⚠🌈🕒 体調不良 idとmcの絡み多⚠
上記通り、体調不良のid。
ただの風邪です そんな重いもの患ってるわけじゃないから雰囲気でよんで頂けると…
 朝、目覚めと共に感じる倦怠感。頭の鈍い痛み。目の疲れ。声を出そうとすると喉から聞こえる空気が流れる音。これは……
(風邪、か……)
 冬によく耳にする風邪。乾燥や寒さによる免疫力の低下から起こるこれは、夏とは無縁だと思っていた。年末からずっとライブのことだったりレコーディングなんかもあったから行動は多かったはず。とまで考えて思いつく。急に動き始めたくせにひと段落ついたから耐えきれなくなった免疫が今症状となったのでは? と。
 よりにもよって今日はろふまお塾の撮影日。せめて明日風邪になれば…なんて考えても遅い。この状態で行ったとてして何も出来ず帰され、迷惑をかけるのがオチ。最悪弦月や長尾を呼ばれるかもしれないな。それだけは困る。
『すいません、体調を崩してしまって…』
 とりあえずマネージャーに連絡を入れて1度思考を手放す。にじフェスが終わって全部のしかかってきたのかな。今日一日動けないじゃないか。六本撮りが基本だというのに次の撮影にまで迷惑をかけてしまうな。
 そんなことを考えていると返信通知が。スマホを開き通知を確認すると送り主はマネージャーではなく社長だと気付く。何かあったか?と思ってトーク画面を見ると、
『体調は大丈夫ですか? お大事にしてくださいね』
 知るはずもない僕の体調を心配する文言に目を見張る。ろふまおのグループチャットに動きがないのを見て更に困惑。どこから漏れたんだこの情報。マネと個人チャットが繋がってるとか?……んなわけないか。
 うだうだと思考をめぐらせていると更に通知が。『どした〜?』『家に薬あります?』など、いつものような軽口とは少し違った温度感に心が暖かくなる。彼らは先輩だから自分は何かとイジられることも多いが、ちゃんと心配する心があったんだな、なんて。本人に言ったら怒られそうなことを考えてしまった。
『撮影延期になっちゃってすいません』
『家に食いもんある? 持ってくか?』
『気にしないでくださいね』
『寝れば治るとか言ってたら相当長引くからね甲斐田くん』
 家に食べ物、あったかな。なんて考えながらキッチンに向かう。案の定何も入っていない冷蔵庫、戸棚にあるのは食べたら怒られるであろうカップ麺たち。ゼリーの類を常温で置いてなかったか、とも思ったがそんなことはなく。ウィダインゼリーかなんか、爆速で届けてくれる配達系あったっけ。
『あ、チャイム鳴らしたら家の鍵開けろよ〜』
『えっアニキ?!』
『ふわっち早くない?』
 もう一度スマホが鳴ったと思えばアニキからで、色々端折った文を見るにこちらに向かっているらしい。あと僕の勘でしかないが、もちさんも来る。多分。
  ◇◆◇◆◇
 そうこうしているうちにチャイムが。恐る恐る見てみると先程連絡が途絶えていた社長が居て驚く。仕事で忙しくて返信しなかったんじゃ? と考えていたのだが、通知に埋もれていた『もうすぐ着きます』の文面を見て「仕事は?!」と思うと同時に少し申し訳なくなる。すぐさまロックを外しドアを開けるがもうそこに彼はいなくて。扉の横に置かれていた袋の中にはゼリーやお粥、うどんなどに加え冷えピタなんかも入っていて「やっぱりカッコイイ大人なんだよな……」なんて呟く。個人LINEには仕事が少し立て込んでいる旨が追加で送られていて、申し訳なさそうな文面に僕の方が申し訳なくなってしまう。忙しいと言いつつこうやって家まで来てくれる彼の、追いかけても追いつけない背中に感服する。
 社長にいただいたものを1度冷蔵庫に入れ、冷えピタなどを袋から出し机に並べているとまたもチャイムが。
「はーい、って、ふたりとも?」
「よぉ晴ぅ、大丈夫かぁ?」
「あー、……一応? 動けはするので大丈夫だとは思うんですけどなにぶん喉の調子が……」
「一応、のど飴だったりはちみつ系のものだったりを色々買ってきてるから。あと、カップ麺食べようとだけはしないでね。」
「アッ、ハイ」
 先程社長からいただいたお粥やうどんがあるとはいえ、お湯を入れるだけで完成するカップ麺には敵わない。温度をさげ、粉末スープの量を少し減らせばいいかな、明日くらいに回復していればうどんを使わせてもらおう、と思っていたのだが。見透かされているようで冷や汗がながれる。
「甲斐田ァ、家上がってもいい?」
「あっ、風邪移すかもなんで、」
「大丈夫やろ、俺あんま風邪ひかへんし」
「マスクしてれば防げるものもありますし、なんなら病人で、しかも青い顔してて今にもパタリといきそうな人に自分で調理しろ、なんて言いませんよ僕らも。」
「そうですよねぇ……」
 その後は特に抵抗することも無く2人を招き入れる。直前に社長が来たという話をすると「忙しいからなぁ」「社長も社長で無理しすぎなんですけどね。」なんて零すふたり。僕の体調が治ったら三人で社長の家に突撃でもしてみるか。
 そうこう考えているうちに寝室に押し込まれる。冷えピタと程よく冷えたペットボトルの水を持たせられ、たった今扉を締められた。寝ろってことなのだろうか?
「……寝れるわけ、ないんだよなぁ……」
 特段眠い訳でも無く、体がだるかったり喉に異常が見られるだけで頭は冴えたまま。このまま何もしていないのは埒が明かない。そう思い寝る前のルーティーンのようにSNSを開きエゴサを始める。昨日の配信への感想や未だ絶えず投稿される歌への感想、イラストたち。それらを軽く眺めていると次第に頭に靄がかかり……
  ◇◆◇◆◇
「……だくん、甲斐田くん」
 軽く肩を揺らされながら呼ばれる声に意識が浮上する。まだぼやけたままの視界に映る深紫に、無意識のうちに手を伸ばした。手首を軽く捕まれ、また声をかけられる。
「甲斐田くん、大丈夫? 凄いうなされてたけど……」
 眠っていた間に見たものは何も記憶になく、目が覚めた瞬間から感じるどこか不安定な心持ちはうなされていたことが原因らしい。返事をしようと口を開くも、数時間使われていなかった喉は思っていたよりも乾燥し、朝以上に音の響く気配がしない。話したいのに音を紡げないもどかしさに口をはくはくとさせていると、「一旦水を飲んでください」とペットボトルを渡されながら体を起こされた。部屋に押し込まれた時に見た部屋の明るさとは違って赤みを帯びた光に少し驚くと共に、彼らが家に来てくれてからの時間の経過を意識してしまう。案の定予定のあったらしい不破さんは既に帰っていったらしく、何があるかわからないからもちさんだけが残っていたのだそう。
 自分のせいで彼らの時間を奪ってしまったな、頭が上がらない。なんて考えながらまだ冷たい水を胃に流し込む。軽く喉を鳴らしながら水分を体に染み込ませていると、頭上から「…あ、そろそろ時間が」と声が。さすがにこれ以上高校生を、しかも明日は平日故に学校があるであろう彼をここに縛り付けてはおけない。玄関まで見送ろうとベッドから降りようとした瞬間、軽く肩を押され「安静にしていてください」と一言。
「もちさん、ありがとうございます」
「今日が会議だったら絶対出席してたでしょ。」
「うぐっ、返す言葉もありません……」
「ほらほら、病人は寝ててください。早く治してもらわないと困るんですからね。」
「……今日の借りはちゃんと返すので、」
「はいはいわかったわかった。じゃあ帰りますね、お大事に。」
 ……そう言いながら去っていった先輩の背中に追いつける日は、いつになったら来るのだろうか。
カット