それまで自分を襲っていた苦しみが、不意にふっと消えた。ああ、終わったんだ。自分は助かったんだ。助けて貰ったんだ。ホッパー1の動かない目が上を見上げる。
――どうして。
どうして泣いているんだろう。自分は大丈夫だというのに。もう元の通りだし、人を襲ったり、宝太郎を傷つけたりなんてしないのに。それなのに、どうしてそんな悲しそうな顔をするのだろう。動かない頭が疑問に傾く。
そうだ、花。花を持って来たんだった。これを使った料理を食べれば、誰だって笑顔になる。宝太郎だってきっと笑顔になってくれる筈だ。後ろ足で飛び上がる。いつも通り肩の上を目指して。——あれ。あれあれあれ。
足が動かない。あれ、身体も。あれあれ、さっきから頭も目も動いていないぞ。あれ・・・?
ぱさりと花が目の前に落ちた。宝太郎の手から零れていた。途端響き渡る慟哭。絶望の叫び。
大丈夫だよ。そう言っている筈なのに声が出ない。自分は平気だよ。平気だって!叫び声が白く塗りつぶされていく。届かない。宝太郎の姿が消える。
「ホッパー1・・・」
りんねの声がした、気がする。何だか眠くなってきた。声が上手く聞こえない。辛うじて理解できたのは、敵がもういない事だけだ。りんねはふらふらとホッパー1に歩み寄って、白くなった体を抱きかかえた。それも、ホッパー1自身には把握できない。
ふと、りんねがホッパー1の傍に転がっていた花に気付く。黄色い小さな花。絵本に書いてある黄金の花とそっくりな、ユリオプスデージー。震える手で、それをつまみ上げた。
「宝太郎の為に・・・これを・・・」
その事を理解するのと、宝太郎の絶望に気付くのは同時だった。自分が突っぱねてしまったばっかりに。そんな自分を慰めようとしてこんな事に。——自分のせいで。
あの瞬間、どれ程の罪悪と後悔を宝太郎が襲ったのか、りんねには想像する事しか出来ない。それは彼が抱くホッパー1への愛情と、その厚意に対する感謝の分だけ、彼を苦しめただろうから。
「ホッパー1・・・!」
無機質な身体を強く抱きしめる。常は嬉しそうに、煩いくらい上げる声も一切しない。今のホッパー1は唯の物体であった。それ以上でもそれ以下でもない。
「ホッパー1・・・私達は貴方を助けられないかもしれない・・・でも」
ぐしり、とりんねが乱暴に涙を拭う。悲しみは癒えない。それでもこれ以上、今ある大切なものまで奪われてたまるものか。
「先生!先輩!早く宝太郎を探しに行きましょう!」
「勿論だ」
「スパナ先輩は一回戻って下さい。この子と一緒に」
「・・・仕方ないな」
負傷が酷い事を自覚しているのか、スパナが珍しく素直に従い、ホッパー1を受け取った。ヴァルバラッシャーを杖に、軋む身体を引きずりながら学園へ戻っていくのを見届けてから、りんねはミナト達とバラバラの方へ駆け出した。
――りんね達にホッパー1を救う事は恐らくできない。錬金術師としても、仮面ライダーとしても無力な自分を責めたい気持ちをぐっと堪えて、走る。彼の大事な友達を救う為。最期まで戦い続けた彼の想いに、報いる為に。
手折られし愛に祝福を
短いけど一旦終わります!後程やるってなったらもっかい来る・・・かも?
では一旦サラバ!