馬鹿みたいな愛し方がされたい。
 とても疲れた。
 私は強いから、一人でも大丈夫だろうって。
 私は我儘だから、一緒にいたら疲れるって。
 愛して人は私から離れていく。
 私のことを全肯定してくれる人に愛されたい。 
 馬鹿みたいに、私を溺愛してくれる人、そんな人にいてほしい。
 その願いは決して叶わない。
 だから、私は、私の魔力をすべて使って、私を愛してくれる存在を生み出した。
 人に似せた人形に、私の魔力を入れる。
 彼は、私を主人と敬い、私を愛してくれた。
 私のすべてを認めてくれた。
「キャリー。どうして、なんで、そんなことを」
 私を見た人は言葉を失う。
 だけど、私は構わない。
 彼がいつも私の傍にいるから。
 
 僕は、僕が人形であることを知っている。
 キャリーのために作られ、彼女の魔力で意志を持った人形だ。
 彼女はとても大切な人。
 彼女の知り合いが彼女を見る度に悲鳴を上げたり、言葉を失ったりするのが最初がわからなかった。
 だけど、僕に教えてくれた人がいた。
 その理由を。
 彼女は僕に魔力をすべてつぎ込んだせいで、若さを失った。
 僕が生まれる前、彼女は金色の髪に、緑色の美しい女性だったらしい。
 今でも彼女はとても綺麗。
 彼女は僕の女神。
「お前の愛は紛い物だ。本当ならば、キャリーに魔力を返せ」
 ある男が執拗に僕に話しかけてきた。
 キャリーはいつも僕に言う。
 今がとても幸せだと。
 僕が側にいるのがとても嬉しいと。
 僕が魔力をキャリーに返したら、僕はただの人形に帰ってしまう。
 キャリーは悲しむだろう。
 彼は最近、面白いことを聞く。
 元の姿に戻りたいかって。
 若くて魅力的な私。誰もが私に理想を押し付け、それと違う私に絶望していなくなった。
 そんな感情いらない。
 今は誰も近づいてこない。
 彼だけが私の傍にいて大切にしてくれる。
 若さを失った私におかしな情熱もなくなり、彼と二人で静かに暮らす時間が好きだった。
 だから、彼に答える。
 元の姿にもどらなくていい。
 彼が側にいることが私の幸せだって。
 愛するとはなんだろう。
 愛する彼女を元の美しい姿にもどすために、僕は魔力を返すべきなのかな。
 その人は何度も僕に言う。
 彼女はとても美しかったって。
 どうして、どうして彼はそんなことをしたのだろう。
 彼はナイフを自分の心臓に差した。
 
「キャリー。僕は君を愛している。本当だよ。だから君に魔力を返す。綺麗な君に戻るように」
 彼が事切れ、魔力が私の元へ戻っていく。
 しわくちゃだった皮膚に張りが戻っていき、髪色が金色になっていく。
 瞳が濁った灰色から緑色へ。
「綺麗だ。キャリー」
 以前、私が愛した男がそんなこと言って近づいてきた。
 だけど、私の心は動かなかった。
 どうして、死んでしまったの?
 私はとても幸せだったのに。
 どうして。
 彼を失った世界は、とても美しく思えなかった。
 私は若さを色を取り戻したけど、世界は色を無くした。
 彼は人形。
 魂なんて存在しない。 
 私がかつて愛し、彼をそそのかした愚かな男が言う。
 そんなのわからないわ。
 私は彼が使ったナイフを使って、命を絶った。
 消えゆく意識の中で、彼の微笑みが見えた気がした。
 
  
 
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向き
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もう1本いけないかな
初公開日: 2026年04月19日
最終更新日: 2026年04月24日
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