しんしんと降り続ける雪。煌々と輝く煌びやかなライトの数々。子供達の笑い声、微笑ましそうにそれを見守る大人達。ここは永遠のホワイトクリスマスが約束された地。その名も、クリスマスワールド。
無数のサンタが季節問わず動き回るこの町に、今日新しく7人のサンタが舞い降りた。サンタ達はプレゼントが大量に入った重い袋を軽々——ではなかったが背負い、その重さを感じさせない程元気に動き回っている。——ただ1人を除いて。
「——んで・・・」
その異様に元気のない一人が、ぽつりと呟いた。傍らの丸っこいロボットが自分よりもずっと上にある彼女の頭を見上げる。
「どうしたボン、美羽?」
「何で・・・こういう事になってる訳!?」
美羽のある意味悲痛な叫び声に、間近にいたボンパーが驚いて飛び上がった。比較的近い所にいた早輝と大翔が何だ何だとこちらに寄って来る。二人共心配そうな表情をしていたが、御立腹の美羽にはその態度すら少々腹立たしいようだ。
「アニも早輝も!何でノリノリでやってるのよこの仕事!」
「な、何でって・・・」
早輝と大翔が顔を見合わせる。そんな事今更聞かれても、という顔だ。自分でも答えが分かってしまうから、余計にむかつく。この後の台詞だって手に取るようにわかるのだ。むかつく事に。
「走輔がそう言ったからって言うんでしょ!?」
そもそも、何故彼等がサンタの格好をしているのか。簡単に言うとその理由がこれなのだ。走輔の鶴の一声で、こう言う事になってしまったのだ。
彼等はガイアークの残党を追い、このクリスマスワールドにやってきていた。そして実際にここでその内の一体と対峙し倒した。そこまでは良かったのだ。
問題は、この戦闘でサンタの何人かが怪我をしてしまった事だ。幸いサンタ達の怪我は大したものではなかったが、少なくとも今日は仕事が出来そうにない。勿論走輔達はその原因となる行動は神に誓って絶対にしていないが、それと責任を感じるかどうかは話が別だ。そこで走輔が提案したのが、サンタ達の仕事を代わりにやる事だった。
これにゴーオンジャーの4人が全員乗ってしまった。特に正義感の強い軍平はノリノリのノリ。さっきから全力でサンタを遂行している。その熱意が子供達を怖がらせるという形で空回っているのを指摘されないのは、優しさ故だろうか。
「軍平、さっきから怖がられてるよ。その暑苦しさ抑えた方がいいんじゃない?」
訂正、そう言うの多分範人にはない。まあ正直軍平が空回りしてようが美羽にはどうでもよくはあるので、一旦彼の事は捨て置く。——何だか「心外!」と言いたげな顔でこっちを見ている気がするが捨て置く。ハイ決定。
兎も角、過半数がやるとなってしまえば必然的に二人も付き合うしかない。民主主義なぞこの戦隊の強引さの前には無力である。早く次のガイアークを倒しに行きたい美羽にとっては不服の極みだ。それなのに嫌々ながら参加してしまう自分にもむかつく。
「まあ、そうせっかちになるな」
最近美羽に頭が上がらない事が増えた気がする大翔が、妹を窘めるように口を開いた。まだまだお兄ちゃんかっこいい尊敬してる期のブラコン美羽は、唇を尖らせつつも黙る。賛成はしていなかった大翔はしかし異論がある訳でもなかったらしく、他のメンバー同様いそいそとプレゼントを配っている。
「お前だって、この世界の困っている人間を放っておきたい訳じゃないんだろう?」
「それは・・・」
「そう何度もしない寄り道だ。あいつくらいまでとは言わないが、少し楽しんでみるのも悪くないんじゃないか?」
言いながら、大翔は促すように走輔の方へ視線を向けた。美羽もそれに倣う。視線の先には子供に柔らかな笑みを浮かべてプレゼントを渡す走輔。いつの間に、彼はああいう大人びた表情と生来の子供っぽさを同居させられるようになったんだろうか。
走輔はこの仕事をしてからずっと楽しそうだ。発案したんだから一番頑張らなきゃ、などと背負いこむ事も無く、しかし一番頑張っていて、その上で一番楽しそうなのだ。ずっと笑顔だし、ずっとテンションが高いし、ずっと元気。
走輔には裏表がない。だから今も本気でこの状況をエンジョイしている。そして周りにもよい影響を与えているのだ。本当に狡いと思う。美羽はぐぬぬと下唇を噛んだ。
「もう、わかったわよ!今日の所はもう諦めるから、さっさと終わらせましょ」
半分キレつつも、美羽は足元の袋を持ち上げて子供達の方へと駆けて行った。やる気が無かった割に袋が軽そうだったのに突っ込まないのは優しさである。——こればっかりは範人も持ち合わせておいて欲しいが、どうだろうか。
「あいつは」
大翔が少し寂しそうに呟く。自分達と旅する時間が増えて、美羽が走輔にだけああいう態度をとる、というのにも何度か遭遇してきた。だから何となく、そして認めたくないけれども、彼女が仲間へ向ける感情にも理解が追い付いてきて。
「自分だけが走輔の手のひらで転がされているようで、面白くないんだろうな。俺達がそうである事もだが」
「別に転がされてる訳じゃない・・・というか走輔にそんな器用な事出来ないって、わかっているとは思うんだけどね」
そしてそれは早輝も同様だった。あの時は美羽が見せた動揺の意味を悟れなかったが、今では理解できる分応援したいという気持ちがある。鈍感野郎の走輔を蹴り飛ばしたいくらいには。頑なに認めようとしない美羽も悪いので、しないけど。
「ただまあ、美羽も私達も走輔に何だかんだ甘いっていうか、余程変な事じゃなきゃ受け入れちゃうっていうか・・・。何か、そういうのを許されるオーラみたいなの、走輔にはあるから」
「まあ・・・そうだな」
「大翔、走輔の事気に食わない?」
早輝の問いに大翔は躊躇わず頭を振った。出会ったばかりならすぐ頷いた所だが、今となっては素直に認めていると言えるくらいは走輔の事を認めている。その位認めてしまっているから、一番認めたくない妹の恋の相手である事を複雑に思うのだが。
二人の視線の先で、走輔と美羽とが合流する。声は聞こえないが、何か言い争っているらしい。美羽が一方的に吹っ掛けた喧嘩を、走輔が真正面から受けて立っているだけなのだろうけど。大翔は大きく溜息をついた。
「恋っていうのは、人を面倒くさくするもんだな・・・」
「あはは。別にいいじゃん。美羽、可愛いでしょ?」
早輝の返しに大翔は少し驚いたような顔をした。しかしすぐふっと笑みを浮かべ、当然だと返す。自分の自慢の妹なのだから。——その可愛らしさを引き出すのが走輔だというのが気に食わないけれど。
――なんだ、自分も結局妹と同じではないか。恋は人を面倒くさくする。その当人が恋をしていなくても、周りの人間も面倒くさくなってしまうのだ。
「さて、せっかちなアイツの為にもさっさと終わらせてやるか」
「そうだね。でも二人の喧嘩先に止めないと」
「放っておいてもいいんじゃないか?」
「そうもいかないでしょ。ほら、早く行くよ」
未だ喧嘩し続けている二人の所へ、大分軽くなった袋を背負い駆けていく。人を恋心に狂わせるホワイトクリスマスの魔法。それがいつか二人を包む日は来るのか。それは神様だけが知っている。
一先ず書けるところは書いたので配信終わります。
ブツブツになっちゃって申し訳ございません。
こちらの作品は後程支部に投稿いたします。
また余裕があればこの後も執筆配信やるかもしれません。
その時は宜しくお願い致します。
それでは。