⚠🌈🕒 𝐕𝚫𝐋𝐙(+微rf) 記憶喪失⚠
相互さんの元ネタ
元作品
相互さんのお話より着想を得て書かせていただいた3次創作になります。元ネタ・ご本人の二次創作を読んだ上でお読みください。
目を覚ますと心配そうに僕の顔をのぞき込む藤士郎と目が合った。僕はただ睡眠を謳歌していただけで、あれ?
「おはよう晴くん、調子はどう?」
「調子はどうって、至って普通だよ、まだちょっと眠いけど。」
「良かった、景くんもいるから着替えてきてね」
「えー、藤士郎このままじゃダメ?」
「…ダメだよ、ほら、僕行くから」
「んあーい」
なんだか長いこと寝ていた気がする。研究に明け暮れていたからその反動かな。体のあちこちの筋肉が動きづらくなってるし、久々の睡眠に身体の機能が鈍ったんだろう。……あれ、藤士郎に怒られるんじゃ?
「いっけない、早く着替えてかなきゃ…!」
===
「んおーハルぅ、おはよー」
「おはよう景……その服、新しいやつじゃん」
「…まぁな」
2人がいるであろう部屋には景だけがいて、軽く会話をして隣に座る。会話の途中からなんだか小難しい顔をし始めたもんだから心配になってしまう。
「そういえば藤士郎は?」
「あー、メシ取ってくるとか何とかって言ってたぞ」
「え、食材あったっけ、てか調理器具まともなものないんだけど」
「あ、よかった晴くん着替えてきたんだ」
お盆に料理を乗せた藤士郎。見慣れない皿に見慣れない箸、家になかったであろう食材を見るに、2人がそれぞれ家から持ってきてくれたのかな。研究ひと段落ついて長時間眠ることなんて今までも沢山あったのに、不思議だなぁ。
「ほら、食べちゃってね晴くん、食べれる分だけでいいから。」
「さすがの僕でもこれくらいは食べれるって」
そんな、いつも通り…のようでどこか腫れ物に触るような、こちらを気にした様子の2人に心の中で首を傾げる。ここ数日合わなかっただけで、……数日?
「そういえばふたりが揃って、しかも僕の多忙明けに顔見せに来るの珍しいじゃん。何かあったの?」
「んや?何も無いけど」
「まぁ、あんだけ眠ったままで居られたら少しは心配になるよ?」
「え、僕そんなに寝てたの?」
「もう今後寝なくていいレベルだな、あれは。」
気絶したように眠りについたと思ったら、いつもより長めの睡眠になってしまっていたらしい。まぁ、体が思ったように動かないのと少し喉に違和感があること以外どうってことないんだけど。
「あ、そういえば晴くんの部屋にあった鏡、」
「かがみ、?」
「えっ?」
聞き馴染みのある単語に咄嗟に反応してしまった。……鏡、だよね。
「ごめんごめん、僕の部屋の鏡がどうかしたの?」
そう言った瞬間、2人の顔色が焦りと戸惑いを含んだものになって。言ってはいけなかったのかもしれない、なんて感情が渦巻き始める。
「なん、か、言っちゃいけないこと言ったかな、ごめん、」
「いや、晴くんは悪くないよ、」
「そうそう。んな事より早くメシ食え食え!」
「ちょ、僕のとこにトマト持ってこないでって!」
===
「それじゃ帰るね〜、あんま無理しすぎないこと、分かった?」
「はぁい」
「明日も来るからな!」
「いや、景忙しいでしょ、大丈夫だって!」
「おぉん?」
「アッいや、ちゃんと睡眠食事取るので職務に当たってください長尾サン」
そんなこんなで2人が帰っていく。さっきまでの多少の賑やかさと違って今は1人だ、自分が寝てた間出来なかったことでもやろうかな。
「…まずは部屋の掃除かな。」
これでも桜魔では地位のある研究者なのだ、屋敷の部屋数も多い上1つあたりの部屋が広い。掃除は大変だが…使っていない部屋は後回しにしてしまおう。
「…あれ、なんだろうこれ」
棚の奥からでてきた紫色の本。表紙に書かれた文字は読めないし、中を開いてみても見知った文字なんてなくて。でも、真ん中に鎮座する逆三角形…小さく分けられ紫色、水色、桃色、紺色に彩られたそれに、あるはずもない既視感を覚える。
「読めないし読んだことも無いはずだけど…言語の研究として置いておくのもアリかな。」
いらないものを捨て、収納の配置を変えたりしながら自分好みになるように整理していく。納得がいった所でここはひとつ──
「昼ごはん、何か食べるか……」
もちろん食べなかったところで死にはしないのだが、あとから藤士郎に何を言われるか分からないからね。あと、軽く体を動かさないと。まだ動きづらいからね。
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食材を求めて店へと足を運ぶ。道中出会った顔見知りからは「良かった、目を覚ましたんだね」「このまま目を覚まさなかったらどうしようかと」なんて声をかけられて、何も分からないまま曖昧に受け流す。
「おぉ、甲斐田のアニキじゃあねぇか!」
「えっ、アニ、」
「ようやっと目ェ覚ましたのか!!みんな心配してたんだぞ?」
「え、あぁ、なんかすいません」
「いやァそんなこたぁいいんだよ、お目覚め祝してほれ、持ってけ持ってけ!」
「えっおじさん!?」
半ば押し付けられるようにして渡された袋いっぱいの野菜。色々な人に声をかけられ、久々の運動に体が悲鳴をあげ始めたところだ。このまま帰ろう。
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空腹を満たし自室の鏡の前に立つ。藤士郎と景の反応がやっぱり気になって仕方がないから。寝ている間に何かあったんだろう、そう思って詮索せずにいようとも思ったのだが…何も知らないはずの心が漣を立て、知らないことへの恐怖を訴えてくるのだ。分からないことよりも分かってしまったことの方が苦しいのは、よく理解しているつもりなのに。……これは、誰かに向けて言ったことがあったのだろうか。
そっと鏡に手を触れる。日の当たらない位置に移動したからか、やはり冷たい。……冷たい、はずなのだが。
「目は心の鏡、か。」
鏡に映る僕はいつも通りの表情をしているはずなのに、瞳にはどことなく、何かが欠けているかのような色を宿している。目を覚ましてから気にしないようにしていた喪失感が、心の奥底で大きな音を立てた。これは、なんだろう。
「我々は、元は何も持っていなかったんだ」
誰かが囁いた。
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誰に聞くこともないこの感情を、いつまでも引きずっていてはしょうがない。分からないことはしょうがない、大丈夫、いつか、その時がきたら分かるはずだから。
「ま、いっか」