アキラは「神像」に近づく。「神像」の基部には、この地下世界で人々を生かしていた……はずだった神の涙が、汲み取る者もなく溢れている。
波紋が広がるその水面に、アキラはキョウコの、父母の幻影を見て、それを踏み潰すようにさらに一歩踏み出した。タナカから教えられていた通り、爆薬をセットする。作業を邪魔するものは誰もいない。もはや誰もが屍となってその身を冷たいコンクリートの床に横たえているからだ。
死が敷き詰められた静寂の中、アキラは作業を進める。できることは、それしかなかった。
ややあって、爆薬のセットが完了した。もう一度「神像」を見上げる。「神像」はただ、その両目から涙を流すだけ。
「神像」から距離を取り、瓦礫の影に身を隠したアキラはためらいなく爆破スイッチを押した。轟く爆音と粉塵が地下空間を満たす。狭い空間に韻々と響き渡るそれは――神の断末魔か。
瓦礫の影に身を伏せたアキラは、降り掛かった粉塵もそのままに身を起こした。
――「神像」は、破壊されていた。その顔(かんばせ)は真っ二つに割れ、コンクリートの床に転がっている。
ふらつきながらアキラは、砕け散った「神像」に近づき、触れる。破壊され神性を失ったそれは――ただの、コンクリートの塊だった。
喪失感さえ、もはや感じることはなかった。以前からもう、わかっていた気すらしていた。
瓦礫となった神を蹴散らしながら、アキラは爆破された「神像」の跡にできた大きな穴を覗き込んだ。
「神像」を失っても、水は流れ続けていた。上から、流れ落ちている。
「神像」は、ただのコンクリート製の像だった。では、この水は?
家族を、友人を、仲間を、そして神をも失った少年に残されているのは、この水の出どころを確かめることだけだった。
アキラは自分の身体が勝手動いているかのような錯覚を覚えた。爆破でできた穴の中に身体を強引に滑り込ませたときにできた擦り傷の痛みさえ、