吐息でさえも震えてしまう
──どこからか、視線を感じる。
攘夷浪士であり現在進行形でお尋ね者になっている高杉晋助の、自意識が過剰というわけではない。包帯で隠された左目は別として、眼光鋭い切れ長の瞳に 中二病を拗らせてはいるが美丈夫なのだ。
──しかし、見目は良くても中身はテロリスト。
狂気と破壊衝動を宿した
視線を感じた方角へ気付かれぬよう意識を向けるも、その空間に異常は感じられない。気のせいか、と意識を戻そうとしたが、再び視線を感じた。頸部、──ではなく、見つめられているのはどうも口唇≪こうしん≫のようだ。
唇に何か付いているのかと舌で舐めてみる。ぺろりと赤い舌を出し、唇を上下一舐め。カサツキも割れもなく、唇はしっとり潤っている。冬は乾燥すると言われてからちゃんと保湿しているし、コンディションは好調で問題なかった。
の自覚はある。他人の視線には過敏で、しているので
「……何か付いてンのか?」
「はっ⁉ な、なにゅ、が……っ」
「ずっと俺の口唇を見てただろ」
「み、見てないし! 高杉のくせに自意識過剰なんじゃないの!」
「……フーン」
口ぶりからして、見ていたのは銀時で間違いないだろう。隠さずに、もっと近くで見ればいいのに。銀時から見てくるのは大歓迎だ。
「…………ちゅーが、したい……」
「……はァ?」
「だ、だからっ、……何度も、言わせんなよ」
ちゅーがしたい、と、銀時がさっきよりも小さい声で、ぶっきらぼうに呟く。視線を逸らし、高杉を見ようとしない銀時だが、 照れ隠しは失敗している。
「──俺と、接吻したいのかァ」
「せっ⁉ せ、せっぷんとか言うな! は、恥ずかしいだろ……」
「どこが。ちゅーなんて曖昧に言う方が伝わらねェし、間怠っこい」
「ちゅーしてやるから、唇を寄越せ」
「──…っッ!」
銀時の耳元で囁いたら、耳どころか首まで真っ赤にしながら
「歩く猥褻物は喋んないでくれない⁉」
猥褻物と言われて気分は良くないが、それだけ意識されているのだとしたら──。
「俺はどこに接吻してもいいンだぜ?」