※はじめに
本作はあぼがど(@abogard_ausfB)さんからヒントを頂いて書いたものです。この場を借りてお礼申し上げます。
――だからこそ、装甲ごと食われていく仲間たちの叫喚がサファイアの認識に深々と突き刺さる。
『トパーズリーダーから各機へ、迎撃用意!』
『敵の防衛網の守備が厚くて突破できません! うわぁぁぁ……ッ!』
データリンクに設定された精神防壁を貫通して響き渡る仲間の断末魔が、リーチェの全身の自由を奪っていた。血管の一本一本すらに恐怖が染み渡り、呼吸すらまともにできない。
「はぁッ、はぁッ、はぁ……ッ!」
陣形を文字通り食い破って突進してきたバフォメット級が至近距離に迫る。コクピット内が真っ赤な[[rb:警報 > アラート]]で埋め尽くされる。横長の瞳孔を持つ邪眼が眼前に迫り、縦に大きく割れた口吻が機体を頭から食いちぎろうとばくりと開かれ――
ドドドドッと連続して横合いから飛来した聖釘弾が、バフォメット級を横合いから殴り飛ばした。次いで、その分厚い生体装甲に深々と突き刺さった聖釘弾が一斉に爆裂。めくれ上がった生体装甲の開裂部から醜く脈動する内部組織を暴き出す。
さらに間髪入れず、[[rb:十字砲架 > クルセイダー]]を構えた機体が体当たり同然にバフォメット級の開裂部に向けて突撃。内部組織に砲身が突き刺さると同時に全弾発射。
至近射撃を受けたバフォメット級は内部から膨張し、次いで爆裂。断末魔の代わりに魔素を宙域に撒き散らしながら消滅した。
『……ーチェ! リーチェ! しっかりしなさい!』
「ベ……アト……?」
データリンクを通じて聞こえてきた僚機・サファイア2――ベアトの声が、ようやく恐怖に硬直していたリーチェの思考を現実に引き戻す。
正気に戻ったリーチェが最初に確認したのは、自機のステータスでも敵勢力の分布図でもなかった。
黒い[[rb:耐圧服 > カソック]]の上から巻いた、赤いリボン。その赤さが、リーチェの脳裏にこびりついた恐怖を一瞬で拭い去った。