「うあぁー!!」
わ、やばっ。めっちゃ大きい声…
超難しいパズルゲームを、ついにクリア。なんにも捻ってないばっかりに、余計にムシャクシャして…いや、もう言い訳は。
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「結花ぁー?」
「宙?何?」
「いやいや、お前声大きすぎだって」
「ああ、ごめんごめん」
隣の家の宙にも聞こえてたのか…割と大きかったんだな。
「どう、夏休みの宿題?わたしは読書感想文、今日やるつもりなんだけど」
「……お前ぇええ!!思い出させんなっ!」
「…はぁ!?何言ってんのよ…。今から図書館行くんだけど?」
なんなのよ、この狂いっぷりは…
「一緒に行くんだったら、行くけど?」
「うーん…じゃあ」
というわけで、今から宙と図書館に行く。
さてと。普段は短編を好むけど、今回ばかりは長編よねー。
そう思い、コーナーを漁る。
「奇遇だな」
久々に聞いた声。
「あ、心葉」
「久しぶりだ。宙も一緒なのか?」
「うん。若干キレ気味だったけど…ってか、宙、まだあそこいんの!?」
絵が多めの、絵本ともなんともいえない、3年生の頃お世話になった児童書コーナー。そこに宙が神妙な面持ちでいる。
「まあ、仕方ないだろう」
「いや…3年生の頃、宙、まだ絵本だったんだけど」
「まあ相性はつきものだろうからな。さて…僕はこれを読むとするか」
心葉はわたしより《《ちょっと》》分厚い文庫本。それ大人向けじゃない?あー、でもあらすじをみるに中学生ぐらい向けかしら?
「どうだ、宙とは?」
「まあ…ゲームで叫んだら言われた」
「…そうか」
そっけなく、心葉は「じゃあ、自習室で書いてくる」と言った。
宙のところへ駆け寄り、
「なんの本にするの?」
と聞いてみた。
「俺?」
「俺しかいないでしょ」
「じゃーん、この本」
そうやって自慢げに見せてきたのは、ちょっと絵が多めの小説。アニメを小説化したみたいなやつだ。
「いや、それ?」
「は?」
「いや、まあ文句はないけど…それ?」
心葉の言葉が頭をよぎり、「まあいいっちゃあいいけどさ」と言葉を飲み込む。
「結花は?」
「わたし?わたしはこれよ」
「うわ、めちゃくちゃ字多いじゃん」
「これぐらい読まないと、1ヶ月あるし。じゃあ、自習室で書いてくるわ」
そう言ってわたしは階段を上がり、席につく。クーラーが効いていて涼しく、静かだ。
リュックをおろし、椅子に座る。折れるのを恐れてクリアファイルに入れたけど、クリアファイルに入れなくても大丈夫だったようだ。そんな原稿用紙を広げ、シャープペンシルを手に取り、コツコツとノックする。
テンプレをちょっとだけ改変した構成で、読書感想文を書く。えーと、だいたい作中の気持ちとかセリフを最初に持ってくると、読む人を惹きつけるんだったよね。今年こそ、入賞目指すぞ。
そう思い、わたしは頭の中で構成を組み立てながら、カリカリとシャープペンシルを原稿用紙に走らせた。
「うあぁー!!」
そんな叫び声で、俺は目が覚めた。くっそ、せっかく寝てたのに…俺は手際よく着替え、隣の家に向かった。あの声、あいつ以外いないだろ。
結花の家のインターホンを鳴らし、「結花ぁー?」と声をかける。案の定、バタバタと階段をおりる音がして、
「宙?何?」
とすっとぼけたように言う。
「いやいや、お前声大きすぎだって」
「ああ、ごめんごめん」
いやなんだよ、「ああ、ごめんごめん」って…
「どう、夏休みの宿題?わたしは読書感想文、今日やるつもりなんだけど」
「……お前ぇええ!!思い出させんなっ!」
いや狂ってないか?睡眠を妨害したくせ、嫌なことを思い出させるって…これを悪びれず、「何がいけないんですか?」みたいに言ってるのが、またタチが悪い。
「…はぁ!?何言ってんのよ…。今から図書館行くんだけど?一緒に行くんだったら、行くけど?」
「うーん…じゃあ」
…これ、本当に立派な…小6なのにもう彼女と……うぅぅ、ちょっと恥ずかしい気もする。