駅のホームでバスティンを見かけた。電車待ちの最前列に並んでいる。頭がユラユラ揺れているように見えるのは気のせいじゃない。あいつは居眠りグセを持っていて、いつどこでも寝てしまうんだ。
「おい、バスティンここで寝たらあぶねーぞ」
あいつの肩を揺すって起こす。すると、剣道部のあいつはすぐに構えてくる。
「敵かっ?」
「いや、敵かっ? じゃねーよ! お前寝てて危なかったから起こしたんだよ!💢」
「…俺はまた寝ていたのか……」
「なぁ、お前寝落ちると危ないから電車待ってる間ベンチに座ってろよ」
「……座ったら、確実に寝てしまって遅刻するから座らない……」
まだ眠たげに瞼が重そうなバスティンが答える。声も、もつれもつれで重低音だった。
ぽやぽやという擬音がつきそうなほどトロンとした瞳を向けられてロノは思う。
(〜〜〜; はぁ…。これだからコイツは放っとけねぇ)
ロノはいつもバスティンを見ている。目を離すとバスティンはどこで寝落ちるかわからない。しかし、それはロノの最近の楽しみにもなっていた。
「英語の宿題やったかぁ?」
「………宿題なんてなかっ…」
「いやあったよ! お前やってねぇな!?」
仕方ないので、到着した電車に乗っている間英語のプリントを出して出来るところまでやらせようとした。
「この助詞が…」
「………」
「おい聞いてるか、バス…」
「すぅ…すぅ…」
立ったまま寝てやがる。
「……お〜い、バスティン…」
「……んぅ…」
ロノがゆるく肩をゆすってやると、まだ眠いとばかりにむにゃむにゃ言いながらいやいやと首を振るバスティン。そのまま眺めていると、すぅと寝入ってしまう。
(ったく立ったまま寝入りやがった…)
その時、電車の車体が大きく揺れた。寝入ってしまったバスティンの身体がぐらりとバランスを崩し、後ろに傾いて倒れそうになるのをロノの腕が咄嗟に受け止めた。
「……っと、あっぶね…」
すると、それを見守っていた周りの人たちにおおと歓声を上げて手を叩かれた。
今の2人の格好は、まるで倒れそうな彼女を受け止めた彼氏の図だ。バスティンはそんな状況でも腹が立つほどすやすや寝入っている。ロノの顔が一瞬で朱に染まる。
「お、おい、バスティン起きろよ! 注目されてんぞ!;」
ロノがバスティンの上半身を揺するので、バスティンはうっすら目を開けた。しかし、ロノを認めた途端迷惑そうな表情になり、何度寝かわからないがまた寝始めた。
「…ったく〜…///」
恥ずかしさが頂点に達したロノだが、バスティンが起きないので仕方ない。気持ち良さげに眠るバスティンを降りる駅まで抱えていた。
「よっと…」
降りる駅になり、とりあえずベンチにバスティンを座らせる。しかし、支えがなくなると倒れ込みそうになる。
(あの状況で熟睡かよ;)
横に傾くバスティンの上半身を支える。
「おい、バスティン! おーきーろ!💢」
「……んぅ…」
むにゃむにゃ言うだけでまったく起きる気配がない。
「ったく…」
呆れたようにため息をつき、再びバスティンを今度は肩に抱える。カバンのように片側にぶら下げた。ロノの歩に合わせて布団干し型にぶら下げられたバスティンの身体が揺れる。
バスティンを担いだまま学校に到着する。
学校の下駄箱まで歩いていると、用務員のおっちゃんに会った。彼は、よく校舎内外の掃除をしているのだが、バスティンが廊下の隅や木の下などで座り込んで寝ているところをもう何度も見かけている。
「ケリーくん、また寝てるんだね。フォンティーヌくんはいつもご苦労様」
温厚そうな熟年の男性だ。
「あ、いや、いつもコイツがすんません;」
「ボクは構わないけど…ケリーくんはどこでも寝てしまうみたいだから、フォンティーヌくん、気をつけてあげてね」
「あ、はい!」
この用務員のおっちゃんは、バスティンが寝こけていても怒らないから好きだ、とロノはいつも思う。
バスティンの席の椅子にくったり寝ているバスティンを降ろす。すると、彼はゆっくりと瞼を開いた。自然とあくびが出た。自分の身の周りをキョロキョロと見て不思議そうな表情で目を擦る。
「はぁ〜、朝から疲れたぜ…ってバスティン! 起きたのかよ💢 もっと早く起きろよな…!」
バスティンの隣の自分の席に腰掛けたロノが、隣で身じろきしたバスティンに向かって怒鳴る。
「いつの間にか着いてる…」
「オレが運んだんだよ💢」
「ロノが…?」
起きたばかりでぽやぽやとしているバスティンに見つめられる。相変わらず整った顔だ。
「………すまなかった…」
またある時。移動教室にて。
教科書、筆記用具などの必要なものを持って歩いてる最中に猛烈な眠気に襲われる。頭がユラユラと揺れる。すると、バスティンは意図せずすーっと寝入ってしまった。歩いたまま寝てしまうと、足場の注意ができない。
「……! バカヤロウ、バスティン! 止まれ!!」
あと数歩進んでいればあやうく階段から落ちそうになるところでロノに呼び止められる。バスティンの腕を引っ張り、彼の身体をロノの方へ引き寄せて抱き留める。
「お前なぁ…あぶねぇから歩いてる時に眠くなったら一旦止まれっていつも言ってるだろ💢」
バスティンは眠くてぽやぽやした表情でロノを見る。ロノの説教を聞きながらそのまますーっと寝落ちてしまった。
「あっ…ったく…」
担いで移動教室まで向かう
体育組体操で、小柄なので先生は上にやりたいが、寝ると危ないので下で支える係。支えてる時に寝ても続けて支えたまま。でも、次のポーズに移れなくてロノに運ばれて保健室で休ませられる。
授業中に居眠りして、悪夢を見てむすっとして起きる。
「……っ…」
「バスティン、お前今、悪夢見てたろ?」
ロノに言い当てられてムッとする。