配信開始しました。駒です。よろしくお願いします。
最近小説を書いていなかったので、うまく書ける自信がないですが
以下本文
 列車の窓の外に入道雲が見えていた。
 夏空の青はどこまでも深く、濃い。カラーコードで表すのならきっと「#0000FF」。青の最大値に間違いない。
 その美しい青地を背景にして、雲は、むくむくと丸みを帯びた頭をいくつももたげていた。光を受けた白、翳を帯びた銀色、明るさだけで立体感を見せる無彩色の巨躯を軽々と空高くに浮かべながら。
「どこ見てるの?」
 隣から柔らかな高音で呼びかけられる。
 車窓から視線を外し、肩越しに声の主に向き直ると黒目勝ちの瞳にかち合った。真っ直ぐの睫毛、澄んだ白目との輪郭がくっきりとした黒い瞳孔。それほど大きくもない末弘二重の双眸が、妙に印象的な少女だった。
「雲。大きいよね」
 すでに姿を変えつつある白い雲を指で示すと、少女の瞳がまたたいてまぶしそうに細められた。
「ほんとだ。綺麗」
 微笑を含んだ優しい声音が鼓膜に弾む。
「すきなの?」
「すきだよ」
 何が、とは訊かれなかったが、私は特に迷わずうなずいた。
 雲のことでも、空のことでも、窓の外の景色を見ることでも。この夏の昼下がり、人気のない列車の中で起こるあらゆる出来事は、どこか白昼夢のように現実離れして思われた。
 偏光レンズをのぞいたときのような、色褪せた古写真のような、ノスタルジィをかきたてられるような、美しい幻想の世界。
 そのまぼろしの中にいる間は、あらゆるものが愛しいような気がする世界。
 すきだ。何がというわけではなく、この不思議な空間を構成するものなら全てが。
「そう」
 少女はふんわりと唇を綻ばせて、何を言うでもなく、するりと進行方向に座り直した。
 私もまなざしを車窓に戻した。会話は終わりだった。あとは自我が溶けてゆくような間延びした時間が、規則的な車体の振動とともにながれてゆく。
 どれほど時間が経ったころか。
 電子音が流れ、無機質なアナウンスが流れ出した。 
 ーー乗客、乗客です。左側の扉が開きます。ご乗車のお客様は、間違って降りられることが無いよう、ご注意ください。
 傍らの少女がついと視線を上げて左側のドアを見た。
 私はそれを横目に眺めながら、次は誰が乗ってくるのだろう、と思案する。
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もしよければお気軽にコメントいただけると嬉しいです~
44:29
配信止まっちゃってました、すみません
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