<お題>
①ハッピーバースデー
②アプリケーション
<小説>
「KKM」というSNSのアカウント名には、3人の中の人がいる。
一人目は、僕「木村」。
二人目は、僕の小学校からのマブダチ「北桜」(この奇妙な苗字のせいで、こいつは4度もいじめられそうになった。その度に、いじめっ子の〝バカ林〟から救済してあげたのは僕)
三人目は、ミキ。僕と北桜の初恋の相手だ。
同じアカウントを3人で共有していたことに、特別な理由はない。
ただメッセージのグループを作るのには、お互いはメッセージそのものが苦手で、
その代わりに、SNSでお互いの日常を伝え合いたいほどには、心許し合う相手同士だった。
というのは、まあ、ずいぶん格好つけた言い方で、
正直になると、男の僕と北桜が、マメに自分の近況を報告したがる理由なんて、
ミキの気を引きたい以外のなにものでもなかった。
はずだった。
そうはいっても、二人の男から好かれているというのに、
ミキは誰よりも男勝りだった。
給食の牛乳は、毎日二本も飲むし、50メートル走も8秒台だ。
何よりドッジボールが強かった。
僕は、男よりも速いボールを投げるミキに惚れたってわけだ。
僕たちの小中学校の武勇伝はいくつでもある。
でも、僕たちの友情は一生ではなかった。
中学の卒業と同時にミキは、この田舎から東京へと引っ越していった。
北桜なんかは、僕を「アホポンタス!」とよく分からない言葉で罵った後に、高校を辞めた。
北桜の親が離婚して、金銭的に高校に通い続ける余裕がないことは、僕も知っていた。
北桜は、誰よりもいいやつだった。
だから、僕があのSNSで「お前らみんな薄情だ!」って投稿したときは、
誰の反応も帰ってこないものだと思っていた。
僕の投稿には同じアカウントで「鈍感だ」とコメントが返ってきた。
それが北桜かミキかは分からない。
それから僕がどんな投稿をしても、誰からの反応はない。
それなのに、僕の誕生日にだけ、僕じゃない誰かがこんな投稿をするのだ。
「ハッピーバスデー、あなたのことが今でも好きです」
僕だって、二人のことが大切だというのに。
(了)