「マリー!?」
「何よぉ……?」
 俺は寝起き早々絶叫した。昨日は弟とクリスマス会をして、兄としてのひと仕事を終えたばかりだった。驚く俺の声にマリーが間延びした声を出しながら部屋を覗き込んでくる。のんびりとした態度の男に、ちょっとだけ苛ついたのは秘密だ。
 なぜなら、俺の絶叫の原因は彼だから。
「これ、何だよ!?」
「あぁ……それ? プレゼント」
「はぁぁぁ!?」
 再び叫んだからか、今度はマリーは嫌そうに顔を歪めて耳を塞いでいる。もっと叫んでやろうか、と思ったけどやめた。多分、大丈夫だとは思うけど、万が一にでも俺の叫びを聞いて誰かが通報でもしたら大変な事になってしまう。
 俺は真面目な男だから、不用意にそういう危ないことはしないんだ。
「いやいやいやいや、だってマリー。プレゼントっておかしいだろ!? この前のアレ・・がそうだったんじゃないの?」
「え? そうだったの……?」
 首を傾げる俺とマリー。何だか話がかみ合っていない気がする。腑に落ちないところはあるけど、とりあえずこのまま争っているわけにもいかない。
 俺はベッドから下りてプレゼントの山――とまではいかない塊を指さした。
「これ、何?」
「いやだからプレゼントよ」
「そういう事じゃなくって、中身の話!」
「自分で確かめてみなさいな。あたしに言わせるなんて野暮じゃない」
 てっきり俺がプレゼントを受け取るつもりでいるのだと思い込んでいるらしい彼は、珍しくしなを作ってにこりと笑った。
 そういうのも似合うんだよなぁ。美人ってすごいな。いや、マリーだから……かもな。俺はマリーの顔から視線を外し、プレゼントに目を向けた。大きい袋と、小さい袋、と封筒……? あと、箱っぽいのがひとつ。いや、まあこれ箱だよな。
 どれも綺麗にラッピングされていて、中身が全然分からない。少しくらいヒントっぽいものがあっても良いものだけど。
 俺は一番上に乗っている小さい封筒を手に取った。見た目からしてそうだろうけど、軽い。何だろな。普通に使われるような封筒で、でもすごく可愛い絵柄のそれ。
「あっ、榛。それは最後にしてちょうだい。恥ずかしいからっ」
「え? あ、これはただの手紙か」
「ちょっと、ただの手紙じゃないわよ。あたしの心がいっぱい詰まったお手紙よ!」
「ご、ごめん」
 相変わらず部屋から覗き込むような姿勢のまま、部屋に入ってこようとしない彼と会話をする。ぷりぷりと怒っているようなそぶりを見せているが、その実、そういう気持ちはなさそうだ。マリーって、寛大っていうか、優しいっていうか、本当にできた大人だよな。
 俺は小さく微笑んで「マリー、ありがと」と言ってからそれをサイドテーブルに避難させた。
 じゃ、気を取り直して……と、次に手を伸ばしたのは小さな袋。小包サイズっていうのかな、抱えて運べそうな、でもポスト投函するのは駄目そうな、そういう中途半端なサイズだ。
「これは今開けても大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ」
 俺はドキドキしながら梱包を解く。袋の紐を解き、中を覗き込むと箱が入っている。はやる気持ちを抑え、テープで包装紙がビリビリにならないように気を付けながら、丁寧に剥いていく。包装紙の中は、これまた全く中身を想像させない箱が入っていた。
 めっちゃ焦らすじゃん!? 俺がドキドキしながら箱の蓋をいじっていると、マリーが変に声をかけてくる。
「榛、あまり嬉しくないの?」
「へ?」
 頭を上げれば、心持ち不安そうに俺の事を見つめる彼がいた。その理由は分からないけど、多分俺とマリーは誤解してる気がする。
「嬉しいけど、何で?」
「だって、プレゼントをバリバリって破ってくれないんだもの」
「え? 破く!?」
 破くってなんだ。どうしてプレゼントを破くんだ? 俺はちょっと混乱しながらマリーに聞き返す。
「プレゼント、少しでも綺麗な状態にしておけるように丁寧に開けてるんだけど、それって駄目な事なの?」
「丁寧に……?」
 やっぱり何かおかしい。俺は首を傾げた。
「マリー、日本では頂き物は梱包から丁寧に扱うんだけど」
「あら。嫌だわ。あたし、てっきりばりっと梱包を剥ぐものだと思ってたわ」
「それってどこの文化だよ」
 生粋の日本人である俺からすると、すごく失礼な気がするんだけど。俺はマリーが見た目通り、外国人だったんだよな、と改めて文化の違いを感じながらプレゼントの蓋を開けた。
「えっ、ええ!?」
 中身はなんと、お財布とパスケースだった。え。いや、ちょっとナニコレ。見るからにすごく高そうなそれに顔を近づけ、恐る恐る観察する。
 どこのブランドなのか、またブランド品なのかも分からない財布。とりあえず、革でできているものだっていう事は分かる。多分、マリーが用意するものだから、きっと本革ってやつだろう。
 え、申し訳ないけどプレゼントされる理由とか全然分からなくて怖い。
「どうして?」
「どうしてって……必要でしょ?」
「いや、これ値段高そうだよ」
「あら、あんたは高級キャストなのよ。これくらい持っていないと、お客様にお財布を見られた時にまずいわよ」
 ……あ、そっち。って事は、これはプレゼントはプレゼントでも、必要経費的なプレゼント……。何かちょっと、色々と何か……疲れた。
「えっと、ありがとう」
「……どういたしまして」
 俺が複雑な気持ちでお礼を口にしたのが伝わっているんだろう。彼はむすっとした表情で返事をしてきた。いや、これ、他のプレゼント開きたくないぞ。
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魚野れん
2,000字突破したので締めます。
32:41
魚野れん
監視ありがとうございました!
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向き
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本日21時更新分 駆け込みます!(小悪魔)
初公開日: 2025年01月03日
最終更新日: 2025年01月03日
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「天使のような弟の為、小悪魔になります(R18)」の本日更新分ですが、年齢制限のない内容の為「R15」で配信しています。
2,000字になったら終了します。
※一応セーフティつけときます