馬鹿みたいな愛し方がされたい。
とても疲れた。
私は強いから、一人でも大丈夫だろうって。
私は我儘だから、一緒にいたら疲れるって。
愛して人は私から離れていく。
私のことを全肯定してくれる人に愛されたい。
馬鹿みたいに、私を溺愛してくれる人、そんな人にいてほしい。
その願いは決して叶わない。
だから、私は、私の魔力をすべて使って、私を愛してくれる存在を生み出した。
人に似せた人形に、私の魔力を入れる。
彼は、私を主人と敬い、私を愛してくれた。
私のすべてを認めてくれた。
「キャリー。どうして、なんで、そんなことを」
私を見た人は言葉を失う。
だけど、私は構わない。
彼がいつも私の傍にいるから。
★
僕は、僕が人形であることを知っている。
キャリーのために作られ、彼女の魔力で意志を持った人形だ。
彼女はとても大切な人。
彼女の知り合いが彼女を見る度に悲鳴を上げたり、言葉を失ったりするのが最初がわからなかった。
だけど、僕に教えてくれた人がいた。
その理由を。
彼女は僕に魔力をすべてつぎ込んだせいで、若さを失った。
僕が生まれる前、彼女は金色の髪に、緑色の美しい女性だったらしい。
今でも彼女はとても綺麗。
彼女は僕の女神。
「お前の愛は紛い物だ。本当ならば、キャリーに魔力を返せ」
ある男が執拗に僕に話しかけてきた。
キャリーはいつも僕に言う。
今がとても幸せだと。
僕が側にいるのがとても嬉しいと。
僕が魔力をキャリーに返したら、僕はただの人形に帰ってしまう。
キャリーは悲しむだろう。
★
彼は最近、面白いことを聞く。
元の姿に戻りたいかって。
若くて魅力的な私。誰もが私に理想を押し付け、それと違う私に絶望していなくなった。
そんな感情いらない。
今は誰も近づいてこない。
彼だけが私の傍にいて大切にしてくれる。
若さを失った私におかしな情熱もなくなり、彼と二人で静かに暮らす時間が好きだった。
だから、彼に答える。
元の姿にもどらなくていい。
彼が側にいることが私の幸せだって。
★
愛するとはなんだろう。
愛する彼女を元の美しい姿にもどすために、僕は魔力を返すべきなのかな。
その人は何度も僕に言う。
彼女はとても美しかったって。
★
どうして、どうして彼はそんなことをしたのだろう。
彼はナイフを自分の心臓に差した。
「キャリー。僕は君を愛している。本当だよ。だから君に魔力を返す。綺麗な君に戻るように」
彼が事切れ、魔力が私の元へ戻っていく。
しわくちゃだった皮膚に張りが戻っていき、髪色が金色になっていく。
瞳が濁った灰色から緑色へ。
「綺麗だ。キャリー」
以前、私が愛した男がそんなこと言って近づいてきた。
だけど、私の心は動かなかった。
どうして、死んでしまったの?
私はとても幸せだったのに。
どうして。
彼を失った世界は、とても美しく思えなかった。
私は若さを色を取り戻したけど、世界は色を無くした。
彼は人形。
魂なんて存在しない。
私がかつて愛し、彼をそそのかした愚かな男が言う。
そんなのわからないわ。
私は彼が使ったナイフを使って、命を絶った。
消えゆく意識の中で、彼の微笑みが見えた気がした。