ラルバは、決して弾幕ごっこで圧倒的な強さを誇るような妖怪ではありません。あとから分かったことですが、先の四季異変の際に発揮されていた暴走気味の強さは、あくまで異変の首謀者であった幻想郷の賢者のひとり、摩多羅隠岐奈の操る「後戸」の力によるものでした。
 しかし今、こうして自分で身につけたカポエイラの技術をもって三月精と弾幕ダンスバトルを繰り広げていると、ラルバはなにか、今までになかった新しい力を感じていました。それがなんなのかはよくわかりません。しかし、とても強い力です。今までの自分にはなかった、新しい力。
 三月精は巧みにフォーメーションを変えてラルバを攻撃してきます。しかし、ラルバは自然と三人のフォーメーションに混ざるように体が動くのを感じていました。前に出たサニーが連続して放った光弾を、ラルバは側面宙返り「アウー・セン・マウン」でリズミカルにかわし、さらに片手で逆立ちしながらコマのように体を回転させる「ピアウン・ジ・マウン」につなげます。弾幕と弾幕のあいだのわずかな隙間を縫うように、あるいは舞うように突き抜けていくラルバの姿に、サニーは思わず見とれてしまいました。それくらい、ラルバの動きは今まで見たことがないものだったのです。
「ラルバ、なにそれ! めちゃくちゃかっこい……ふぎゃっ!」
 見とれてしまっていたものだから、サニーは顔面に思いっきり手痛い一撃を食らってしまいました。とても強力なコンビネーションを誇る三月精ですが、その一角が崩れてしまえば一気に崩壊するしかありません。
 ふっとんでいったサニーは、逃げようとして案の定コケているルナとちゃっかり自分だけ逃げようとしていたスターを巻き込んでたちまち団子状態に。
「あーあ……でも、これも勝負だから、ってことで、とどめの一撃だぁっ!」
 ラルバはスカートをひるがえし、片手で倒立。そこから腰をひねってムチのような蹴り「シバタ」を繰り出します。団子状態になった三月精はこれを避ける間もなく、三人まとめてピチューン!
「やったぁっ! わたしの勝ちっ!」
 ラルバが元気に拳を突き上げて勝利のポーズをキメると同時に、お星さまとなってふっとんだ三月精たちがぼてぼてぼてっと地面に転がります。
「ずーん……」
 負けたのがよほど悔しかったのか、ルナは地面に両手をついて落ち込んでいます。
「さ、さすが弾幕ダンスのプロ……! 三対一でも勝てないなんて」
「負けちゃったなら仕方がないわね……思う存分ひっくり返すといいわ!」
 スターとルナもコゲコゲ状態で、潔く負けを認めました。
「作戦で忙しいとこ悪いね! すぐ済ませるから」
 そう言ってラルバは、約束通り三人が差し出した風呂敷包みを開けて中身をチェックし始めます。しかし、風呂敷の中にはどこからこれだけのものを集めてきたのか不思議になるくらいの量のさまざまなアイテムが詰め込まれていました。さすがにこれをひとりで全部チェックするのは難しそうです。
「……ごめん、これ、思ったより量が多そう。手伝ってくれる?」
 そうしてラルバたちは、四人がかりで風呂敷の中身をごそごそやり始めました。風呂敷の中からは、樹の実やきのこ、葉っぱやガラクタ、そしてPアイテムもたくさん入っていました。
「うーん……これも、これもわたしのじゃないや……」
 もう十個以上のPアイテムをためつすがめつして念入りにチェックしているラルバですが、まだ自分のPアイテムを見つけることはできていません。
「Pの札ならけっこうたくさん入ってたけど、本当にラルバのは入ってなかったのよね?」
 風呂敷の中身を取り分けながら調べていたスターに、ラルバは力なく答えます。
「一個もなかったなあ……たぶんだれもわかってくれないと思うけど、わたしにはわかるんだ……」
 嘆くラルバの頭の触覚も、こころなしかしおれています。
「……まあ、きっとだれにでもそういうものはあるわよね」
 メガネをかけて両手に抱えたアイテムを調べていたルナに、ラルバは小さく頷きました。
 しばらく風呂敷の中身をチェックしていた四人ですが、残念ながらどうやらこの中にはラルバの探しているPアイテムはないようです。
「いやあ、だいぶ時間とらせちゃったね」
 ほかの三人にも悪いと思い、ラルバはここでの探し物はいったん終わりにすることにしました。とはいえ、次の手がかりに思い当たるところはありません。風呂敷の中身を片付けながらどうしようかと思っていたところ、サニーがいきなり重大なことを言い出したのです。
「ふふん、でもラルバ。わたしは犯人がどこに行ったか知っているわ」
「……へ? 本当に!?」
 思わず目を丸くして聞き返すラルバに、サニーは無駄に得意げな顔で答えます。
「犯人は……えーっと、あっちに行った! 霧の湖の方よ!」
「……本当に?」
 ずいっと顔を近づけてくるラルバにサニーは一瞬怯みますが、それでもなんとか答えました。
「これは本当よ! ね? スター、本当よね?」
「……サニー、残念だけど犯人はそっちじゃなくてあっちの方よ」
「がくっ……信じて大丈夫かなあ?」
 内心、(サニーの言うことだからなあ……)とかなり失礼なことを考えていたラルバですが、そこにルナが割って入ります。
「どっちかといえばスターの言うことが正しいと思うわ。索敵はスターの得意分野だもの」
 ルナの言うことにも一理あるなーと思いつつ。テキトーなことを言っていたサニーをじろりとジト目で睨んでやると、サニーは気まずそうにすすすとスターとルナの後ろに隠れてしまいました。
「ま……まぁほら! とりあえず犯人はあっちよ! これは信じていいわ!」
「はぁ……まあ、とりあえず信じてあげるよ」
「犯人さんのこと見つけられるといいわね、応援してるわ!」
 地上から声援を送るスターたちに手を振りながら、ラルバは今度は霧の湖目指して飛び立つのでした。
(ステージ2終了)
 ラルバが霧の湖に着いたときには、時刻はすでに夕方になっていました。沈みかけている夕陽が、湖面を見事なあかね色に染め上げています。
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