常夜の寝台で戯れよう
──自分よりも小さいくせに。
飛び跳ねる姿に、目が離せなくなる。小柄で、妹の神楽ぐらいの背丈しかないのに
倍以上ある大人に平然と立ち向かい、圧倒的な力で捻じ伏せて地へ倒してゆく。その姿は人間でも夜兎でもなく、怪物やバケモノ──…鬼の名が相応しい。
立ち入るなと言われていた。
自分だって高杉サンの私生活に興味ないし、何が棲んでいるか解らない塒(ねぐら)など覗く気はなかったのだが。一ヵ月以上も高杉サンが不在で、同行しているのか同じ時期におにいさんの姿も見なくなった。
挨拶ぐらいしてくれれば良かったが、最後に見たおにいさんの姿は普段よりもかなり弱っており、自力で立つことも難しかった。高杉サンの腕の中で呻き、文句を言う姿は相変わらずだったけれど。
「……銀ちゃんに会いたいネ」
「神楽……。おにいさんは出掛けてる、って言われただろ?」
「でも、……会いたいアル」
会いたいのは神楽だけじゃない。自分だって会いたいし、前みたいに手合わせしたかったが、最後に見た弱り具合では無理だろう。虫の息だった。
「たかすぎ、……サン」
「──神威か。久しぶりだなァ」
「……
半裸で、着ていた服を羽織っただけの格好に、煙管で一服している姿はどう見ても情事後だった。傍らの天蓋付きの大きなベッドにはこんもり大きな塊がある。それが高杉サンのお相手だろうが、大きさ的に成人しており、おにいさんではない。──おにいさんは、どこへ行ってしまったのだろう。
部屋を間違えてしまったのか。……いや、おにいさんはこの部屋の出窓から外をよく眺めていた。それこそ体調を崩していた日も、
窓から高杉サンの帰りを待ち侘びていたのだと
「──…さいていだね」
「……誰か来てたの?」
「神威が、」
「神威? え、何の用だったの?」
「…………」
「ちょ、聞いてないの? ちゃんと用件聞いとけよ」
銀時が起き上がろう
「ちょ、……たかすぎさん、」
「──もう一度いいだろ。銀時ィ……」
せっかく元気になって、成人男性の姿で二人に会えると思っていたのに、とうぶん先になってしまうかもしれないし、なんなら抱き潰されて子供の姿に戻ってしまうかもしれない。……まぁ、高杉が専属で看護してくれるのは悪くなかったが、居心地はすこぶる悪かった。
ぐりぐり頭を銀時の脇腹に擦りつけてくる男は、
今は銀時の方が背は高いし
甘えてくる高杉は嫌いじゃないので、されるがまま寝台へ一緒に戻ってやることにした。
「銀ちゃんに会えたアルか?」
「おにいさんは……、」
言葉を濁す神威を見上げて、神楽が不思議そうに首を傾げる。
「片目しかいなかったアルか」
「そんな感じ」
「……わかったアル。片目を殴って、銀ちゃんの居場所を聞き出すネ」
「神威も会いたいの、知ってるアル」
「──…神楽?」
道の向こうに、傘を差している男が二人。一人は高杉サンだ、見覚えのある ──もう一人は、誰だ。
特徴的な番傘に
「久しぶり。……俺のこと、忘れちゃった?」
「…………銀ちゃ、ん……?」
「神威も久しぶり。おととい会いに来たんだって?」
「おととい……」
「え、ほんとにおにいさん? ほんとのほんとにおにいさんなの?」
「ずいぶん疑われてるじゃん。ちょっと小さくなっちゃったけど、本来は成人してるからね」
「小さい銀ちゃんのほうが可愛いネ!」
銀時はいつでも可愛いだろ、と惚気る高杉サンの声は聞こえないフリをして、神楽と二人でおにいさんに抱き付いてやった。