「おっ、双子だ!」
割れた卵の中身を認めた俺は、思わず声を上げた。あまりに騒がしかったのか、何人かの騎士と俺の筆頭騎士が振り向く気配がする。
いよいよ魔界の扉が近づいていて自炊を余儀なくされていた俺たちは、それぞれ調理という名の作業をしていた。
魔界の扉と炊き出し組の中間に俺たちがいるから守り切れるとは思うのだが、さすがに補給できる町から遠くなってきた今、彼らにここまでついてきてくれと言うのは酷だ。
ということで、非戦闘員と離れた俺たちは鶏などの家畜類を引き連れて自炊生活をしているというわけだった。
で、俺はとりあえず卵を焼こうとして双子ちゃんを当てたというわけだ。熱されたフライパンの上にポトリと落ちたその双子の卵がじゅわっと音を立てる。うん良い音だ。
俺がその音を堪能していると、ジークヴァルトの気配が近付いてきた。そちらに視線だけを向ければ、彼はそわそわとしている。
「ん? どした?」
「いや……何が双子なのかと思えば、卵だったから」
「珍しいよな。いや、ちょっと卵の大きさが違ったから何かあるかなとは思ったんだけどさ」
俺がへらりと笑うと、ジークヴァルトがきゅっと口を締めた。ああ、照れてるのか。照れる理由はまったくもって分からないけど、まあ良いか。
「ヴァルト、ちょうど双子だから半分こできるな」
いつも通り食べ物の半分こを提案すると、彼は勢いよく頷いた。今日も元気だな。
ジークヴァルトは大人しくて、真面目で、良い男だ。それは筆頭騎士になる前も、なってからも変わらない。少しだけ、俺に対しての考え方があれだけど、別に俺は困らないしな。
それにしても、今回も彼は金属鎧を脱がずに休憩中か。よく体力がもつものだ。
金属鎧、暑くないのだろうか。この戦いが始まって、延々と続けていて、いつの間にか十年が経とうとしている。何度もこの季節を超えてきたが、夏でもお構いなしに身に着けたままだった。
「ヴァルトさ、暑くないの?」
「何がだ」
「金属鎧。フルプレートはさすがにきつくないか?」
「……まあ、慣れだな」
卵の黄身が固まって色が変わっていく姿を確認しながら、俺は思い付きでその鎧に触れた。
「うわ、結構熱いぞそれ」
「そうか?」
「卵は焼けそうにないけどな」
「くく……っ」
おや、珍しい。ジークヴァルトが笑ったのは、いつぶりだったろうか。彼は元々無表情な男だったが、十年も一緒にいれば慣れてくるし、徐々に彼の表情は豊かになってきていた。が、あまり笑わないのだ。
微笑むくらいならば、増えた。だが、滅多に笑うことはない。珍しい姿を見ることができた俺は、思わず呟いた。
「俺のベルンはご機嫌だな」
「いや、別にそんなことは――いや……双子の卵が見れたから、あながち間違いでは、ない……か」
俺の言うことを否定しようとして、やめた――ってなんだよ。いや、別に俺の言うことすべて肯定する人間になってほしいわけじゃないから、別に否定して良いんだけどなあ。