寮生活というものは不便なことがいくつかある。
その最たるものは消灯時間と同室者の存在であった。
高校3年を目の前にした天童覚と牛島若利は晴れて互いの好意を認識し合い、こっそりではあるが、恋人して人目をはばかりながら手を繋いだりキスをしたりと恋人らしい日々を過ごしていた。
そこで問題になるのが『寮生活(同室者あり)であること』であったのである。血気盛んなお年頃である高校3年生。部活に全力投球しようとも、それだけでは発散できない鬱憤というものがある物である。特に、恋人ができたとなればなおさらである。
「ルールを決めヨー?」
天童そう言ったのは、寮生活であり、同性であり、しかし、性欲もあまりある高校生だったからであるだろう。
「たまに同室者が合宿とか遠征で居ないときがあるでショ? そういうとき、かつ、エッチしたいとき。部屋のドアノブに白いタオルを掛けておく」
「なるほど」
どうにかこうにか初エッチにこぎつけた日の夜。天童が牛島にそう提案した。それを牛島は静かにふむ、と小さく頷く。想像以上に心地よかった初体験は、しかし、体力のある牛島でもそのくらいの動作しかできないほどに体力を使うものであった。
「もちろん、俺だって若利くんだってそういう気分じゃない時だってあると思うヨ? だから、もしタオルが引っかかってるのを見て、でも、気分じゃないときはスルーして良いことにしヨー? で、消灯までに相手が部屋に来なかったら『気分じゃなかったンだな?』って潔く諦めるコト」
そんな約束にしない?
その天童の提案はとても良いことに牛島には思えていた。
白鳥沢男子寮の部屋割りは運動部所属の者は運動部所属の者と同室になりやすい。そして、文武両道、仙台でも屈指のスポーツの強い白鳥沢学園の運動部員は全国大会への遠征やら対外試合のための遠征合宿やらと寮を空けることも多いのだ。実際、牛島の同室者はサッカー部でもエース級の選手であるため、その日も関東遠征に出かけ、おかげでこうやって天童との初夜を無事に迎えることができていたのである。同じく、天童の同室者であるバスケ部も本日は遠征中だ。おかげでこうやって恋人達はこっそりと消灯時間の後に牛島の寮室でゆっくりとしていることができるのである。
こういったチャンスはきっと、今後何度か有るはずである。そのタイミングと、愛し合いたいと思うタイミングが合えばこれほどラッキーなことはないだろう。そんな機を逃したくない、という思いからの天童の提案であった。
「良い案だと思う」
「でショ?」
ふふ、と微笑む天童も初めての疲労感でそんなに大きな動作はできないのだろう。普段の天童の笑みよりもささやかな頬の動きに牛島には思えていた。しかし、それさえも愛おしい。そう思える事が、何よりも牛島にとって喜ばしいことであった。
もっと、天童の、もしくは牛島の体力が残っていれば、もう一戦といきたいところであったが、あいにく、その日は互いにもう、体力ゲージを使い切ってしまっていた様であった。
「今すぐにでもドアノブにタオルを掛けたい気分だ」
「チョット待って。今日はもう限界」
今にも眠ってしまいそうな天童の声を聴きながら、牛島は明日も懲りずにドアノブに白いタオルを書ける自分を想像していた。
その想像が、もちろん、現実になったのは言うまでもない。
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若利くんからの誘い方
初公開日: 2023年11月01日
最終更新日: 2023年11月01日
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