悪魔が来たりて喉が鳴る
──白米、鮭に海苔。
用意する材料はこれぐらいか、と、仁王立ちの高杉晋助は腕を組んで考え込む。普段は台所に立つこともないし、料理をすることだってない。炊事場に人払いをすることになるとは思っていなかった。ちなみに材料を用意したのは高杉ではなく桂だ。
高杉が何をしようとしているのか察した桂は、材料を無駄にするなよ、と言い残して去って行った。あと、銀時なら何でも食べてくれるぞ、と余計な助言も残していた。
言われなくても解っているし、俺の方が銀時のことを理解しているからほっとけ。
「……米を握るから、握り飯……だよなァ?」
米をわし掴んだら、力が強すぎたのかべちょっと潰れた。手にくっついて離れない。なんだこれ。
簡単な料理だと思っていた。米を握って形を整え、中央に具材を入れて海苔を巻くだけの簡単で単純な料理だと思っていたのに、こんなにも難しいとは。
食材は限りある。失敗作だからと捨てる訳にはいかない。手のひらにこびり付いた米だったモノを舐めつつ、両手でぐっと握って圧縮する。高杉作の握り飯第一号が爆誕した。硬さだけならナニモノにも負けないだろう。……米が泣いている気がしたが、気のせいだ。
「……難しくねェか」
たかが握り飯。されど握り飯。
さすがに人が食べれる硬さじゃないとマズイ。高杉はそっと壊れ物に触るように、今度は優しく白米を手に取った。
やれお坊っちゃんだ頭でっかちだ銀時に揶揄われるが、頭でっかちは置いといてボンボンなのだから仕方ないだろう。食事は女中が用意してくれるのが当たり前だ。
……食べたことはあるのに、再現するのがこんなに難しいとは思わなかった。
やわやわと米を揉み、中央に鮭を置いて海苔を巻く。強く握らなかったので握り飯として自立が困難で横倒しになったままだが、これでいいだろう。これ以上作ったら失敗作を食べきれなくなる。
「……けどなァ、横倒しのままだと見映えが悪ィか……?」
諦めの悪い男、──高杉晋助。
再び白米へと手を伸ばして、握り飯の真髄へと歩み出した。
その部屋は消毒液のニオイが充満していた。
いつもは甘ったるい