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以下メモ
甚爾・直哉逆行転生設定
甚爾が兄、直哉が弟として、直毘人の子供として逆行転生する。
二卵性双子。
真希真依の1つ下、虎杖・釘崎・伏黒と同年齢。
10歳になる前、通常5〜6歳で発現するはずの術式は、2人には発現しなかった。
逆行転前と同様、甚爾は天与呪縛のフィジカルギフテッド呪力0、直哉は術式なしと思われていた。
奇しくも1歳上に真希真依が生まれていて同じような境遇で、真依には術式があったため、事あるごとに比較され、男のくせにと言われている。
かつ、虐げるための体罰などは、甚爾・直哉に集中し、真希真依は2人の逆行転生前よりは幾分か虐げられずに済んでいる(直哉も上にいないし、いくらか、なだけ。普通にちゃんと虐げられている)。
2人はそれぞれお互いだけを頼りに守り守られ(というには2人とも力がなかったが)生きてきた。
ある日、甚爾と直哉は懲罰房に閉じ込められる。兄であるしフィジカルギフテッドである甚爾は、直哉を庇い大怪我を負ってしまう。
兄を守らなきゃ、と思ったところで術式が開花。逆行転生前と同じく投射呪法であった。
周りの呪霊を一旦退けた時、激しい頭痛に見舞われる。それは甚爾も同様だった。
「……甚爾君?」
「……直哉、か?」
それは今までお互いを呼んでいた呼び方と変わりなかったが、明確に違う意味を含んでいた。
2人とも逆行転生前の記憶が脳内に飛び込んできたのだ。
「え、え、え、甚爾くん? 甚爾くんやぁ……、えっ、ちっちゃ!?」初めて見た子どもの甚爾くん、と興奮するように言う直哉。
「小せぇに決まってんだろ、同い年だぜ」
「え、あ、そっか……えっ!? 俺、甚爾くんと双子ってこと!?」
混乱する直哉を2級呪霊が襲う。
「このカス空気読めや!」今甚爾君とお話しとんねん! って殴り祓う直哉。
もうコイツに任せればいっか、と座って眺めている甚爾。
「ちょお、甚爾君も手伝ってや!」
「無理。呪具持ってねえし」
うーん、と考えながら、「あ」と直哉は声を上げた。怪我を良くするので隠し持っていた包帯を手に取り、呪力を込める。
「ようは呪力があればええんやろ?」
「こんなん一発二発殴ったら消えちまうだろ」
「そこはええ感じに補充するさかい」
拳に包帯を巻きつけ振るう甚爾。投射呪法を駆使しながら自分でも祓い、甚爾の拳の包帯に触れ、呪力を補充する直哉。
すっかり空になる懲罰房。
鍵を開けてもらえるまではいくらか時間がある。
直哉は甚爾の怪我に包帯を巻きながら、2人の持っている情報を端的に開示し合う。
星漿体暗殺、五条悟の覚醒、伏黒恵を禪院家に売ったものの、今際の際に五条悟に託したこと。
ここで死んだはずなのに、朧げに特級呪霊を祓い、伏黒恵を襲い、彼の前で自害したこと。
「自害?」
「呪具をこう」ぐさっと、と頭に突き刺す仕草をする甚爾。
「……実の息子の前で?」
「前で」
うわあ、とドン引く直哉。
伏黒恵を当主にすると言われ、殺しに行ったが叶わなかったこと。
赤血操術を使う受肉体、宿儺の器。
真依の死をきっかけに真希が覚醒し、天与呪縛のフィジカルギフテッドとなったこと。
「真依、真希って」
「今世やと俺らの1個上の従兄弟やね」扇の叔父さんの娘、と直哉。
その真希によって禪院家は壊滅状態となり、直哉はその母に刺されて死んだこと。
「何笑てんねん」
「いや、次期当主様がいい気味だな、と」
ここから先は朧げだが、呪霊となり真希と加茂家次期当主の前に現れて戦い、敗れたこと。
「……さっきから笑い過ぎやで」
「女に刺されて殺されて呪霊になって? 傑作だな」
話した結果、渋谷での戦いとその後の死滅回游、宿儺の器がどうとか、五条悟によって討たれたはずの最悪の呪詛師がどうとか。
五条悟が封印されたとかどうとか。
この世界でも同じことが起こる場合、世界がとんでもないことになりそうだ、という予感。
「世界がどう、とかよりもまず先にこの家をどうにかせんと」
「あ? 壊滅すりゃいいだろこんな家」
「真希ちゃんは、あの日ここに居なかった禪院の名のあるものをみぃんな探し回って殺したんやで。今世は甚爾君やって禪院甚爾やろ」
「じゃあ返り討ちにすりゃいいだろ」俺とお前ならどうにかなるだろ、と甚爾。
「そうなんやけど……宿儺の器もおる、五条悟は封印されて、最悪の呪詛師、夏油傑も何故か生きとって暗躍してる。真希ちゃん殺したところで、どこかで死ぬだけちゃうかな」俺らの預かり知らぬ、前世の未来で、と直哉。
正直、直哉にとってここで当主になる、はすでに目標ではなかった。
甚爾は生きているし、同じ年だし、甚爾が稽古さえつけて戦ってくれるのであれば、『あっち側』にいけるかもしれないし。
何より次期当主として甘やかしてくれる環境ではないし。
呪霊を祓って1級になる、とかもぶっちゃけ興味がない。強さを周りに伝えなくても、甚爾がいて戦ってもらえるなら。
甚爾にとっても、前世と同じくここには価値も何もない。むしろ(記憶が蘇るまでの)大事な双子の弟も同じ目にあっていることから、余計に嫌悪感があった。双子としての執着として、直哉がいて甚爾を慕ってくれていればそれでいい、と思っている。
早い話が、世界とかどうでもいいけど2人で生き残るくらいにはどうにかなって欲しいね、と言う話である。
なんか目立つと巻き込まれそうだし、日陰で生きながらえよう、まずは。
「ここの呪霊が綺麗さっぱり消え去ったことをどうにか誤魔化さんと」
「お前が祓った、でいいじゃねえか」ここにはお前の残穢しかねえぞ、と甚爾。
「それやと俺が助からんやないの!」なんや目立って次期当主候補になったらややこしい、と直哉は言う。
あーでもこーでも言っている間に懲罰房が開く。閉じ込めた奴らが、ハッと息を呑む。ギッと睨みあげる甚爾と直哉。
「これ、お前らが」独り言のように言う2人の兄。
「……術式、あったのか」躯倶留隊の青年が、直哉を睨みながら言う。
(さすがにそこまでは誤魔化しきれんか……)
「そやったら何? 訓練はもう終わりでええ?」
「このっ、クソガキ!」
記憶が戻った直哉の表情に、煽られてると思ったらしい躯倶留隊の青年が殴りかかってくる。
甚爾が庇って殴られる。
「はっ、麗しい兄弟愛だな」吐き捨てるように笑う躯倶留隊の青年。
「お前に術式が発現したなら、当主に伝えなくてはならん」苦々しい顔で「来い」と直哉の手を引く兄。
「待って。甚爾君も一緒やで」
「はあ? 呪力0の猿を当主に会わせるわけないだろう」
「縛り。……甚爾君と一緒におる、甚爾くんを守る、せやなかったらこの術式は使えん」
もちろん嘘だ。だが、甚爾がいなくては使えない、という状況にし、この家から守るためだった。
チッと舌打ちをし、勝手にしろ、と吐き捨てるように言い、直哉を殴る兄。そのままイラついたように去っていった。
躯倶留隊の青年に気の済むまで殴られて解放された後。
「痛っ……ホンマぶち転がしたるぞアイツら」
「穏便に日陰に生きるはどうしたんだよ」
「俺は甚爾君みたいに頑丈や無いねん」
と言うが、呪力で制御したらしく、大怪我はしていない。
真希・真依高専入学の1年後。
一応息子としての情があったらしい直毘人が、甚爾と直哉を京都高専へ入学させる。
悪目立ちせず慎ましく、をモットーとしているため、直哉も術式をひた隠しにしているし、呪力を操作して限りなく0に近づけた結果、2人とも査定は四級に。
直哉は黒髪のまま。ピアスもしていない。
2人ともごく一般的な形の制服。
歌姫は困惑していた。
新入生は禪院家当主の息子たちだと聞いていたし、真依からも五条からもクソオブクソ男尊女卑の家、と聞いているし、真依に会わせるのはしばらく後にしよう、とは思っていた。
2人そろって座学はいつも満点に近く、愛想はないものの教師や補助監督に横柄な態度は取らず、言われたことに従順で。
体術は家で教わったのか、かなり高度な組み手をいつも2人で行っている。
呪力や術式に乏しく任務こそこなせていないものの、学生としては優秀な生徒そのものだった。
ただ、あまりにも自分が無い。
歌姫がいると2人もほとんど喋らない。それは補助監督がいても同じらしい。
真依や加茂のことは避けているらしく、真依と加茂はあったことがないらしい(会わせていないが)。
ずっと避けると言うわけにもいかないので、歌姫は体術の1,2年合同授業を開くことに。
1年2人の体術の能力は目を見張るものがあり、2年にとっても学びがある、と感じたからだ。
「……あら、久しぶりね」
「……」
真依が冷たい瞳で見つめる。1年2人は顔を背け、目も合わせない。
ここまで冷戦状態とは思わず、まずったなあ、と思う歌姫。
「女とは話す価値もないってわけ? 笑わせるわね。その女にも勝てない、躯倶留隊が関の山のアンタらが。当主の息子、だったわよね? 赤ん坊の頃に殺されなかったことを感謝するのね。当主の人生最後の汚点たち」
直哉と甚爾はスッと顔を上げた。なんの感情もない瞳で真依を見つめる。
(なんでこんな目の敵にされてるんだ? 禪院の男と見ればあんな感じなのか?)
(めちゃくちゃイキるやん。真依ちゃんってあんな感じやったっけ?)
逆行転生前の記憶が戻った2人には、自分たちよりかなり幼い少女がピーチクパーチク言っているようにしか聞こえず、全然効いてない。
何も反応しない2人に痺れを切らしたのか、真依は直哉の胸ぐらを掴んだ。
(お、ここで甚爾君を選ばないあたり、まだ見る目はあんな)
謎に関心する直哉。
直哉の頬を殴る真依。隣で甚爾も微動だにしない。直哉もある程度は呪力で防ぎ、大した怪我はしないと踏んだからだ。
「真依!」
三輪とメカ丸が真依を抑える。
「離して!」
「真依」やり過ぎよ、と複雑な家庭環境であることから生徒たちに任せて見守っていた歌姫も静止に入った。
「先生」直哉が言う。「ええですよ。これ、体術の授業なんですよね?」
「は?」真依がイラつきを隠さずに言う。
「体術の授業で、俺は避けきれずに拳を喰らった。そうですよね? 禪院先輩」
盛大な舌打ちをして手を離す真依。
パンッと手を打ち鳴らす歌姫。
「分かった。喰らった方がそう言うなら、そう言うことにするわ。……でも、まずは自己紹介」
「禪院甚爾。等級は四級」
「禪院直哉と申します。等級は同じく四級。甚爾の双子の弟です。どうぞよろしゅう」
三輪とメカ丸が、「禪院……」とつぶやき、なるほど、と納得したような空気を見せる。さきほどの真依の暴挙の理由に納得したらしい。
(悪名轟過ぎだろ)
(轟かせとんのは真依ちゃんやで、多分)
と目線だけで会話をする。
2年も挨拶をし、組手をすることに。
終わった後、メカ丸は違和感を覚えていた。
おかしい。1年2人とも、捕らえたと思ったらまるで蛇のようにするりと抜けていく。
食らわせた、と思っても微動だにしない。多分、攻撃させられている。
(……本当ニ四級カ?)
東京と京都の交流会の話が持ち上がる。
1年は参加しないので、他人事でいた甚爾と直哉。
歌姫が、見学しないか? と言う。なんでも、東京と京都の参加人数差から(所属人数にそこまで差異は無かったはずだが、と思ったが3年2人は停学中、2年のうち乙骨は任務が忙しく出られないらしい)、東京側は1年が参加するとのこと。
「人数に偏りが出ちゃうから、貴方たちは出られないけど。経験としてどうかな、って思って。それでもうちの方が1人多いから、2年はローテかなあ、と思ってるんだけど」
あれ、と思う直哉。
「東京高専の1年生って、2人でしたっけ?」
「ええ。今は伏黒恵と釘崎野薔薇の2人よ」
は、と2人とも瞠目し、思わず立ち上がった。伏黒恵……?
直哉は伏黒がおらず、釘崎と虎杖の2人かと思っていたので、虎杖がいないことにも瞠目した。
甚爾と直哉は思わず顔を見合わせる。
「え、何、どうしたの」
いつも大人しく何も話さない2人の珍しい行動に、びっくりする歌姫。
「あ、いえ……なんでもありまへん」
「そう? で、見学の話なんだけど」
2人は座り直し、顔を見合わせた。うん、と頷く。
「ぜひ、見学させてください」
高専交流戦当日。遠巻きに東京高専と京都高専の先輩方のやり取りを見ていた2人。
「恵君や」
「恵だな」
前世の記憶と寸分違わぬ恵の姿を見て、驚きを通り越して現実逃避の2人。
「甚爾君、どこで種まいて来たん?」
「んなわけねえだろ。今はアイツと同い年だ」
せやんなあ、と直哉は空を見上げる。
「……禪院家の傍系のどっかの野郎が、父親とかなんかなあ」
「……母親かもしれねえだろ」
「顔怖っ」
そういえば、恵の母である女のことは一等愛していたのであったか、と思う直哉。
「え、アカンで甚爾君。さすがに、同級生の母親を奪うっちゅうんは」
「やらねえよ馬鹿」直哉の頭を叩く。
「痛っ!? 手加減してえや」
「してなかったらお前の頭は捥げてる。……それに、伏黒ってことはまあ、そういうことなんだろ」
恵の母が亡くなっていたことは知っていたが、伏黒姓が彼女の姓ではない、ということは知らなかった直哉。
「そっか。お墓の場所って変わってへんのかな」
「俺らが急に行ったらおかしいだろ」
「まあ、バレへんように行けばええんやない?」
適当に笑って直哉が返すと、甚爾は背中をバシっと叩いた。痛いと講義をしたがさっきの頭よりは全然痛くなかった。
伏黒に気を取られて、虎杖登場を見逃していたが、なんかすごい滑っていたし五条もしばかれていた。
「それから」と歌姫が言い、こちらを振り返った。
甚爾と直哉が呼ばれる。タタッと駆けて、先輩方の隣に立った。
「今回は見学だけど、京都高専の1年よ」
「禪院甚爾。等級は四級だ」
「禪院直哉と申します。同じく等級は四級です」
「禪院? 双子なの? 真希さんと同じだ!」と屈託ない笑顔で虎杖が言う。
シーンと静まり返る。
「あ、あれ?」
「馬鹿……」伏黒が小さく窘めた。
「ええ……改めて、虎杖悠二。同じ1年! よろしく!」
と握手を求められ、顔を見合わせる甚爾と直哉。
「俺ら見学なんやけど」
「まあ四級だもんな」雑魚じゃん、と釘崎が言う。伏黒に窘められ、下手くそな口笛を吹いた。
(真希ちゃんの教育の賜物、やな)ふうと小さくため息をつくと、虎杖の手を取った。
「どうぞよろしゅうお願いします」
(禪院家傍系の方が云々の話)
甚爾と直哉があまりにも他人事なので、真希が水を向ける。
「いいのかよ、あんなこと言わせておいて」
無視、というか自分たちのことだと思っていない2人。
「お前らだよ。当主の息子だろ。甚爾、直哉」
はた、と顔を上げる2人。
「えっと、すみまへん、何の話でっしゃろ?」
チッと舌打ちをする真希。
「禪院家は傍系の方が出来が良いってよ、てめえらの先輩が」
目を瞬かせ、2人で顔を見合わせ、伏黒を見た。甚爾が口を開く。
「事実だろ」
「何で他人事なんだよ」
「他人事っちゅうか」
伏黒を見て直哉が言う。
「十種影法術、やんね?」
「あ? ああ、まあ」
「等級は、二級やったっけ」
「ああ」
「……事実やん?」
大爆笑する五条。ふーん、と思って双子を見ている。
五条悟に会う、ということは、甚爾がフィジカルギフテットということも、直哉の術式が投射呪法であるということも(恐らく呪力をあえて抑えていることも)、看破されるということを意味する。
2人は恵を見て確認することと天秤にかけたが、禪院家や京都高専に所属している以上、恐らくどこかで五条悟に会いバレることになるだろうという結論に至った。
五条悟がそれでどう出るかによるが、腹を括ることにする。
見学ということで、他教師と同様にモニタールームにいる2人。
今のところ五条は特に何も言ってこない。雑魚過ぎて眼中にない、という感じか?
東京VS京都の戦いも正直2人にとっては退屈だった。というか、呪霊討伐数で戦っているんじゃなかったか? なんでPVPばっかりしてるんだ。ってか虎杖狙われてね?
とか思っているうちに、嫌な気配がした。バッとモニターに目線を上げると、帳が降りようとしている。
教師陣が声を上げる前に、モニターを見た2人に、五条がにやりとしたのは、2人は気付かなかった。
「2人は補助監督の保護をお願い」と五条。歌姫は渋るが、補助監督よりは強いでしょ、と譲らない。押し問答している暇はない、と送り出される2人。
はあ、とため息をついて、仕方がないと走り出す2人。補助監督は保護。怪我はしているため、家入のところに運ぼうとしたとき、呪霊の気配を感じ取った。
討伐用じゃない、特級クラスだ。
さすがにちんたら歩いている場合じゃない、投射呪法を用いる直哉。甚爾も補助監督を背負って並走し、離脱する。
家入、伊地知のところに補助監督を運ぶ。
特級は五条がいるから大丈夫だろう、と思ったら、帳については五条は入れないようになっているらしい。……はあ?
「おい、知ってんのかこれ」
「知らへん。何これ」
これが前世でも起きたことなのか、イレギュラーのことなのか、直哉には判断が付かなかった。
ここで生きていたはずの学生たちが死んだら? 虎杖が怪我をして宿儺が暴走したら? 今後の戦線に影響がでて世界が滅びたら……?
「……一応、見に行こか」
「おう、いってらー」
「甚爾君もやで。何サボろうとしてんねん」
「呪具ねえし」
またそれか、と思う直哉。
「……忌庫からくすねたるから、先行っといて」
「ははっ、東京の奴らの前で犯罪示唆か?」
家入、伊地知を振り向く直哉。
「許可できません」
「ちゃんと返しますさかいに、ごめんちゃい」投射呪法でパッと離脱する直哉。
「えっ?」
直哉に目線を移している間に、甚爾も消えていた。
家入と伊地知は目を瞬かせる。
「あの子たちは……?」
「たしか、京都高専の1年生だったかと」
忌庫にたどり着く直哉。
(は、こっちはこっちで厄介やな……)
特級クラスの呪霊が、何やら手に持って、忌庫番をなぶっている。
恐らく、もう助からないだろう。
「そこでこそこそしてんの誰?」
気付かれたか、と思う直哉。言語を介しコミュニケーションが取れる。特級の上澄みクラスだ。
「ちょお待ち、俺は君とやり合うつもりはないで?」
「ふーん? あいつらの仲間じゃないの? 五条とか」
「別に? 君の仲間でも無いけど」
「何? 見逃してくれんの?」
と掲げたのは、呪物だった。受胎九相図と宿儺の指、か?
渋谷の惨劇が脳裏をよぎった。が、成長しきっていないこの身体で、相対するには分が悪すぎる、と思った。
「俺のことも見逃してくれるんやったらな」そこに用があんねん、俺も。と直哉。
「へえ、何の呪物?」
「呪物やない、呪具が欲しいねん」
うーん、と考える真人。にぃっと笑う。
「残念だけど、俺はアイツの仲間なんだ」と言うと、忌庫番だったものが襲い掛かってきた。
「!?」
焦ったものの、投射呪法を用いて難なく倒す。怪物は消えない。舌打ちをする直哉。
「なんや、けったいなことしはるな」
「ははっ! お前、人殺しだよ? 何も思わないの?」
「殺したんはお前や」
相手の手の内を知らずに、投射呪法で動きを作るのは分が悪すぎた。が、やるしかない。真人が迫る、動きを作り叩き込む。真人の手が右目に触れた。右目が弾ける感覚がする。
「……~っ!」
そのまま、掌底を叩きこむ。真人もゲホゲホと咳き込み倒れ伏せた。
その隙に忌庫に忍び込み、適当な呪具を手に取る。多分億はくだらない奴だがなりふり構っていられない。
真人に止めを刺したわけではないことは分かっていたが、追いかけてくる気配はなかった。既に去った後らしい。逃げられたわけだ。
随分時間が掛かってしまった、と舌打ちをして忌庫から甚爾の元へ向かった。
帳の中に入ると、甚爾が顔に傷を付けて立っていた。三輪の刀を持っているがボロボロだ。奪ったらしい。
「甚爾君」
「遅えよ、何ちんたら……あ?」
「話は後。甚爾君もえらい男前やん」
直哉の右目から血が流れていることに訝しげにする甚爾だが、本人から話は後、と言われて呪霊に向き直る。直哉は甚爾に呪具を投げ渡した。
「性能は?」
「知らん」
チッと舌打ちをする甚爾。
「片目、見えなくて大丈夫なのか? 足手まといになるくらいなら下がってろ」
「問題あらへん、なめんといて」
といいつつ、他の呪具を持つ直哉。
2人で速さで翻弄し、呪具を投げ渡し入れ替え、空気を投射呪法で押し出して爆発、その爆発を利用して甚爾が切り込み、と無双するが、いかんせん硬くて消耗戦を強いられる。
「しぶっといなあ!」
と、体制を立て直そうとした瞬間、膨大なエネルギーを感じ、甚爾と直哉はやべ、と思い間一髪で地面に転がった。
ものすごい衝撃と音の後、目を開くと茈の弾道が間一髪のところにひかれている。
「……っぶなあ!? 殺す気か!?」
「避けられなかったらどうする気だったんだよ」
五条のやり口にドン引きする2人。
皆の無事を確認し、皆拠点に集まり、家入の治療を受け。
出血は止まり大事には至らなかったが、直哉の右目の視力と甚爾の口元の傷は、治らなかった。
「右目どうなってる?」
「白く濁ってんな」
「あー、白内障みたな感じなんや。甚爾君も似合っとるよ、それ」
「うるせえ」
本人たちがあまりにもあっけらかんとしているので、何も言えない周囲の人たち。
「五条、どう責任取るつもり?」彼らを戦線に出したのは、五条だと責める歌姫。
「ごめんごめん。ここまでやるとは思ってなくってさ。でも、彼らが出たから、被害はこれで済んだ、とも言える」
歌姫は黙った。忌庫番2名。死者被害はそれだけだった。
五条は2人の前に立った。目隠しを上げ、片目だけ六眼を覗かせる。
「面白いね、君たち。片や呪力0のフィジカルギフテット。片や禪院家相伝の投射呪法。……本当に四級?」
えっ、と周囲の声が漏れた。特に、真希・真依は目を丸くしている。
「何が言いたいんです?」
直哉が睨む。
「ふーん。普段はガチガチに制御してるんだね。術式も呪力も。……なあ、何で隠してんの? お前の術式と実力なら、禪院家次期当主でしょ」
と五条の手が直哉の顔に伸びる。
甚爾が反射的にそれを弾いた。
その瞬間、直哉はポケットからナイフを取り出し、自身の左目に突き刺そうとした。
甚爾が止めに入り、済んでのところで抑え込まれる。
「……何してんだてめえ」
「離してや、甚爾君」
「お前が先に離せ」
「嫌や。俺は、次期当主になる気はない。俺が次期当主候補になったら、甚爾君はあの家でどうなるん?」
「それとこれとどう繋がってんだよ。ならなきゃいいだろ。俺を守るつもりとか言うなら、頼んだ覚えはねえぞ」
「甚爾君のためだけやない。”ホンモン”の相伝がいる時代に、”ニセモン”の相伝がどういう扱いを受けるか……俺が一番よう分かっとる」
伏黒が息を呑む音がした。
「で? 目を潰すってか? 力加減も分かってねえガキがよ。あの勢いだったら脳みそまでぶち抜いてんだろ。俺はてめえの真似するつもりねえぞ」
甚爾が渋谷で伏黒の目の前で頭をぶちぬいたことを揶揄して言う。
「はあ? できるわけないやん甚爾君に。呪力これっぽっちも無いんやから」
死後呪いに転ずることなんかないだろう、という意味で言う直哉。
シーンとなり一瞬止まる。瞬間、甚爾と直哉の攻防が逆転した。
甚爾がぐっと押し込むように力をかける。直哉がぐっと押しとどめる。
「ちょお待って! 力強っ!? 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
「ああ、お望み通り殺してやるよ、次期当主候補様」
「待ってって、殺すんやったら呪力込めてや!?」
「そりゃできねえ相談だなあ。俺にはこれっぽっちも呪力が無いからな」
「せめて! 呪具使うて!?」
「ええ? なんでそんなことしなくちゃいけねえのか分かんねえなあ、お兄ちゃんに教えてくれよ、優秀な弟がよ」
「教えたるから止まれやこんドアホが!」
はっ、となった面々が止めようと動き出す。
「ストップストップ!」虎杖が甚爾を剥がした。伏黒が直哉からナイフを取り上げる。
怒涛の情報に、なぜか始まった兄弟げんかに、皆ぽかんとしている。
「えっと、悟、どういう状況?」
五条に声をかけたのは、夏油だった。その姿を見てスペキャ顔になる甚爾と直哉。
え、あれ? 最悪の呪詛師は……?
「あ、悪い。祓っちゃった」
どうやら五条が呼んだらしい。特級呪霊を呪霊操術の対象にさせようとしていたようだ。
「おや、残念」
五条が夏油に被害状況や、2人のことなどを話す。
甚爾と直哉は身をかがめ、ひそひそと話し合った。
(もしかして、俺がいなかったからか?)
(甚爾君が?)
(例の件。アイツが離反したのは、あいつらが学生時代の話だ)
(なるほど?)
ということは、(人類の)味方ということ? 今後どうなるか、より一層分からなくなったのでは?
と考えている間に、五条が夏油への説明の過程で歩み寄ってきた。
恐らく2人について話していて、こいつら、と指し示すためだったのだと思う。
五条が甚爾の頭を撫でようと手を伸ばした瞬間、甚爾の身体は防御姿勢を取った。
(!?!?)
え、と直哉が思っていると、伏せている甚爾の顔も困惑している。
五条の顔を仰ぎ見ようと思って、直哉が顔を上げると、たまたま、五条の肩越しに、訝しそうな顔で様子を伺う連中の中で、真希と目が合ってしまった。
直哉の意志とは関係なく、身体がびくりと跳ね、ガタガタと震え出した。
(は?)
甚爾にすがるような、甚爾を庇うような曖昧な姿勢で、しがみつくことしかできない。
甚爾も目線を上げ、直哉の顔を見る。目線が合う。お互いに混乱している顔。
もしかしてこれは、前世の自分を殺した相手を、今世の(少なくとも10歳くらいまでは)何も力を持たない弱っちいガキの身体が、怖がり恐怖を覚えて動けなくなっているということ?
いや、だせえーーーー!!!! 俺らの身体、と自分たちのあずかり知らぬ恐怖で震え蹲っている身体を他人事のようにこきおろす2人。
夏油は、紆余曲折あり離反はせず、フリーの呪術師兼児童養護施設の運営者となっていた。児童養護施設は、非呪術師家系で呪術師として生まれ、一般社会になじめなかった子たちのよりどころとしている。
その過程で、この反応はとても見覚えがあった。頭を撫でようとした瞬間の防御姿勢などはまさに、虐待を受けている子、そのものだ。
「悟、下がって」
「え」
「いいから」
君が悪くないのも分かっている、と困惑する五条の手に肩を置き、下がらせる。
夏油は自身が歩み寄ろうとし、止まった。
硝子と目が合う。うん、と硝子が頷いた。
硝子が2人の前にしゃがみ込む。
「大丈夫、大丈夫」深呼吸、できる? と硝子。
歌姫がはっとして駆け寄る。2人の背中をさする。
皆に見えているのは震えている身体をどうにか押しとどめようとして、必死に深呼吸をする双子の15歳の少年2人。何かから逃れるように頭を振る。
2人はいやダサすぎる、触んなカス、いっそ殺してくれとしか思っていない。
どうにか止まった後、過呼吸になっていたのかぼーっとする頭、しびれる手のひらで周囲を見渡すと、心配そうなまなざしが何対も。
中身の2人からすれば、大分年下の少年少女たちだし、なんなら甚爾にとっては前世の息子の伏黒もいるし、痛ましい目で見てるし、空を仰いだ。(殺してくれ……)現実逃避だ。
特に真依は、顔面蒼白になっていた。なんで? と思うが、そういえば煽られて頬張られたな、と思い出す直哉。罪悪感、というかこんなだとは知らなかった、みたいな気持ちか。
五条が少し離れた箇所に座り込み、こちらを見た。律儀にびくりと震える身体に、甚爾は舌打ちをする。直哉が半歩前に出た。
「あー、ごめん。脅かすつもりはなかったんだよ。傑に紹介しようと思って」と頭を掻きながら言う五条。
夏油も五条の隣にしゃがみ込んだ。
「さっき、悟から聞いたよ。禪院甚爾君に、直哉君だね」
甚爾と直哉はこくん、と頷いた。
五条は、さっきの特級呪霊に対する大立ち回りとはえらい違いだな、と2人を観察して思った。
恐らくほっておいても2人で祓えただろう、とすら思った。
だが、2人ともけがをしていることと、直哉は恐らく忌庫でなんかあったんだろう(実際報告を受けてその勘は正しかった)ことから、さっと祓っただけで。
それに、茈を予見して避けた。無下限を用いて彼らは保護しようと思ってはいたものの、それも必要なかったわけだ。
彼らにとって、特級呪霊よりも、茈よりも、大人の男性に頭を撫でられる(というか多分殴られると思ったんだろう)方が、恐怖の対象であるのだと。
その状況に、彼らの生家に思いを寄せ、舌打ちしそうになって慌ててとどめた。多分、目の前の2人を威圧してしまう。
「ねえ、甚爾。直哉。貴方たち、最近家帰っていたわよね? 何かあったの?」
歌姫に聞かれて、はた、と思い返す2人。確かに、1週間ほど前、急に呼ばれて帰省した。結局は用事があるなどとうそぶいて、いたぶりたいだけの内容だったが。
「別に何も……いつも通りです」直哉が答える。甚爾も頷いた。
「いつも通り、お前らの兄とか叔父とか、躯倶留隊とか灯とかに、殴られたり蹴られたりしたのか?」
パンダと棘が真希の言うことを止めようとするが、いつもの禪院家への唾棄すべき気持ちと言うよりは、年下の従兄弟を慮っているような目線だったため、押し黙る。
今度は律儀に直哉の身体がびくりと反応し、下を向いた。
甚爾が直哉の肩にそっと手を置く。
「ああ、まあ……?」殴る蹴る? そんな生易しいもんじゃねえが、と思いながら曖昧に返事する甚爾。
実際、得物あり、術式行使あり、懲罰房で夜を明かし、食事には毒を盛られ、の様子で、本気で殺しにかかっているとしか思えない様相だった。
前世のアドバンテージがあるからいいものの、前世の甚爾の扱いよりひどいのでは、と思うことすらあった。
真希が話す内容と、真希・真依から事前に聞いている家の内情、甚爾の何言ってんだこいつ、みたいな表情から、恐らくもっと酷いことが行われているんだろう、と思う大人たちの面々。
「ちょっとごめんよ」
と言い、硝子は直哉の腕を取り、捲った。
バッと顔を上げたときにはもう遅く、切傷やあざがあらわになる。
歌姫も見せなさい、と有無を言わさず甚爾の腕を捲った。はあ、めんどくせ、とばかりに抵抗しない甚爾。
「歌姫先輩、こいつらの帰省、何日前でしたっけ?」
「えっと、1週間前くらい?」
はあ、と硝子は息を吐く。
「じゃあ反転でも治らないか。おいで、医務室。消毒ぐらいしてあげるから」
「いらへん」
「誰かこいつら運べるやついる?」
硝子は立ち上がり、2人を指さす。虎杖や東堂、パンダなど力がありそうな面々と目を合わせる。はい、と虎杖が元気よく手を上げたところで、甚爾は立ち上がった。
「担がれたくなかったらてめえで歩けよ」
直哉も渋々立ち上がる。
硝子についていく2人を真依が呼び止めた。
「あ、の」
「……なんでしょう、禪院先輩」
真依はぐっと押し黙ったので、2人は何も言わずに歩いて行った。
(俺、いらなくないか)
伏黒は所在なく立っていた。甚爾と直哉の案件の付き添いである。
特級呪霊相手に大立ち回りしている姿を見ていた伏黒は、2人が自分くらい、下手したら自分よりもはるかに強いことが分かっていた。
ただし、等級上は四級と二級。自分が一応保護者側である。
三級程度の呪霊がちらほら。2人ともたわいもない会話をしながら、適当にバサバサ呪具を振り、蹴散らしている。
甚爾は元々術式を持たないが、恐らく直哉も術式を使っていない。
帳も伏黒が張る予定だったが、甚爾がさっさと行ってしまい、おい、と注意しようとしている間に直哉が張ってしまった。あっけに取られていると「どしたん、恵君?」ときょとんとされたので、もういいか、と先を急ぐことにした。
さっさと祓い終わって、帳が上がった瞬間。
伏黒に向かって何かが飛び込んできた。人間だ。呪詛師か?
(しくった)
気を抜いていた伏黒は後れを取った。印を結ぶが先か、呪詛師が迫るが先か。
(速い)
と思った瞬間、ぐん、と身体を後ろに引かれる。大きな音がして、呪詛師が吹っ飛んだ。
伏黒の背中の服を引っ張り後ろに下げたの甚爾で、呪詛師をぶん殴ったのは直哉らしい。
背中を掴んだまま、宙ぶらりんにする甚爾を見上げた。
「よお、呪詛師」
甚爾はニヤニヤと直哉に話しかける。
「殺してへんよ、まだ」
嫌そうに睨む直哉。呪詛師を足で踏んづけている。
「まだ、じゃない。殺したらだめだろ」
はっとし、注意する伏黒。ああ? と甚爾が言う声がして、パッと手を離された。
落ちそうにたたらを踏むが、無事着地する。
「言うことがあんじゃねえの?」
「……助かった」
苦虫を潰すような顔で伏黒が言うと、甚爾はケラケラとおかしそうに笑った。
直哉はぐっと足に力を込めて呪詛師を踏みつける。ぐっとカエルを潰したような声がする。
「コイツ、恵君狙ったんかな。……禪院家の息かかっとる? もしかして」やっぱ殺したろかな、と直哉。
「ダメだ」
伏黒が止める。
「冗談やって冗談」降参とばかりに両手を挙げるが、足はぐりぐりと力を入れたままだ。
(なんで俺なんだ)
監督役が、である。
丁度いい案件(等級換算でだが)東京管轄側にあり、五条と真希はダメ、虎杖にも直哉が少しびくつく、狗巻はコミュニケーションの問題で……と白羽の矢が立ったのが伏黒だったのである。
色々因縁が(伏黒のあずかり知らぬところで)あるので懸念していたが、なぜか大丈夫らしい。なんで虎杖はダメなんだ、と思うが。
呪詛師をホームベースに石と呪具で野球をし出した双子を横目に、伊地知に電話をかける伏黒。
「……呪詛師が誕生する前に、早く来てくれませんか」
(はあ、すげえな)
虎杖は甚爾と直哉の組手を物陰から見ていた。
任務で2人が東京を訪れていたことは知っていた。空き時間、手持無沙汰になったらしい2人が組手をしているところに遭遇したのである。
直哉が軽めではあるが術式を行使しているのもあり、見えないくらい速い。
同じく天与呪縛で体術には心得のある真希が、「悔しいけどアイツの方が一枚上手だ」と言う通り、甚爾は直哉のスピードをものともしない。
関心してみていると、わずかに直哉がちらりとこちらを見た気がした。
(ん?)
気のせいか、と思った瞬間、ものすごいスピードで石が飛んできて、すんでのとこで避けた。
「おわっ!?」
「なんだ、虎杖か」
甚爾が石をポンポンと上に投げている。甚爾が放った石らしかった。
ごめん、盗み見するつもりはなかったんだけど、と虎杖が出てくる。
直哉の表情は硬い。虎杖は眉を下げた。
虎杖に対する態度は真希に対するものよりはまだましなものの、直哉の何らかのトラウマを刺激するようで、びくりと肩を震わせられることがあった。
今ではそこまでではなくなったものの、いまだに身体がこわばるらしい。
じゃ、俺らはこれで、と去っていこうとする双子を押し止めた。
「あのさ」
「あ、虎杖!」
釘崎がかけてくる。伏黒もその後ろを歩いているのが見えた。1年生大集合である。
「あれ? 何でアンタらがいんの?」
「任務の合間で手持無沙汰になってん。ちょお暇つぶしにな」と軽くジャブを打つ直哉。
「そうだ。俺ともやってよ」と虎杖。
直哉と甚爾は目を見合わせる。
「え? じゃあ私虎杖に掛けるわ。直哉相手なら有利でしょ」
直哉が虎杖相手にひるむことを前提とした物言いだ。最初こそ虎杖と伏黒で止めたものの、甚爾と直哉が気にしていないどころか、ほっとするような様子さえ見せたため、そのままにしてある。
「や、俺やる言うてへんよ」
「そもそもかけるな」と伏黒。
「俺は直哉にかける」と甚爾。
「ええ……ほなら俺負けやん」
「どういう意味だよ」
「甚爾君掛けの才能ないやんけ」
「んなことねえよ」
「ないやん! こないだだってお馬さんも船もぜーんぶ負けとったし」
「ありゃたまたまだ」
「えっ、競馬と競艇やるの? パチは?」
「やったことはあるけど、馬とか船とか自転車の方が多いな」
「おい、お前ら未成年だろ」伏黒が窘める。
結局掛けはコンビニの肉まんになり、勝負の結果、直哉が勝った。
最終的には京都VS東京になり、京都の勝利。
「負けたあ!」
「虎杖君は、素直すぎるわ。ブラフにことごとく引っ掛かって」
息すら切れず涼し気な顔で立っている2人。
甚爾はくっと親指で後ろを指した。早く買ってこい、の意だ。
「ぎぃ、ムカつく!!!!!」釘崎が歯噛みする。
「早くしろよ。5,4,3,2……」
「ちょっと、その速さで買って来れんのお前らぐらいだろ!」
と釘崎がうなったところ、音も立てずに甚爾と直哉の肩を組み、あんまんを咥えた五条が現れた。
「1年版交流戦じゃん。やーい、東京高専負けてやんのー」
甚爾と直哉がびくりと固まった。
虎杖が甚爾を、伏黒が直哉を慌てて引きはがす。
「ちょっと先生! いきなり現れんでよ!」
「現れてもいいですけど、2人の肩を組む必要はないんじゃないですか」
「だって、そうでもしないと逃げるじゃん」
五条が現れた瞬間、直哉が甚爾をひっつかみ、投射呪法を用いて逃げたことは記憶に新しい。
五条が2人は僕の次に速い、というので、誰も捕まえられないだろう。
「ってかカウントダウンしてたから。はい」肉まんの入った袋を渡されて釘崎が受け取った。東京高専分も含めて全員分ある。
「へえ、気が利くじゃないたまには」野郎ども宴じゃい! と肉まんを掲げる釘崎。
誰も五条に礼を言わずに受け取る。
「ちょっと、買ってきたの僕なんだけど」
「あらあ、遠路はるばるおおきに。お疲れでしょうから、はよお休みになってください」
どうぞ、と校舎の方を示す直哉。
「感謝されてないことくらい分かるよ!?」と五条。
「ま、2人はいいや。逆に僕からのお礼。こないだは恵を助けてくれてありがとね」と五条。
うげ、と言う顔をする伏黒。?を浮かべる甚爾と直哉。
は、なんかあったの聞いてないんだけど、と伏黒に詰め寄る虎杖と釘崎。
伏黒が嫌そうな顔で言う。
「この間、この2人の任務に着いて行ったとき、呪詛師に襲われて」
「はあ?」と釘崎
「大丈夫だったの?」と虎杖
「伊地知から聞いてるよ。恵が襲撃されたところを倒してくれたんでしょ?」
「ああ、あの時の」とやっと思い出したように言う直哉。
「別に大したことしてねえよ」と言いながら肉まんをほおばる甚爾。
「油断してたとはいえ、恵が遅れを取るくらいの呪詛師だ。二級か、準一級か、それくらいかな?」
油断と言う言葉が聞こえて、ぶすっとする伏黒。
「え、アンタら何級だっけ」
「四」と甚爾と直哉が声をそろえる。
「……四?」
「正直僕は、お前ら個々人で1級相当だと思ってるんだけど」どう? 昇級試験、受けてみる気ないの? と五条。
「お断りします。虎杖君と禪院先輩方と加茂先輩と、にいちいちビビってまう身体抱えて何が1級やの。笑うてまうわ」
「俺は呪力も術式もねえ。通らねえだろ」
興味無さそうに肉まんをほおばる2人。甚爾の分はすでにない。直哉はちまちまと食べている。
すると、ピクリと2人が反応して、同じ方向を見る。東京高専1年3人が振り返ると、七海がいた。
「あ、ナナミン!」おーい、と虎杖が手を振る。
七海がやってきて、3人が挨拶をする。五条はニマニマと笑っている。
「何ですか、気持ち悪い」
「いや、あの速度で七海に気づいてて、四級はちょっと笑っちゃうなと思って」と双子を見る。
知らん顔している甚爾と直哉。七海は「ああ」と言った。
「この間はありがとうございました。しかし、あのような危ない真似は二度としてはいけませんよ」
げ、と言う顔する直哉と甚爾。
「……なんのことでっしゃろ。七海一級術師殿に感謝されるようなこと、した覚えないですよ」
「うるせえな、まだ言うのかよ」
済んだはずのことをここで言い出したのは、きっとわざとだ、と思う2人。
「なんかあったの? ナナミン」
「この間、京都高専の案件に駆り出されたときのことなのですが」
甚爾がチッと舌打ちをしたが、構わず続ける七海。
「どこからともなく彼が現れまして」と甚爾を手のひらで指す七海。
「えっ?」
「帳の中に、ってこと?」
「確かに呪力が0なら帳の影響を受けない、か?」
「その案件、何級?」
「1級相当が複数、です。呪霊を祓い、帳が上がったと思ったらまだ帳の中で。彼が二重に帳を降ろし、外の呪霊を祓ってくれていました」と直哉を指した。
「は?」
「やって、俺は帳の中に入られへんし」と直哉。
「外の呪霊は何級くらいだったの?」
「さあ、三とか四とかやったんやないですか?」
「二とか一とかの間違いでしょう」と七海が訂正する。
「……やってることは褒められたことじゃないけど、お前ら本当に昇級する気ないの?」と五条。
「ない」「あらしまへん」
「何でそんな頑ななんだよ」と五条。
「意味ない、級なんか」吐き捨てるように言う直哉。
「ま、そっか。お前らにとってはまず、そうね」と五条が手を伸ばす。と、2人して頭をさっと庇った。五条が手を止め、眉を八の字にして笑う。
直哉が肉まんを食べ終わったのを見計らって、甚爾が立ち上がる。
「時間?」
「猪野さんが呼んではりますので、これで失礼します」と直哉。
呼んでる? と思って振り返ると、ちょうど校舎の影から猪野が顔を出したところだった。
「七海さん! 行ってきます!」
という猪野の大声をバックに去っていった2人。
「悠二、直哉と手合わせできたんだね」1回くらい勝てた? と五条
「負けた! 完敗!」と虎杖は嬉しそうに言う。
「最近、虎杖に対する警戒はかなり溶けているみたいですよ」そもそも何で虎杖に警戒しているのか、分かりませんが、と伏黒
「あとは真希と、僕かあ」真希は分からなくも無いけどね、と五条。
実際真希に躯倶留隊での稽古時、切った貼ったをしたかも、という証言を得たので。
「本当は東京高専(こっち)に来させたいんだけどね。あっちだと家からの呼び出しが多々あるみたいで」傷をこさえて帰ってくるって歌姫が、と五条
「あの怯えようだと難しいかもしれませんね」と七海
「だよねえ」と五条
実際さっきも触れた瞬間に特に甚爾は身体が動かなくなったし、一切目が合わなかった。
真希と合わせた時も、今度は直哉が同じ様な状態になった。
「まあゆっくりやるしかないかあ。心の傷はそう簡単に癒えないしね」と五条。
(なんでこうなった?)
東京側の任務をこなし、補助監督に甚爾が呼ばれ。
喉乾いたし自販機でも、と断って1人で向かい。
真希に壁ドンされ、ひえっとなって。「おい、面かせよ」
(いや、ヤンキーやないかい)
固まる身体を真希に引っ張られてきた場所は、東京高専2年の教室だった。
狗巻、パンダ、そして。
(乙骨君……!?)
直哉の身体は更に固まることになる。というか、こんだけ呪力駄々洩れでなんで気付かんかった? と真希の存在に動揺している身体を内心舌打ちする。
狗巻とパンダは直哉の姿を見てびっくりする。
「え、真希大丈夫なのかそいつ」とパンダ。
「知るか」座れ、と命令する真希。どんな領分でそんな口聞いとんのや、とは思うが身体はうまく動かない。
パンダが気遣うように、肩に手を置いた。ストンと膝が折れ、椅子に座る形となる。
「えっと、この子は?」
「京都高専の1年。私の従兄弟で禪院直哉」
「僕は乙骨憂太。真希さんと同じ2年生だよ。よろしくね」と乙骨が手を差し伸べるが、直哉はびくりと震え、手を出したり喋ったりしなかった。怯えている?
え、と乙骨は真希を見た。何も言わないので狗巻とパンダを見る。
「おかか」
「直哉と、あと双子の兄の甚爾って奴がいるんだけど、まあ禪院ってこともあって色々あったらしくて。特定の人物との接触があんましなんだよな」こいつは真希とか、とパンダが言う。
「えっ、だ、大丈夫?」とのぞき込むと、びくりとまた震えた。
「あ、もしかして憂太もダメなのか?」とパンダ。
「ええっ」怖がらせているのかも、と思って距離を取る乙骨。
「いい加減にしろよ」真希がイラついたように言う。
「おかか!」
「お前は私に何を見てるんだよ。……『禪院』じゃなくて、『私』を見ろ」真希が無理やりのぞき込んで、直哉と目を合わせる。できるだけ優しく温かい声で、「大丈夫」と言った。
(え、ああなるほど、そういう解釈なんや……、まあそやろな)と享年27歳の直哉は思う。
が、身体はそうは思ってくれず、射貫く瞳から逃れるようにゆらゆらと瞳が揺れると、はくっと何も言えぬ口が開いた。ヒュッと喉が鳴る。
まずい、と乙骨が思った瞬間、扉がバンッと音を立てて開いた。甚爾だ。
つかつかと歩み寄って、過呼吸を起こしかけている直哉を見て、殴った。直哉を。
「~~っ……なにすんねん!」
「よお起きたか」眠てえ顔してたからよ、と甚爾。
「はあ? 寝てへんわ、目ん玉ついてへんのかボケ!」
「お前よりは付いてるよ」
「普通俺やなくない!? 殴んの」
「何を言いますやら、先輩方を殴れるわけないだろ」
「そんなタマやないやろ!」
「うるせえな、お前対象が多すぎんだよ、こいつもか?」と乙骨を指す。
「しゃあないやん! 俺のせいやない!」
「お前のせいだろ、後先考えず突っ込んだ結果じゃねえか」
「はあああ??? 五条悟にビビってるやつに言われたないんやけど!?」
「五条悟には全人類ビビってるだろ」
「ええ!? 甚爾君ともあろうお方が、人類最強を傘に着はるんやあ、ダッサあ」
「ああ? いちいちいちいちビビってるテメエには負けるよ」
「なら五条悟にビビったら張っ倒してあげまひょか? 同じように、なあ?」
「やってみろよ、できんならな」
「ちょっと待って!? 何で喧嘩!?」乙骨が慌てて止める。ああ? と2人から凄まれて、ひっとなった。
「憂太を威嚇するな」真希が諫める。
「あー、憂太。コイツがさっき言った甚爾だ」
「え、あ、えと。乙骨憂太です。真希さんと同じ2年の」
「あ?」
「ヒッ!?」
2人とも、後輩なのに怖い……と思う乙骨。
扉の向こうから五条がのぞき込む。
「ねえ、真希何やってんの。直哉いるでしょ……あ」
甚爾が五条を見て、びくりと身体を固まらせた。瞬間、直哉がその頬をグーで殴った。
「えっ」
「……テメエ」
「なんですの? お兄様が言うたんやで、やってみろって。ははっ、起きたあ?」
「ああ、いい目覚めだぜ」
「良かったあ。お兄様のお役に立てたんやね、僕」
「お前のその行動力だけは一級品だな」
「何? そんなに褒めても何もでえへんで」
「殺す」
「ストップ! 何で喧嘩になってんの!?」お前らの喧嘩のきっかけが分かんないよ! と五条が止める。
「私と憂太を見て固まった直哉を甚爾が殴ったから、悟を見て固まった甚爾を直哉が殴った」と端的に真希が説明する
「分かりやすいけどわかんない!」と五条。
パンダと狗巻が間に入って、どうどう、としている。
「……ねえ、お前らのこと歌姫から大人しい優等生って聞いてんだけど」と五条。
「何を言いはりますの、五条先生。どっからどう見てもそうでっしゃろ?」
「見りゃわかんだろ」
「どこが!?」僕の前だといっつも喧嘩してんだけど!? と五条。
あ、と思い出したように言う直哉。
「京都高専1年、禪院直哉言います。どうぞよろしゅう、乙骨先輩」
「あ? ああ、京都高専1年、禪院甚爾」
「えっあ、今!? よろしくね」
「無茶苦茶だなお前ら」と真希が呆れたように言う。
「無茶苦茶は真希だよ。直哉をここに連れてきたの、真希でしょ? どうするつもりだったの」五条が窘める。真希は目を逸らした。
「ああ、ええですよ。別に。禪院先輩が悪いわけやあらへんし」
「殴りゃいいからな」
「ねえ、その解決法何!? 他に無いの!?」と五条。
でも実際、通常通り会話できているのも事実で。
「真希」
「ん?」
「禪院じゃなくて、真希って呼べよ」お前らも禪院だろ、と真希
「ええ……」嫌がる直哉。
「直哉、真依のことは何て呼んでんだよ」
「禪院先輩」
「呼び分け出来てねえじゃねえか。甚爾は?」
「呼んだことねえ」
「……」こいつ、と思う真希
「家ではどうだったんだ? 従兄弟なんだろ」とパンダ。
「家で……」と思案する直哉。「そもそも、俺ら会わせて貰えんかったんちゃうかな」
「こんぶ!?」
「あー……多分?」
「いや、一応私は躯倶留隊の訓練で会ってるよ」
「ああ、あの中におったんやね」
「ありゃ訓練じゃねえしな、いちいち覚えてねえよ」
「……悪かった」
「何?」
「お前たちが一方的に痛めつけられてたのは知ってた。止められなかった」
「あー、ええよええよ。っちゅうか、真希……さんもやない?」
「あ、俺たちが懲罰房行きになった後の標的か、真希が」
「……は?」真希が低い声を出す。
「え、ちゃうん?」ちょっとおびえたように言う直哉。
「いや、違う悪い。私のことじゃなくて。……お前ら、懲罰房に連れてかれてたのか? 毎回?」
「ああ」それが何か、とでもいうように甚爾は言う。
直哉の顔を見ると、きょとんとされた。
「は」怒りの表情を隠せない真希。
「真希さん?」乙骨が伺う。
「直哉、お前術式が分かったのいつだ?」
「え、10歳とか、やったかなあ」
「甚爾、自分の呪具はあったのか?」
「あるわけねえだろ、猿にやる呪具なんて」
「……殺す気だったのか」
「真希」五条が真希の名前を優しく呼ぶ。説明して、と。
「……懲罰房は、2級程度の呪霊を飼ってる、名前の通り懲罰用の部屋だ」
「えっ」と乙骨が声を上げた。
「私の記憶だと、10歳よりもっと前から、こいつら、甚爾と直哉は訓練中にどっかに連れていかれてた。一応当主の息子だし、別で稽古とかあるのかと思ってたけど」違うんだな、と真希。
「え、あらへんよ稽古なんて」
「そもそも当主にだってまともに会わせちゃもらえねえよ」
それを普通のことのように言う2人に、五条は天井を見上げた。
「甚爾も直哉も、やたら戦闘スキルというか、経験値高そうな動きするなあとは思ったけどそういう……お前らさあ、東京高専(うち)来ない?」
「……は?」直哉と甚爾がはもる。
「京都だと家が近すぎるだろ、いちいち呼び出されて、懲罰房ぶち込まれて、って今でもやってるんだろ?」
「まあ、せやけど」
「懲罰房は空だぜ」
「それは結果論でしょうが」と五条は窘める。
「東京高専(ここ)にいたって同じですよ? 呼び出されたら帰る。それだけやさかい」
「帰らせねえよ」と五条
すっごい嫌そうな顔をする直哉と甚爾。五条の保護下、という意味だ、これは。と。
「え、何その顔」
「気色悪……」と甚爾
「気色悪い!?」
「五条家のご当主様は、禪院家と全面戦争しはるつもりですか? 十種影法術と投射呪法と天与呪縛を飼うて」
「飼うっていうか、真希と同じだよ。高専に通ってもらうだけ」
「なら真依と同じで京都通ってればいいじゃねえか」
「直哉は術式隠してるし、甚爾はその強さを評価されないでしょ、あの家じゃ。なら大丈夫でしょ」
うーん、と直哉は唸った。確かに評価はされない。が、強さは理解しているのだ、多分。五条家の配下になるとなったら、暗殺でもなんでも企てるだろう。
直哉の投射呪法だって、任務で使用しないわけにもいかないのだから、時間の問題だ。等級は四で据え置いているものの。結論。
「死にたない、かなあ」
「テメエは大丈夫だろ」術式明かせば、と甚爾。
「いや、うーん、多分……ダメちゃうかな」と直哉。
「あ?」
「俺相伝やで、言うて扱いが変わるとは思わん。呪力0の猿の双子の弟、多分これは変わらへんやろな。一卵性か二卵性かなんてどうでもええねん、あの家では。後は、高専に入ったことで、恵君や真希さんや真依さんと交友を深めた、と判断された場合、”人質”は増える」俺が、どれだけ切り捨てられるか、次第やけど、と直哉。
「俺は切り捨てればいいだろ」
「甚爾君を切り捨てんのはいっちゃんない選択肢や。で、当主教育を受け、次期当主候補となったとして、俺が当主になるんは歓迎されない。誰にも。人望も無い。腹心もおらん。これから作る言うたって限度がある。俺を擁立するくらいやったら、術式的にもなんの当主教育も受け取らん十種のガキの方がええに決まっとる」術式は本家本元の相伝で、傀儡にすんには俺よか扱いやすいやろしな、と直哉。
「普通に恵君を擁立すんのもええけど、いっちゃん簡単なんは俺を殺すこと、やない? ハズレの相伝のガキなんかおらんかった。アイツは術式も持たない弱っちい奴やった、やから死んだ。めでたしめでたし」
「あの家にお前を殺せる奴が何人いるよ?」
「随分買ってくれてるんやね、嬉しいわあ。まあ、当主様とか? あとは、忌庫に何があるか、やけど」
「あー……変わって無けりゃ、まあ、ちょっと厄介なのもあるな」
「やろ?」
まあ、人間いつか死ぬしな、諦めんといてな甚爾君、という会話を繰り広げている双子に、絶句するみんな。
「……本当に腐ってるよあの家は」吐き捨てるように言う真希。
「まあ全部妄想やけどな、俺の」と直哉。
「妄想だ、と一概に言えないところがね」と五条。