グドハンティンスタルカァ……。
 というわけで今日も今日とて第七藝術劇場にて「タルコフスキー特集2026」を見てきましたよ。
 今回見てきたのは、みんな大好きストルガツキー兄弟原作のSF作品でFPSにもなっている「ストーカー」。この作品もまた、オタクあるあるの「界隈では超有名なので名前と内容は知ってるけど実はちゃんと見たことがない作品」のひとつでした。なので今回よっしゃー!とばかりに見てきました。
 舞台は各地に「ゾーン」と呼ばれる謎の空間が現れた世界。「ゾーン」の調査を試みた人類でしたが軍隊を送り込んでも調査には失敗。しかし、「ゾーン」の中には願いを叶えてくれる「願掛けの部屋」があるとされ、「ゾーン」を訪れる人々はあとを絶ちませんでした。
 いつしか「ゾーン」の水先案内人は「ストーカー」と呼ばれるようになり、わずかな収入と引き換えに依頼者を「ゾーン」へと案内するようになっていました。
 そして今日もまた、ひとりのストーカーが「作家」と「科学者」のふたりをつれて「ゾーン」へと旅立つ……。
 えーまず最初に懺悔しておきますとけっこうな時間寝てしまいました。仕方ないんだって今日は昼から眼鏡を新調するために眼科に行ってずーっと検査受けてきて疲れてたんだから……。あらためてタルコフスキー作品の睡眠導入力を思い知らされました。
 でもね、先日の日記と同じくタルコフスキー監督の名誉のために言っておくと決してつまらないから寝てしまうわけではありません。思うに、タルコフスキー監督作品は「鑑賞する」というよりも「身を委ねる」作品なんですよ。ドラマチックで派手な作品もいいけれど、こういう叙情的な作品もまたいい。
 本作は大部分色調を抑えたモノクロに近い画質で制作されてるんですが、この淡白な映像と「ゾーン」内の人の生活の痕跡があるようなないような、自然に覆われた場所であるようなないような、どこか現実感を欠いた淡白な映像に幻惑されるかのような作品でした。
 ……で、本作は要するに「願望機」モノなわけですが、「猿の手」などのお話を鑑みるにこのテの話でまともに願望を実現してハッピーエンドって路線はまずないわけで。
 本作でも最終的に「願掛けの部屋」を訪れた三人は最終的にだれも願望を叶えることなく「ゾーン」をあとにします。
 ……で、本作のCパートとも言えるこのあとのパート、これこそがこの作品の本体のような気がします。帰宅したストーカーとその妻のやり取り、観客に向かって語り始めるストーカーの妻、そしてその娘が冒頭と同じくテーブルの上のコップが勝手に動くのを眺めていたら、家のすぐ側の線路を列車が列車がけたたましい振動とともに通り過ぎていく……。
 思うに本作の「ゾーン」および「願掛けの部屋」は、「空虚な信仰」の象徴だったんじゃないでしょうか。Cパートのストーカーの妻の独白からは彼女が「願掛けの部屋」の話を本気で信じているわけではないことがわかりますし、コップが勝手に動くのも怪奇現象などではなくただの電車の振動だったという描写は、そもそも「ゾーン」の出現の信憑性も薄い事を示しています。感買えてみればストーカーとほかの二人も、「願掛けの部屋」のことを本当だと思っているというよりは「本当だと思い込もうとしている」ように見えました。
 本作では、空疎な、本当かどうかもわからない都合の良い願望機の実在を信じてしまう、信じようとしなくてはやり過ごせない日常や現実の重さを感じる気がしました。
 また、ラストパートだけが鮮明に色づいたカラーになっていることも、現実と日常の存在の濃さを思わせる演出に感じられましたね。
 さて、「タルコフスキー特集2026」もあと2作品。順番的には「惑星ソラリス」がラストになるので楽しみ。
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