そう言う訳で、アンナとジュリオは今気まずい関係にあった。アンナはあまり話しかけて来なくなったし、ジュリオは再度恋心なんてものを抱かれる事を避ける為に、執事の頃へ態度を戻した。その状態が改善も改悪もされないまま迎えた今日、二人は全然そんな気分じゃない中パーティと洒落込まされていた。
会場に着いて早々自分から距離を取ったアンナを距離を保ったまま見守りつつ、ジュリオは場の空気に合わせる為酒を嗜んでいた。ただそれはあくまでも先述の通りの意図しかない義務的なもので、ジュリオはこれっぽっちも酒の味を楽しめてはいない。気まずいのはジュリオの方も同じだったのだ。
だから正直な所、アンナが離れて行ってくれたのはジュリオに取っても好都合だった。——正確には、男に飢えているらしい女性達が頻繁に声をかけてくるのだけは不都合だったが。とはいえアンナと違い、ジュリオはそうした人間を躱す事には多少なりとも慣れている。
「申し訳ございません、私は付き添いとして来ている者ですので、そうしたお誘いを受ける事は禁じられていまして」
仮面の下に仮初の笑顔を重ね、強い拒否の台詞を大分分厚いオブラートに包んでお断りすると、女性達はすごすごと引き下がっていった。やっと退いてくれたか、と嘆息しつつ、先程までアンナがいた方を見遣る。しかしそこにアンナの姿はなかった。
「アンナ・・・?どこに」
少々焦りつつ周りを見渡してみれば、そこからそう離れていない場所に彼女の姿を認め、ジュリオは安堵する。だがその直後、今度は心臓を締め付けられるような感覚に陥った。彼女が手を取り、笑顔を向け、共に踊る男の姿を見てしまったのだ。
「——っ」
どくどくと心臓が嫌な音を立てる。いや、何を動じているんだ。あの男はどう見たってちゃんとした身分の人間だ。身なりがしっかりしているし、仮面の下で見えにくいが顔も整っている。所作だって綺麗だ。ダンスのエスコートも――。そう自分を納得させるように事実を並び立てるが、心臓の軋みは酷くなっていくばかりだ。
彼女が自分のような人間を諦め、勘違いだったと気付き、相応しい人間と生きていく。それが望みだった筈だった。それなのに、いざ「そうなるかもしれない」場面を目にしたジュリオは、まるで拒絶反応でも起こしたかのように、身体が冷えていく感覚を覚えていた。心臓に氷の刃でも突き刺さったかのように、痛くて寒い。手先の血流が途絶えたように、感覚が失われていく。
(——ダメだ、こんな事を考えていては。俺は、彼女を笑って祝福するべきなんだ。それをこんな――寂しい、なんて)
服が崩れるのに構う余裕もなく、義手が胸の辺りの布を握りしめる。治まらない心臓の痛みと身体の寒さと、考えてはいけない思考から逃げたくてたまらない。その衝動を耐えられたのは1分にも満たない時間だけで、ジュリオは苦痛を振り払うように頭を振って、近くの透明な液体が入ったカクテルグラスを鷲掴んだ。
ーーーーーーーーーー
それから10数分の後、アンナは先程自分が座り込んでいたテーブルの方へ一人で戻ってきていた。そんなに踊った訳ではないののどっと疲れてしまい、大分押し殺した溜息をつきながら席に座る。結局、青年とは2曲ほどしか踊らないで逃げてきてしまった。踊っている間、ずっとジュリオと比べてしまっていた事を申し訳なく思ったからだ。
ジュリオは彼より頭半分くらい背が高かった。ジュリオの腕は彼に比べるとがっしりとしていて筋肉があった。ジュリオはリードする感じに踊るのではなく、アンナが動きたい方に合わせてくれていた。ジュリオは、ジュリオはもっと――。
(私ったら、全然忘れられてないじゃない。それどころか、他の人とジュリオを比べてばっかり・・・)
去り際に青年から渡された上質なメモ紙を見つめ、アンナは再度溜息をついた。何人かに渡していると思われるそれを、しかしアンナは使う気にはなれそうになかった。やっぱりどうあっても、自分はジュリオを忘れる事なんてできないのだろう。そう悟った。
「私、もう一生恋愛できないかも・・・」
そんな悲しい台詞はパーティの喧騒に溶けて、誰にも届かなかった。アンナはメモを丁寧に折ってポケットに仕舞い、席を立つ。やっぱり乗り気でないパーティにいつまでも居座るのは失礼な気がしてきた。ここはジュリオを連れてさっさと帰った方がいいだろうと、アンナは辺りを見回した。
だが目に見える範囲にジュリオの姿が見当たらない。踊る前にいるのを確認した場所を見ても、その他行きそうな場所に目を凝らして見ても、やっぱりいない。このままでは帰れないので暫く辺りを探してみると、最初にいた場所からそう離れていない階段の傍で蹲っているのを発見した。
「ジュリオ!」
物陰で蹲っているジュリオは、遠目から見ても異様な雰囲気を纏っていた。アンナは歩きにくい靴を履いている事も忘れて、とたとたとジュリオの傍に走り寄る。具合が悪いのかと顔を覗き込もうとするが、ジュリオは顔を伏せたままだ。話しかけるのは少し怖かったが、本当に具合が悪かったら大事だし、それに置いて帰る訳にもいかない。
「ジュリオ・・・?」
アンナが再度声をかけると、ジュリオは漸くゆらりと頭を上げた。ぼう、とどこか遠くを見ている様な左目が数秒アンナを見つめる。しかし相手を認識するのと同時に、彼の表情はにぱーっと子供のような笑顔に変化した。
「アンナお嬢様!」
——対等になってから歯を見せる笑い方をする事は増えたが、口の中まで見える笑い方は初めてだった。あまり見た事のない種類の表情を向けられ、アンナの中に宇宙猫が降臨する。正直滅茶苦茶可愛いが、強い酒の香りと彼の紅潮した肌が素直に身悶える事を許してはくれなかった。
「ジュリオ、お酒飲んだでしょ。それも沢山」
「んー・・・覚えておりません」
一先ず話が通じて、しかも返答ができる程度の理性はまだ残っているようだった。だが頭はふらふらと揺れていて、少し眠いのか半目になっている。この短時間で一体どのくらいのアルコールを摂取したのだろうか。普段のジュリオなら絶対にしない、余りにも計画性に欠ける飲酒の仕方をしている事に、アンナは少なからず動揺していた。
大分回ったらしいアルコールのせいか、ジュリオはずっとご機嫌だった。というかご機嫌過ぎていた。以前までに見た機嫌がいい時のどんな顔よりも、ずっとニコニコしている。——好きではない女の人にも、こんなに可愛らしい笑みを向けるのか。その事実に、アンナの心がちくりと痛んだ。
(執事の時から笑うの、得意だったものね)
脳裏に浮かんだ嫉妬のようなほの暗い感情を、頭を振って打ち消す。自分は振られてしまったのだから、その笑顔を向けられる他の女性への嫉妬なんてするだけ不毛だ。そう自分に言い聞かせる。
「そんな事よりお嬢様、ドリンクはお飲みになりましたか?あちらにお嬢様が好きそうなドリンクがありましたよ。お持ちしますね」
ちょっと詰まって来たので今日の所はもう終わります・・・申し訳ない!
明日は昼か夜のどっちかに1度は配信する予定です!
これの続きかも知れないし違うかもしれない。
要するに未定です!
明日までには決めておきます。
ではまた!
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ジュリアンすれ違いネタ②
初公開日: 2024年10月16日
最終更新日: 2024年10月16日
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コメント
ちょっと遅れてしもたー!!!
ご飯食べるの遅くなりました!始めます!
予告通り昨日の続きからですー!
アンジュリDom/Subバース③
結局全然出来てないアフター第二弾!開始がだいぶ遅くなったので、日付変わる手前までは出来たらいいな。
ゆっくりゆきねこ
アンジュリDom/Subバース②
女攻めオンリーアフター第一弾!本日は予告通りアンジュリDom/Subユニバースを書きます!
ゆっくりゆきねこ