「ふーっ・・・。つっっっっっかれたー!」
人気の一切ない野原のど真ん中で、宝太郎が叫ぶ。その勢いのままごろりと寝転んで、戦いに昂った身体を脱力させた。再度大きめに深呼吸をして、沈みかけの夕日が美しいオレンジの空を見上げる。
遥か過去の世界で冥黒王との戦いに赴いて数日。毎日のように戦い続けていると当然の如く激しい疲労で身体が悲鳴を上げていた。過去との自分の邂逅のお陰か精神のアドレナリンはフルスロットルだが、40を目前にした身体の方が付いてこない。
「年なんて取りたくないよ・・・なーホッパー1」
「ホパ?」
同意を求める宝太郎の言葉に、ホッパー1は身体ごと首を傾げる。彼等は人造生命だからか、年齢という概念がない。その事をうっかり忘れてしまう程には、彼等とコミュニケーションを取っていなかった事に気付く。
「はは、皆ともまた1から友達にならないとな」
「ホパ!ホパホ!」
宝太郎の言葉を全力で否定するように、ホッパー1が叫ぶ。もうとっくの昔から友達じゃないか。そう言われたようだ、と理解した宝太郎がふにゃりと笑みを零した。
「そうだった。皆、オレの事信じてくれてたんだもんな。りんねも」
ザ・サンのカードを手に取り、夕日に翳す。オレンジの光に当てられたそれは美しく輝いて、また懐かしい大切な彼女の声が宝太郎に届いた。
『そうだよ。これから先どんな事があったって、ケミーは皆宝太郎の友達で、皆宝太郎を信じてる。それは変わらないから』
「そっか。ありがとな、りんね」
宝太郎は半身を起こし、もう半分ほど地平線に隠れていた夕日に視線を向けた。戦いの疲れを癒すように呆ける事数分。ふと、こんな考えが浮かんだ。
「なあ、りんね」
『何?』
「オレはこのまんま年取っていってさ、どんどん戦えなくなっていってさ。んで最後には、皆を置いて死ぬでしょ」
『・・・そうだね』
「そしたら、もう皆と戦えないなって」
こんな弱気な考えが出たのは久々だった。だが改めてケミーと向き合い始めた今だからこそ、どうしても避けて通れない道でもあった。ケミーも人間も変わらない命だけど、犬が人より先に死んでいくように、木が亀より長生きするように、人間とケミーは同じ時を生きられない。
りんねは今、ザ・サンと共生する形で存在している。それは彼女がケミーになっているのと同義でもある。つまり、彼女を置いて行くのは人間である自分だ。あの時の自分が味わった苦しみを、どんな形であっても彼女に味あわせなければならない。それも勿論嫌だが、何よりも彼女がこうまでして自分の傍に居てくれたのに、自分はその彼女から離れていくのがもっと嫌だった。
「オレもいっそケミーになればいいのかなー。おじいちゃんになって死ぬくらいにさ」
『やめてよ、ヨボヨボボケボケの宝太郎のケミーなんて見てるだけで心配になる』
「それもそっか」
冗談めかして言った言葉は半分くらい本気だったものの、りんねの返事を受けて宝太郎は即刻諦めた。何となくではあったが、彼女は宝太郎に自分と同じような事になって欲しくないと思っているのだと感じていた。それは決して自分の立場を悲観してではなく、ただ宝太郎にありのまま生きて死んで欲しいというありふれた願いからだ。
「んじゃあ仮にだけどさ、オレがもうヨボヨボのおじいちゃんになって戦えなくなったとするじゃん?そうしたらりんねはどうする?」
『宝太郎が次にガッチャードの変身者に選んだ人と一緒に戦う』
「あはは、りんねらしいや」
『多分、他の皆もそこは一緒だと思うけど?』
「ホパ!」
りんねの言葉にホッパー1が同意するように声を上げる。それを皮切りに、他のケミー達も一斉に賛同を示し始めた。まあ妥当な答えだとは思っている。冥黒王との戦いが終わり、世界に平和が訪れたとて、ケミー達の守り手としてのライダーは絶対必要になる。それに自分がなれないとしたら、次世代に継ぐしかない。少し寂しいけれども。
『宝太郎、何か勘違いしてない?』
「へ?」
『私達、宝太郎の代わりの変身者が欲しいんじゃないの。宝太郎の夢を繋いで、人とケミーが暮らせる世界を守ってくれる人と巡り会いたいの。そうしたら宝太郎がいなくなっても、私達は宝太郎の想いと一緒に戦えるから』
「オレの、想い・・・?」
ホッパー1が深く頷く。ケミー達もりんねと同じ思いだというのが、彼等の眼差しから伝わってくる。人の命はいつか尽きてしまう。だから、次世代に継がなければならないという運命は変えられない。でも、夢は繋いでいく事ができる。例えその人がいなくなっても、誰かが同じ夢を見て走り続ける限り、永遠に。
『だから、宝太郎がありのままでいる事を悪いなんて思わないで。宝太郎がいなくなった時の私達は間違いなく平気なんかじゃいられないけど、それでも笑って生きていくから。宝太郎の夢を抱いて』
「・・・そっか。ありがとう」
胸の辺りが、戦闘による昂ぶりとは違う温もりで満たされていくのを感じた。自分はりんねを――皆を置いて行く。それでも、それだけじゃない。それだけじゃなくしてくれる。その事が本当に嬉しかった。
宝太郎がすっくと立ちあがる。いつの間にか疲労は殆ど無くなっていた。内から活力が溢れて止まらない。今なら何だって出来そうな気がした。自らの過去を振り切り、この時代へやって来た時と同じ高揚感があった。
「まあでも、オレ死ぬまでライダーやるつもりだし!次にやるって人が絶対敵わないわってくらい、最強のライダーになる!」
『ふふっ、宝太郎らしい。でも、あんまり無理しないでね』
「ホパホ!」
「よし!まずは冥黒王を倒して、この時代の平和をガッチャだ~!」
別に敵がいる訳でも何でもなかったが、野原を全速力でダッシュする。その後ろを赤いホッパー1が心底楽しそうに飛んでついてきた。あーもう、早速無理してるとりんねは呆れつつも、在りし日の彼の笑顔を思い出して一人微笑んだ。
とりま一旦終わりです!
買い物と夕ご飯終わり次第もう一回やる・・・かも?
一先ずこいつシブに上げて来まーす。