ここ数日は雨やら台風やらで外出できなかったので、もうそろそろ外出しないとメンタルが駄目になる!といった感じだったので今日はなんばまで行ってきました。
 そして今日見てきたのはこれ!
 今月はかなりクレカのライフ消費量が大きくなる予定だったので臍を噛む思いで映画の本数を削ってましたが、まあ映画は心の栄養なので我慢しすぎるのも良くないよね。ということで最近気になってた作品の一本であるこの作品を見に行くことに。
 本作はすでに塚口での上映がアナウンスされてましたが、不穏な映画が見たくて見たくて我慢できなくなったので見に行きました。映画好きはしばしばイヤな気分になるために映画を見にくのだ……。
 主人公・ルイスとその息子・エステバンは、失踪した娘を探して砂漠で開催されているレイブパーティに参加していました。聞き込みを行うも手がかりは得られず落胆する二人。しかし、参加者から別のレイブパーティが遠方で開催されることを聞き、危険を承知で長い砂漠の旅に出発します。果たしてルイスは娘を見つけることができるのか? そして、この果てしない旅の行き着く先とは――?
 「予測不能」だの「口外禁止」だのはまあ映画の惹句としてはありきたりですが、本作は本当に予測不能でした。例によって例のごとくポスターとトレーラー以外の情報はなしでしたし、そもそも本作のジャンルすらわからない状態で見に行きました。なのでそもそも本作がどういう方向性の映画かもわからず、中盤から終盤の展開はかなり度肝を抜かれましたね。
 いちおう冒頭で提示されるルイスの目的は「失踪した娘を見つけること」なんですが、まあこの雰囲気からして「娘を見つける/見つけられない」の方向性で決着する話ではなかろうなとは思ってましたが、予想以上に宗教性の高い作品でしたね。
 その前にまず音響について言及しておきたい。本作は冒頭の爆音のレイブパーティをはじめ、さまざまな場所でエレクトリカルなダンスミュージックが挿入されています。今回見たのはなんばパークスシアター8だったんですが、正直なところ音響部分は平凡だったので重低音の効きがイマイチ。なので、今月末に塚口で上映されるときにはぜひとも優れた音響環境で聞いてみたいところ。
 本作のタイトルである「シラート」とは、冒頭のテロップによればアラビア語で「天国と地獄を結ぶ橋」のこと。その橋は髪の毛よりも細く剣よりも鋭い。
 本作では、この「シラート」はすなわち「一縷の望み」として存在していると感じました。
 ルイスは一縷の望みをかけて失踪した娘を探し続けます。
 中盤、突然の事故で崖から車ごと転落したエステバンを、明らかに助かるはずがないとわかっていながらルイスは探し求めます。
 そして終盤、地雷原に迷い込んで立ち往生する一行は、危険を承知で地雷原を突破しようとします。
 全てはこの髪の毛よりも細く剣よりも鋭い橋であるシラートを渡って天国=ありえない理想的な救済に辿り着こうとしての行動。しかし、そのどれもが……。
 このシラートの意地の悪いところは、失敗だけじゃないところなんですよね。
 地雷原で立ち往生した一行の中から歩み出たルイスは無心で歩き、安全な岩場にたどり着きます。無論、なぜ無事に渡れたのかはルイス自身にもわかりません。なぜほかのときは失敗で、このときだけは成功だったのか。それは作中では明示されませんし、観客にも説明されません。
 完全な絶望よりもたちが悪いのは、希望の可能性をチラつかされること。
 結局本作の出来事は、この「希望のチラつかせ」に惑わされて迷走する人々を描いた話だったんじゃないかと解釈しました。
 そしてラストシーン、かろうじて生き残った数人が乗ってるのが、あからじめ決められたレールの上を走る乗り物である「列車」というのが……。
 本作はロードムービーとしての側面もあると思いますが、その旅の果ての終着点がこれというのがいかにも「あらかじめ定められた道から外れては生きていけない、希望という欺瞞に絡め取られた子羊」といった虚無感がじんわりと胸のうちに広がっていくような感覚がありました。
 作中に登場する人物も、誰も悪人でもなんでもない。つまり彼らの身に起きた出来事は罪の報いでもなんでもなく本当に偶発的な事故なんですよね。だからこそどうしようもない。犯していない罪は償えないから。
 特にエステバンの転落事故のシーンの衝撃と欠落感は大きかった。確かに崖の上という危険性のある場所だったけど、本当になんの伏線もなくあっさりと……。作劇的にはあそこで転落しそうなエステバンを危険を冒して助けるといった展開になりそうなものですがそれもなし。映画的なお約束すら本作の中では無効という……。
 なんというか……無慈悲な映画だったなあと思いました。登場人物たちはみんな、必死の捜索やドラッグやレイブパーティといった手段で各々の不安から逃れようとしてたんだと思います。しかし彼らは結局、誰も髪の毛よりも細く剣よりも鋭い橋であるシラートを渡って天国には行けず、虚無の表情で大量の難民とともにどこへ行くともしれない列車に乗っているしかないというあの、希望はもちろん明白な絶望もない、引き伸ばされた虚無が続くだけのラスト。
 そこから逆算すると冒頭の爆音のレイブパーティもまた、広大な砂漠というかたちをとった虚無をごまかすための稚拙な祭祀だったようにも思えてきます。
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