナへ赴き恐らくアルバムの新曲「マジカル☆スターシャインメイクアップ」から始まり「君って」「会いたくて」からの「トリセツ」という意中の相手と出会ってから恋愛の不安や嫉妬などのネガティブな期間を過ごし、最後は無事結ばれるという流れを楽曲で模した神セトリを携えてイマジナリーライブの準備に勤しんでいるというのに、私の空耳には未だに何度も何度も擦られてすっかり掠れてしまった同じフレーズがリフレインしていた。そして、その後のメロディラインへ続く言葉が空になる。とりあえず曖昧に笑ってその場を濁した。
「どうって、そんなの別に気にしなくても」
「何?」
 バデーニの片眉が上がる。ヤバい。面倒なモードに入った。武骨な人差し指が私をさす。
 
「君は今しがたその行為が人間関係において非常に重要で意味のあるものだと自分で定義しただろう。自分はそうじゃないとでも?」
「えっと…」
「君は自分の肉体の一部を他人に接触させるといった手段で他人と交流するのに一切のストレスを感じないということか。手や、足や、口腔内のいずれにおいても」
「そ、それはそんなことないけど、でも、私も、それしか手段がないならもちろんするよ。だって仕方ないし」
「その相手が私であってもか」
「そりゃ…できるよ」
 だって、仕方がないんだから。リピートしたところではっとする。バデーニも私と同様、私という対象が不快でないかが気になるのかもしれない。なんだかんだ調和を好む人物だったことを思い出した。
「あの、見当違いの返答だったらごめんなんだけど、相手がバデーニとバデーニ以外だったら、この場にいたのはバデーニでよかったと思うし、他の人とするよりは、バデーニとするほうがまだ良かったなって思う…よ」
 この答え方は合っているのだろうか。意図せず相手の価値を下げてはいないだろうか。いまいち自信が持てなくて尻すぼみになっていく声量に、バデーニは一拍置いてから「そうか」と返した。その後の追及がないところを見ると、どうやら確信を突いた発言だったらしい。ほっと胸を撫で下ろす。
「私は相手が君であれば気にならないがな」
「……。あ、ありがとう」
 予想だにしていなかった返答に、撫で下ろした手がそのまま留まる。どうやら私は自分で思うよりバデーニに気に入られていたらしい。驚きに躓いた感謝をなんとか口にする。向こうはこちらを一瞥し、それ以上は何も言わなかった。
「これでお互いわだかりは払拭されたわけだが、君の『申し訳なさ』とやらに整理はついたか」
「…どうだろう…でもさっきよりはいいかも」
「まだ切り切れないのか? これは不可抗力な出来事であり、我々は第三者によって行動に制限をかけられているんだぞ。君も私も、互い行動の責任を互いに追及することはできないだろう」
「まあねえ」
「…友人関係になければ気にならないということか」
 どこに焦点を結んでいるか分からない表情のまま呟いたのが愉快で、頬の片方がくっと上がった。ここまできてまだ実行しようとしない、その善良さゆえに自体が解決の方向へ進まないのが面白い。私だったら面倒くさくなって無理矢理キスしてズギュウウウン!という効果音をコマの真ん中に堂々と描いていることだろう。傍若無人、慇懃無礼、冷酷非道のように見えて身内には結構優しいんだよな。幼稚園の滑り台のように通っている鼻筋をたたえた理性的な横顔を眺め「まあそうかもねえ」と適当に返事をした。
「随分と曖昧な返答だな。はっきり答えろ」
「やってみないと分かんないし…そもそもだけど、私たちは自分たちが友人関係だってお互いに認識してるじゃん。しかも、結構な時間をかけて。それを今更どうやって変化させるの?」
「方法はある」
「あんねや」
「思い込むことだ」
「………」
 ここに来て…思い込み…? 耳を疑う発言に顔を向ける。平常そのもの、といった相手の顔と相対した。
「そ…そんな…曖昧な…」
 平時から面倒ごとを避けるため相手の意見に対立しない姿勢を取っている私ですら思わず反論めいた感想を零してしまうほど、それは余りにも掴みどころがなく、概念的であり、非常に信用のできない提案であった。私の消極的な態度にバデーニは君の言いたいことも分かる、と目を伏せる。
「私もこのような精神論は好きではない。むしろ嫌いだ。しかし、人間の脳が、その持ち主の生活している環境、生活習慣、また日常的な言動から変容するという事実は理学的にある程度の証明がされている」
「それはなんとなく分かるけど」
「『引き寄せの法則』というものを知っているか。前向きな思考は前向きな経験を人生にもたらすという考え方で、つまり、思い込みが自分の感情や行動を変化させるきっかけになるという疑似科学の概念が存在する」
「疑似科学ぅ?」
「科学は科学だ。擬似的とは言え、人間の習性に着目した結果として確立した説であることは事実だ。研究の余地があるという意味で一定の信憑性があると考えている」
「ふーん…?」
 漠然とした内容と不信感から薄っぺらい相槌を打つのみとなったところで、バデーニが「つまりだな」とまとめに入る。視線を上げた顔が少し傾いて、私のそれとかち合った。
「この概念を利用して、私たちは今から友人ではなく自らの交際関係にあたる人物として互いを認識する。それによって、この後に実行しなければならない口腔的親密行為に対する心理的な負担を軽減するんだ」
 それは、実に理性的な発言であった。不安や迷いの一切はそこにない。自分の正しさを信じ切った表情で、目の前の人物は私にそう提案した。
「………」
「………」
「………」
「…なんだその顔は。何か言ったらどうだ」
「いや…なんだろう…その…」
 私は目を閉じ、親指と人差し指の背に額を押し当てた。白い光が混じってまだら模様となった暗闇に、感謝、謝罪、尊敬、ウケる、ワロタ、おもろ、めんどくさ、生きづらそうなどの感情が浮かぶ。様々に渦巻く脳内を二本の指で支えながら、とりあえず「馬鹿にしているわけじゃないよ」とだけフォローした。
「なんというか、私のために、いろんなところにある理屈と理屈を結びつけて、いっぱい考えてくれて、ありがとう…」
「…君がいつまでも些細なことを気にするからだろう。早急な問題解決に君の感情面での不都合が関わってくるなら、それを解消するまでだ」
「あなたってホントに良い人だね…なんだか申し訳なくなってくるくらいに…」
「おい、その罪悪感を解消するために提案したんだ。謝罪をするのは止せ」
「うん…そうだよね…ありがとう。本当に嬉しい。ありがとうね」
 大学生にもなっておいてたかだかキス如き、ここまで気を遣える人間がいるだろうか。少女漫画のように顎をクイッとやってチュッとするだけの話に、相手のためこれほどまでの言葉と時間を尽くす人間が果たして全国の大学探して一人でも存在しているだろうか。しかも男で。
 深夜ラジオのパーソナリティとゲーム配信者とSNSの情報に影響を受けすぎている己のジェンダー感に疑問を抱くこともないまま、私の両手の指が自然と絡み合って祈りの形を取った。もしかしてこの人、聖人かも…。こんな極限状態にあっても私という他者への配慮を忘れず、それどころかこちらの引っ掛かりが僅かでも気にならなくなるよう、知恵を絞って新しい提案までしてくれるだなんて。きっとノーベル平和賞も夢じゃないよ…。
 繰り返される感謝の言葉に逸れていたバデーニの視線がまた、こちらへ向いた。
 水分の表現を理由にハイライトが多めに描き込まれているだろう私の瞳に映る。
「話はまとまったな」
 繋がった視線を千切るようにバデー二は顔を正面に戻した。そのまますっくと立ち上がったので、とりあえず私も習おうと慌てて体制を変えているところ、若干ごつめで若干ペンだこが目立つけど全体的にはハンドモデルのようだと評価できる見た目の手が視界に差し込まれる。それの持ち主はどう考えてもバデーニなので、はてこんな紳士的な行動を取るような人間だっただろうかとわりかし失礼な疑問が頭をもたげたが、脳に交際関係であることを刷り込ませるための行為かと納得し、そのまま手を重ね、立ち上がる。相手の手が私の動く速度に合わせて移動する。よく観察されていることを変に意識してしまい、彼のエスコートで直立した私は目の前に広がるバデーニの鼠色のスウェットの胸部分へありがとうと言った。
「では、いいか」
「はい…え? 何?」
 無地の上着にユニクロみを感じながら迂闊に返事をする。時差で抱いた疑問のまま顔を上げた。意外と近い位置でバデーニがこちらを見下ろしている。
「好きだ」
 理由の分からない問いへ軽率に頷いた私の喉からざらついた悲鳴が飛び出した。
「え゛っ゛」
 頭上にあるバデーニの眉が吊り上がり、目の片方が不機嫌そうに歪む。
「なんだ」
「な、いや、そ、そこから!? よくない!? 別に!?」
「言っただろう。持ち主の日常的な言動によって変化すると。脳を騙すのにもある程度の説得力が必要だ」
「そっ…いや、そ…」
 それはそうだが…! 体温が上昇するかーっという音が聞こえる気がして、堪らず手を元の位置に引こうとしたのを、バデーニの手が強く掴んで阻止してくる。
「君も言え。罪悪感の軽減を目指すためのものなのだから、君も実践するべきだ」
「あ、あ、はい」
 照れとかないのかこの人…。嘘とは言えこんな画家の描いた澄ました自画像みたいな雰囲気で言えるもんか、普通…。突然の嘘告白と二重に動揺させられながら、しかし平常心を崩さない人間を前に自分ばかりきょどっているのも悔しいので私も背筋を伸ばす。とはいえやはり顔のいい男を前にどうしても「えと、あの」とかいう意味のない声が不規則なリズム感で出てしまう。それでもなんとかこちらを見、あちらを見、そちらを見、と視線をさ迷わせた後、最後にはバデーニを見た。神が手ずからおつくりになられたようなその顔面へ、息を吸う。
「わ、私も、バデーニのこと、好きです」
 その瞳の吸い込まれるような透明感が直視できなくて、すかさず下を向いた。鏡を見なくても自分の赤くなっていることが分かる。頬が異常に熱い。うわ~~~完全に告ってしまった。告るって令和の今、死語ですか? 5年前くらい前のオールナイトニッポンではラッパーの方がいや告るてハズいわとガチでハズそうにしながら笑っていたような気がするんですけど、今でもハズいですか、告るって。
 頭上で聞こえた咳ばらいにもしやと思って顔を上げたがやはり凛とした普段通りのバデーニがいて、一人でぎゅっと目を伏せた。く、悔しい…何故こっちばかりきょろきょろと視線を上げたり下げたり照れたり叫んだりする羽目になっているのだろうか…。バデーニって結構自分の感情を俯瞰して見ている感じがするけど、自分の過去を振り返って深夜に死にたくなったりとかしないのかな。しないか…英傑だもんな…。
 バデーニのことを考えながら、ふと思った。先ほどの言葉がそれほど本心を伴わないものだとしても、彼とお互いをどう思っているかについて言葉を交わしたことはこれまでなかったかもしれない。さらに思う。はたしてここから出た後にこんな機会が再び訪れるだろうか、と。
 二人で互いの姿を描き合い、その生々しく、また瑞々しく光が反射しているままのキャンバスを慎重に互いの額縁へ入れるような、繊細でくすぐったくて、妙な照れくささを味わう時間が、ここから出て忙しない日常に戻ってから、もう一度用意できるだろうか。そんなことを思った私の口が、急に「いきなりなんだけどさ」と口火を切った。反射的な行動に感情が追いつかない。でも「なんでもない」は事実じゃない。そういう定型文を使ってまで会話を打ち切る気分にもなれなかった。
「実は私、バデーニのことずっと綺麗だと思ってるの」
 突拍子もない美辞麗句に、しかし拒絶も戸惑いも返ってこなかった。与えられた余白を前にした私は、いつも思っていたことを言葉にすることに集中する。そのため、私の手の甲にバデーニの長い指が連なっているのから目が離せなかった。
「なんか、美術品みたいで。特に目とか。まつ毛バサバサだし。切れ長で…形がこう…なんていうのかな。図形みたいにまっすぐなアイラインで」
 そこで視線を上げる。こちらを見ているバデーニの目と合う。ああ、そう、こういう目をしているんだよな。なんとなく嬉しくなって、頬が緩む。
「それがまさに知性的で、あなたによく似合うなあって思うよ」
 感情の乗りにくい瞳が、猫がそうするのとの同じような速度で瞬いた。目は口ほどに物を言うと言うけれど、この目にその法則は適用していないように感じる。まあ、分かるときもあるけど。怒りとか苛立ちとかネガティブな攻撃性が備わっている場合は分かりやすいけど、そうじゃない感情を抱えているときってちょっと分かりにくい。今も何を考えているかはやっぱり分からない。気まずさを誤魔化すためにちょっとだけ笑って、続ける。
「私、科学も天文もよく分かんないけど、そういう自然の法則とか現象って、ちゃんと理由があって、仕組みがあって起きてるんだよね。でもそういうのって、分からないと見えないじゃん。バデーニはそれを分かろうとして、そのためにいろいろ研究してるでしょ。
それって自然の中に生きるものとしてすごく大切なことだと思うし、なんか…勇敢で、かっこいいよ。
私、頭良くないから、頭が良いバデーニのこといいなあって思う。だから美術品みたいだなーって思うの。ギリシャ彫刻は、神様とか哲学者とか有名な人ばっかり作品になってるでしょ。それはやっぱり人間の理想を詰め込んでるからだと思うんだけど、なんか、そういう感じで…」
 少し広い話になってきたので話を止めた。上手く話せないもどかしさと正直に話しすぎた後悔が入り混じって喉がつっかえたので、いたたまれなくなって視線をずらす。そして「あと顔がめっちゃいいのもあります」といらない事実を付け加えてみた。
「それは本心か。誇張ではなく」
「誇張…うーん…でも、普通に、その…好き、だと思っています。そういうところを」
 好き、を意図的に際立たせて発音する。これは思い込みのためであると、自分にも相手にも理解してもらうために。
「君…」
 どこかぼうっとした声色に違和感を覚えて相手を見た。バデーニはいつも通りの表情をしていた。
「それは、一時的なものとして認識している交際関係という現状が理由の発言か」
「…半々です」
「そうか」
 しばし無音を聞く。そして、バデーニが話し出す。 
「私も、君の素直な気質を好ましく思っている」
「えっ…あ、ありがとう…」
「……」
「……」
「……」
「…あっ、終わりか…」
 続くかと期待していたのが馬鹿らしくなって、苦笑いしながら肩を落とす。バデーニはやはり何も答えない。心なしか普段より無口な気がするのが不思議と彼の人間らしさを感じさせる気がする。勝手な憶測ににやつきながら、私は頬を掻く。
「私、バデーニにそんな風に思われてると思ってなかった。嫌われてはないんだろうなと思ってたけど…そうだったんだね。ありがとう。すごく安心した」
「安心? 君は私と過ごしながら不安を感じていたのか」
「あ…う、うん、不安っていうか…バデーニがなんで私みたいな頭も悪けりゃ要領も悪い、さほど大きな取り柄もない人間と仲良くしてくれるのか不思議で」
「…確かに君は私ほど優秀ではない。私の周囲にいる人間と比較してもそうだ。要領が良くないという自己評価も否定することはできない」
 ボコすぞ。スマブラでな。突然のDisに頬を引きつらせながら頭の中のキャラ画面でドンキーを選択している私の手を、バデーニの手が握り直すように少しだけ開いて、また繋ぐ。
「だが君は、私にとって必要な人間の一人だ」
「…左様で」
 二度も三度も聞き返したい衝動を懸命に堪えた結果、古風な返しになってしまった。また続かないパターンかなと思い礼でも言うかと口を開いたら、バデーニの低く深い声が後に続く。
「見えないものを見ようとする姿勢を肯定的に捉えていたな。それに向き合う私の姿が勇敢だとも」
「…言いましたが…」
 自分が相手に向けた言葉を向けた本人から改めて言われるのはさすがに恥ずかしい。さすがに黙り込んだ私のつむじにバデーニの視線を感じる。
「私にとってのそれは人間だ」
「………」
 バデーニを見る。よく磨かれたガラスのような目をしていると思った。
「人は何を考えているかは分からない。それまで親しい関係を築いてきたはずの人間が突然態度を変えて自分に何らかの形で害を加えようとしたり、関係を絶ったりする」
「……。そうだね」
 大学で見かけるバデーニは大抵一人だ。私は彼の交友関係を把握している。はっきりそう言い切れてしまう程度には彼は人との付き合いがない。彼と付き合いのいい学生は2人いて、彼と彼女は私の友人でもある。それ以外を知らない。と同時に、彼ら以外の人間はバデーニをその輪のなかに入れようとしない。その割に気にしている。何人かの学生がバデーニへ送る視線のそれがどういった意味の視線なのか、私には推し量ることはできない。嫌悪か、興味か、もしかしたら好意なのか、嫉妬か。課題を完了させるために必要な情報交換程度は行っているようだが、少なくとも、大学における彼の構築してきた人間関係の対象に私の知らない学生はいない。
「私の対人姿勢は、一般的に見て友好的なものではないだろう」
「ああうん。それはもう」
 即答する。彼を遠巻きに見ている学生たちの態度が気になりはするが、納得はできる。そりゃあグループワークで
「だろうな。では何故私と交流しようとする」
「ええ…? まあ、一回や二回の関わりじゃあ分かんないし…それに誰だって、一つや二ついいところがあるものだって言うし…それになんか、人に教えるときとかは結構親身だし」
「そうか。…なるほどな」
 バデーニが目を伏せた。表情がどこか和らいだように感じて、しかし事実か主観によるものかを判断するのに間に合わず、また、普段の表情に戻った。 
「君のその『一回や二回の関わりでは分からない』という姿勢もまた、見えないものを見ようとする姿勢のうちに入るものだと思うがな。人に教えるときは親身だという気づきもまた、人という領域を知ろうとしている姿勢から得たものだろう。それは、広く見れば研究に対する姿勢だという見方もできるのではないか」
「…か…過大評価過ぎん…?」
 「過大」評価に「過ぎる」という言い回しが付くのは文法的に間違っているぞ、という指摘が来ることによってこの時間が終わらないかなと思ったが、終わらなかった。とどめと言わんばかりにバデーニの口元が緩む。今度は思い込みでも錯覚でも厳格でもなく、私は確かにそれを見た。
「君のその前向きな姿勢が、私という人間を前にしても変わらなかったことに感謝している」
「は、はあ…」
「それに君はよく人を褒める。感謝も謝罪も、しつこいくらいにするだろう。そのように感情を素直に口に出すところも、私にとって接しやすい人物の一人となっている所以だろうな」
「あの…今、交際関係だから言ってる?」
 バデーニ以外の友人はおろか親や身内からもこれほど己の長所を語られたことはない。その時間がまさかバデーニから与えられるとは思ってもいなかった私の額や頬に、変な感じではあるが決して不快ではない汗が数滴流れた気がした。素直に笑って受け止めればいいのにそれもできない自分の自意識の強さが余計な質問を重ねてしまう。そうだと言われたら悲しくなってしまうだろう。じゃあ聞かなきゃいいのに、でも、どうしても確かめたい。
「さあな」
 その口角がほんの少し頬の方へ上がっているように見えた。
「…はあ!? ズルくない!?」
「なんとでも言うといい」
「なんだよ!」
 結果として、私は少しだけ怒った。でも、なんだか胸がいっぱいでそれ以上の叱責を浴びせる気分でもなくなって、「もー」と牛の鳴き声のような文句を当てつけみたいに呻いてみた。
 また二人で黙り込む。それは停滞することなく、心地よい温度で何かが流れていく時間だった。私は「じゃあ…」と口火を切る。そうできる程度には軽い空気感だった。
「し…しますか。口腔的親密行為、とやらを」
「いいか」
 手が離れて、肩に置かれた。走って逃げだしたくなっているところ踏ん張って、髪の毛を耳にかけてみたり、肩関節を上下させて可動域を柔らかくしたりしながらほんの少し居住まいを正す。
「ど…どうすればいい? 上見ればいい? 目とか閉じるの?」
「好きにするといい。ただ、そうだな。下を向かれるよりはやりやすいかもしれん…では、いくぞ」
「は…はい! ───うっ…!」
 通夜で出された仕出し弁当の中にあったよく分からない煮物を口にしたときのような呻きを上げて、ただひたすらにじっとする。
 しばらくして、ガチャ、という福音が聞こえた。二人でバッと同じ方向を向く。白一面の壁に、いつの間にかドアができていた。ついに待ち望んでいたそれにやったあ!! と叫ぶ。そのドアはほんの少し外側に開いており、奥の景色は見えないが、この密閉された空間の空気が一気に外へ流れ出たような、スケールの大きい感動を与えられたような気がした。
「バデーニ…!ありがとう…!」
 安堵と感動で、自らの肩に置かれていたバデーニの手を両手で握って感謝の意を述べた。もう、本当に良かった。もう二度とスマブラできないしオールナイトニッポンも西野カナもBUMPも聞けなくなるんじゃないかと思った。カナは横アリのライブがあるし、BUMPはRADとの対バンを控えているというのに。どちらのチケットも既に外れているのであまり関係のない話ではある。
 拍動も止まるほど冷え切っていた心臓の氷がほどけていくのを感じながらバデーニに向き合った。さすがのバデーニも深く息を吐いてようやくかとぼやいている。あまり見ない呆れと疲労の表情に親近感を覚えた私は、私の手からはみ出しているその大きな手がされるがままになっているのが何故かこの上なく嬉しくて、つい調子に乗った発言をしてしまった。
「ねえ! あの、もう、出られると思うんだけど、その…これからは、親友としてよろしくね!」
 これはもう相棒と言っても過言ではないだろう。共に苦難を乗り越えハッピーエンドに辿り着いた私たちの絆はキルアとゴン、ナルトとサスケ、セーラームーンとルナ、まることたまちゃんである。当然、肯定的な返答になると思っていたバデーニの発言がそれとは全く違うものとなって返ってきた。
「私は今後もこの関係を継続したいと考えている。故に、その申し出は断りたい」
「ん?」
 疑問で首が傾いで、視線のみが上へ向く。脳内で何度も事実を確認する。扉が開いたこと。バデーニのことを親友と思いたくなったので、感謝の気持ちを示そうとしたら、それを断られたこと。その理由は現在の関係を継続したいからであること。そして、現在の関係について、先ほどのやりとりを思い出す。
「…ん!?」
 バデーニの要求と動機を整理しようと首の角度がほぼ直角になった途端、彼の手が私の顎を掴んだ。相手の顔がぐっと近づく。親指で圧迫されている頬肉が口角と目尻を押し上げている。状況の理解ができずされるがままになっている私に、何故かまた顔が近づいた。相手との距離がなくなって、目頭から目尻にかけて定規で引いたように直線的なアイラインが、熱で熔けた金属みたいにとろけているのに気づく。彼は美術品ではない。これは、男の目だ。バデーニはしっかり唇に吸い付いている。ちゅうとかじゅうとかいう短い吸引音が断続的に鳴るたびに、自分の肩がぎくぎくと縮こまる。
 口角まで余すところなく重ね合わせ、何度も角度を変える。混乱とパニックになりながら自分の左手で相手の背中をバシバシ叩いていると、バデーニの片手がその手を取って、そのまま壁に押し付けられた。そして、指の一本一本の隙間にバデーニの一本一本が滑り込んでくる。ぴたりと密着した温度は熱く、びくともしない。
 舐めたり吸ったりされてから、顔の距離はそのままに角度をずらして距離を取る。酸欠か混乱か、もしくはその両方で焦点が合わない視界に、バデーニの声だけが耳に届く。
「君はどう思う」
「どっ…どっ…んう…!」
 どう、と申されましても。こちらが何か言う前に、また顔が近づいたのできつく目を閉じた。何か温かく柔らかいものが顎下に触れ、そのまま唇をふさいでくる。それが唾液を掬う仕草だと気づいて、不覚にもときめいた。あのバデーニが自分に対して、明らかに劣情を思わせる行動を、自主的に取っている。もう何もかもよく分からない。なんだこれ、なんでこうなってる? カナの曲にこんなのあったかな。異性の友人から少し強引にキスされて、でも意外と嫌じゃなくて、むしろなんだかドキドキしちゃってる歌って、あったかな。
 日常会話に気軽に使用できるミームとして面白おかしく多用していたカナの恋愛曲がまさか自分のこととして思い起こすことになろうとは。とある一節を頭の中の西野カナが、あの、明るく、伸びやかでしなやかな声で歌い上げる。
 Ah なんで好きになっちゃったのかな…
 いや別に好きになってねーし!!!!!確かに疲れてたらテレビつけたままスヤスヤ夢見たり靴下も裏返しのまま脱ぎっぱなしだったりこっちが携帯忘れたらため息ついたりする変わり者の可能性はあるしなんなら変わり者である事実はもはや確定事項だけど!
 でも、でもDarlingではねーから!!!!!
 ねーからと胸中で絶叫しながら、舌まで入ってくるタイプの突然のKiss(斜めフォント)を何故か強い気持ちで拒む気持ちにもなれず、ただただ必死にバデーニへの感情を西野カナ以外の楽曲から探すのに必死だった。
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誰が見てるんだろうコレ
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怖いな
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ななし@055802
俺〜
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ぱな
怖くはないか
1,020:38
ぱな
誰だよ
1,020:44
ななし@055802
ねつきだけど……
1,021:03
ぱな
だけどじゃね~
1,021:13
ぱな
そうかなとは思ったけど
1,021:26
ぱな
早番じゃないの…?
1,021:31
ななし@055802
そうだよ
1,021:45
ぱな
寝ないの…?
1,022:10
ななし@055802
君の文を読み終わったら考える
1,022:34
ぱな
てかやっぱりここって見てる人には見えるんだね
1,022:46
ななし@055802
う、うん
1,022:50
ぱな
もう寝たほうがいいと思うよ
1,023:09
ななし@055802
まあぼちぼちね
1,023:15
ぱな
じゃあ休憩と開始の時間もここに入れておくといいんだね
1,023:18
ななし@055802
てか通話は?
1,023:25
ぱな
いや だって
1,023:37
ぱな
早番て言うたから
1,023:49
ぱな
もうマザーズで通話しているよ
1,023:56
ななし@055802
なんだよ
1,024:01
ななし@055802
俺は用無しか。
1,024:18
ぱな
いや早番って言ったから…w
1,024:45
ななし@055802
じゃあそう言いなさいよ……!
1,024:48
ぱな
しかも散歩行ってくるって言ったら通話終わったし
1,025:00
ぱな
もうあの 今日は無理なのかと思ったよ
1,025:20
ななし@055802
じゃあ一回切るね、ていったじゃないの〜
1,025:48
ななし@055802
まあ別にいいんだけど
1,026:05
ぱな
ごめんタイマー来た
1,026:09
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始めます
1,026:23
ななし@055802
どうぞ〜
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キタニタツヤとラスアスとデトロイトの話で作業止まってる
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ありがとうございます 励みになります
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ぱな
トイレ
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ぱな
帰宅
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1,767:12
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ありがとう!
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ななし@6576eb
イイネです!初めてこのサイト来ました。小説Liveは初めてみました 頑張ってください!
1,768:27
ぱな
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1,770:08
ぱな
少し休憩しますね 見に来てくれてありがとうございます 好きな時に抜けってくださいね
1,770:36
ななし@6576eb
了解です ありがとうございます☕
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ぱな
猫に餌
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ななしさんて、まだおられます?
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ぱな
付けっぱ退席してるのかしら ちょっと一旦ここらでストップしますね 見に来てくれてありがとう またどこかで
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ぱな
めっちゃ気づかなかったもう結構前だけどごめんなさいね蒼天光さん…
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現パロchi夢バデ山とキス部屋(完!)
初公開日: 2025年08月01日
最終更新日: 2026年05月15日
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