「レイア、大丈夫かよ?」
「うん」
 レイアは心配そうにセオの問いに頷く。
 二人は窓すらない小さな部屋に閉じ込められていた。
 それはレイアがカルシア王国の王女であるため、である。
 セオは反対したが、テイラーに押し切られ、レイアと共に部屋に閉じ込められることになった。
「何があっても、俺が守るから」
「ありがとう」
 レイアが城の地下から出て、世界を知って、まだ二週間も経っていない。
 自分の血が酷いことに利用されていて、それで不幸な人が多く出ていることに絶望した。けれどもセオに勇気づけられ、レイアは前を見て歩いていた。
 償い方法が死以外にもある。
 それはとても甘美な言葉ですがりたくなる。
 地下にいる時は死も生もよくわからなかった。
 けれども、こうして色々な事を知り、見て、生きたいと思ったので事実だ。
「レイア?な、泣いてる。やっぱり嫌だよな。こんな扱い。やっぱ文句、」
「ううん。違うの。セオ、ありがとう。私、嬉しいの」
「嬉しい?」
 セオは困惑していた。
 レイアはそれがおかしくて笑ってしまう。
 今度は笑いだした彼女をセオは本当に心配してしまった。
(不死身の兵士を眠らせて、すべての毒薬を破壊したら、殺されるかもしれない。それでもいい。ううん。多分、それが正しい。私はこの瞬間を生きる。セオと一緒に)
「ありがとう。セオ」
「な、なんだよ。レイア。どうしたんだよ」
 セオは優しい。
 レイアは彼の優しさに包まれて、幸せな気分になっていた。
 ★
「カルシア王国軍が最強と言われるのは、不死身の兵士と王チャーリーがいるからよ」
 反カルシア軍は、各地域の幹部を集め、作戦を話し合っていた。
 アステライゼの五つの地区に、反カルシア軍の支部を置いていた。
 分散すれば見つかりづらく、また敵を攪乱することができる。五つの箇所から街を見るため、街で何かあった時の行動が早い。今日はテイラーが不死身の兵士になってしまった女性を殺したが、通常は反カルシア軍の隊員が対応していた。
「不死身の兵士は王女が行動不能にしてくれ、チャーリー王はあなたとエディが止めてくれる。今は兵力差だけが問題よ」
「他の領地から助けを援軍を求めては?皆がカルシア王国の統治を歓迎しているわけではないでしょう?」
「クルスナラハだけが恐らく援助してくれる。後はみんな怯えてだめね」
 マリーナは困ったように笑う。
 彼は青みがかった金髪に、女性のように化粧を施している。
 髪色も化粧も、身分を欺くためだろうとテイラーは推測する。
 
「だから、一点集中。チャーリー王を殺してしまえば兵力差の問題も解決するわ。ここにいる駐屯兵を見たでしょ?クズばかりよ。不死身の兵士がいなければ何もできない連中ばかり。なので、あなた方が頼りよ」
 幹部たちはマリーナを除いて四人。誰しも黙ってマリーナの話を聞いていた。
 彼らはマリーナの本当の身分を知っているのだろうと、テイラーは考える。
 エディが窺うようにテイラーを見る。
 彼はセオとレイアを助けたように情に脆い。
 この反カルシア軍に対しても情を持ってしまったのだろう。
 手を組むことによって失うものはないはずだ、とテイラーは決断を下した。
「承知いたしました。協力しましょう」
「ありがとう。助かるわ!」
 かばっとマリーナに抱きしめられ、テイラーは戸惑う。
「大丈夫、友情の印だから」
 そっと囁かれて、彼はぞっとしてしまった。
「そういう趣味なのですか?」
「まさか。フリよ」
 マリーナは妖艶に微笑む。
 とてもフリとは思えないと思いつつ、テイラーは具体的な作戦を練るために本腰を入れて会議に参加した。
 ★
「トンボ帰りとはついてねーな」
「そうだな」
 船上で、商人仲間同士でそんな会話をし合う。
 予定ではクルスナラハでいくつか商談をするつもりだったのだ。商人たちは。
 しかしカルシア王国軍が元の港街にに戻るということで、護衛なしの旅は厳しいので多くの商人たちは軍に追随した。
「王女がいたとはな」
「驚きだな」
「だが、これで安泰だろ。カルシア王国にはこれからも大国として末永く栄えてもらわないとな」
「まあ、まずは王女奪回が先だろ」
「そうだけど。相手は反カルシア軍だろ?今までは本腰を入れてつぶすつもりはなかったが、今回陛下は本気だ。反カルシア軍など吹き飛んでしまうだろう」
「そうだな。確かに!」
 商人たちは笑う合う。
 アーロンはそれを黙って聞いていた。
 リアムと連絡を取って今後の動きを話し合いたいが、船上で目立った行動をとるのは避けるべきだった。
 しかも船にもチャーリーも乗っている。
 変装したと言っても、油断はできなかった。
「おっ、港が見えて来たぞ」
 王都とアステライゼの間に位置する港街が見えてきて、甲板が賑わう。
 沈んでいく太陽を背に街並みが美しい。
 けれども今日の夕日はいつもより赤味がかかっており、アーロンは空が燃えているようだと思ってしまった。
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