8月15日 天気/曇
今日、人形師から、珍しいものを仕入れた。
なんでも、長野の方で仕入れた特級品らしい。
霊媒がどうとか、色がどうとか、目がどうとか言っていたけれど、アイツのこだわりは訳が分からないにもほどがあるのでいったん全部スルーしておいた。
見た感じ、普通の男子高校生サイズといったところだ。アメジストとサファイアの瞳がとても良いが、何より彼の目がいい。ペリドットとも翡翠とも、エメラルドとも違う。緑色なのだが、受ける印象はオパール、かもしくは水晶といったような感じだ。
相も変わらずのぼったくり価格で腹にくるが、その分、とても良いものを購入させてもらった。人形師には後程、二重の意味でお返しを送り付けることにして、とりあえずは今日はこの三人を愛でていよう。
なあに、時間はたくさんある。少なくとも、夜はまだ使い切りだ。
とりあえずは、たくさん親睦を深めなくては。
8月16日 天気/晴
やはり、あの世代はわんぱくにもほどがあるようだった。
おかげで生傷が絶えない。
それ以上の幸福によってドーパミンでも出てたのか、最中は気にならなかったが、今になってじくじくと湧いてきた。
正直ちょっと困ったものだが、しかしまあ、あれくらいなら、これぐらいの失態は笑って許すべきなのかもしれない。
一応、仕置きと言っていろいろと細工はしてきたが、正直、お仕置きをするほどのことでもなかった。
一応配信をすることも考慮に入れたのだが、そこらへんはむしろ「アガレス」の領分だろう。少なくとも、私はちょっとなあ…
大金をせしめられたことに怒りはあれど、それをあの子たちにぶつけるつもりは全くない。
むしろ善い仕立てなのだから、蝶よ花よと愛でまくるべきだろう。
とはいえ、私が愛でてろくなことになった覚えがないので、そこらへんは要注意だ。
離れているくらいがむしろいい距離感もある。
今日は、ちょっと向こうに行く時間を遅らせよう。いやだけど。
ちょっと…うーん、三時間くらいでいいか…。
8月17日 天気/晴
散々な失敗をした。まさか私があそこまでのミスをやらかすとは。
とうとう「ヴァサゴ」のことを笑えない。
私がまさか、ここまで初歩的なことを忘れるとは…
人形師の仕立ては完璧だが、しかし手入れを忘れればろくなことがない。
肝に銘じていたはずだったが、うっかりしていた。これだから「バアル」に「お前は0か100しかないのか??」と言われるのだ。
余りにも申し訳なかったから、先ほど風呂に入れてきた。少々…否、だいぶ暴れられたが、仕方なく少しだけ緊急措置を入れて、その隙に入れてきた。
甘美な悲鳴は大好物だが、とてつもなく疲れた。反響する中でのことなのでむしろご褒美なはずなんだけどな…なんだろう、不慣れなことをしたからだろうか…。
仕方がない。今日は少なくとも、あの三人が寝入るまで、少々見守ることにしよう。
念のため、大変なことにならないよう、手かせとかをはめるべきかもしれない。杞憂だといいのだが。
8月18日 天気/大雨
今日は3人ともすこぶる落ち着いているようだった。
というよりは、昨日までがすこぶるドタバタだったと言えるだろう。
非常に反省。これでは「人形師」にどんないちゃもんをつけられるかわかったものではない。
はぁ…ここまでのことは今までなかったんだけどな。ぼったくり価格とはいえ、むしろ安くさえ感じるほどの極上を前に、私もヤキが回ったらしい。
素直に声を上げ、罵詈雑言を吐かず、ただ唇をかみしめ、じっと私を見ている。
いつでも私と目が合うのは、始めてだ。正直そのせいでちょっと大分かなりけっこうすこぶる盛り上がったふしがあるのは、当然否定できない。
できない、けど、それとこれとはべつのものだ。
反省、反省。これからは片手間にいじくるのもやめにしなくてはならない。
繰り返すが、うっぷん晴らしも手荒い扱いも、私はしたくないので。
出来れば、否、蝶よ花よと愛でまくるべきだ。そうでなくては。
…よし。
昨日までは、やりたくもないこと。もっと言うのであれば、私らしくないことをしてから回ってしまった。
それを反省して、今日はやりたいことを、私がやりたいことを、心行くまでとことんやってやろう。
ちょっと時間はかかるだろうが、何。明日の夜までには終わらせるさ。
良い欲望の発散には、いい節度がつきものだ。
と言ったら引いた他連中は今度殴る。特に「ブエル」、あと「バルバトス」。
8月19日 天気/雨
やっぱ欲望に素直になるのって大事なんやなって。
8月21日 天気/大雨
しまった。
ついつい盛り上がってここまで日記をつけるのを忘れてた。
逆にどうして19日は付けたんだ?なんだ?習慣?怖…。
いちおう軽く20日にあったことを追記しておくと、大変すばらしい時間だった。美味だったとすら言い換えていい。
許容量を超えて枯れていく声も甘く滴る蜜も赤く色づくあちこちも大変豪華だったが、何がいいってその目に伝う水滴が素晴らしかった。
あれのためだけに生きていると言っても過言ではない。
今日はというと、ちょっとだけ趣向を変えて、配信なんてしてみようかな~と魔が差したのだが、これがたいそう嫌がられた。
全国配信なんてとんでもない。身内にだって見せない。ただちょっと会員だけがコメントできるところで流すだけだと説得してみたのだが、これが見事にダメだった。
まあそこまでしてやりたいわけでもなし、無理やりやって泣かせるのは本望でなし(あと初日みたいに暴れられると困る。文字通り骨が折れるし、そのあとの反応もすこぶる胸が痛かった)。妥協した。
とはいえ自分用の物が欲しかったので撮影自体はした。
こっそりしたけれど、途中サファイアの子は見つけたようだった。正直にいうと、非常によかった。あの子の反応があんなにいいのは久しぶりだ。特別にいいものを見せてもらった。はぁ~~~よかった~~~。
なお撮った映像は誰よりも私の声が大きくてキモかったのであえなく消去と相成った。くそがよ。
因みに、アメジストのこはというと反応が良くなってきていたし、オパールか水晶の子は、相も変わらずこちらを見ていた。視線が合うのは好ましいが、どうやら私ではない誰かを見ているらしい。
霊媒がどうこうってこのコトかぁ…。あとで人形師を締めあげないとなぁ…
とはいえ、最高の夜だった。できればまたやりたい。
…が、さすがに極上を×3は、少々容量が足りなかったらしい。
また日を置いてやることにしよう。胸やけとか、悲しいからね。
8月22日 天気/大雨
人形師をシメ上げに言ったらパトカーがいた。
どうやらガサ入れの憂き目にあっているらしい。
まあ…うん…そうだろうなあとは思うが、しかしまあ、「人形師」のことだ。
顧客に関する情報は、全て捨ててくれているだろう。
とはいえ、たぶん一番道程をたどりやすいのはわたしだろうし、これからちょっと荷物整理でもしておくか…
ついでに言うと、彼らがいる部屋はきっちり整理済みだ。
何せ迎え入れるのだから。掃除は完璧にしないとね★
ところで、この日誌を書いている途中でオパール…水晶?の子に話しかけられた。
曰く「どこかに行きたいんですか?」とのことだった。
正直ちょっとびっくりした。彼らにこの文字を読めるとは思わないし、これが人形師の言ってた「霊媒」がどうこうかぁ、とちょっと遠い目にもなった。(昨日ぶり二度目)
あの後実は説明書を見つけていたのだが、なんというか、三人とも備考欄に大層な文字列が並んでいた。サラッと呼んだだけだが。
私が言えることではないが、これちょっとヤバでは???この子たち、一応いわゆる「一般社会」から連れてきたんだよね?
この世界の可能性に胸躍らせながら、「いいや、そんなことはないよ」と言ってあげた。ついでに頭も撫でた。不安そうにしていたのが、少々心苦しい。
思ってもなかったが、不安…そうに、見えていたのだろうか。
正直あの人形師はいつか各方面に刺されてもおかしくないし、事実複数そういう声を聴いたことがあるので、むしろあいつが捕まったのは行幸だと思っているレベルだ。
あの手腕は、今後現れるものではない。
金額は違法だが、それに見合うだけの技術を持っている。
締めあげられなかったのは残念だがそれはそうとして、たっぷり一般社会のくびきに保護してもらうことに使用。
とりあえず今日は、彼らの不安を溶かすため、たっぷり甘やかすことにした。
追記
「弓を引きたい」と言われた。弓?なんで弓??まあいいか。
今度「バルバトス」に話を通そうと思う。癪だけど。
8月23日 天気/雨
なんと警察が私のことをかぎつけたらしい。はやくなあい???
いつもならば3か月は人形のことをとっくり蕩かせるのに。
動きが妙に早いなあと思ったら、そこ方面につてがある奴と、あと違法な手段でもって調べている奴がいるらしい。
なるほどね。人間社会の表と裏ってわけか。そりゃ早いわけだ。
「モラクス」がしばらく持たせてくれるとは言うが、おそらくどれだけ遅らせても、明日の昼には私のところにたどり着くだろうと言われた。
仕方ない。正直もう少し時間を掛けたかったが。今日を、とびっきりの|甘い日にしよう。
指先に口づけて。甘い息を飲み込んで。
そうして、彼らからしたたり落ちる蜜を、救い上げてちょっと舐めてとっくり煮込んで、甘いジャムにするのだ。
そうしてそうなったところをいただきます。
うん。やっぱり仕込みの時間がもう少し欲しかったが、仕方ない。
|Bon voyage《素晴らしい時間を》、かわいい子たち。
私がたっぷり、今から連れて行ってあげるからね。
8月24日 天気/大雨晴
昨日は、素晴らしい日だった。
一応、今までで一番素晴らしい服を着せてやったが、さて、どうだろうか。
あれらの反応が見れないのが、本当に心の底から寂しい。
だけど、善いことがあった。
これまでのちょっとしたハプニングや不幸をどこまでも帳消しにする、善いことが。
オパール…否、あれは水晶かな。の彼が、私の服の裾をつかんだのだ。
もう行かなくてはならなくて、そろそろ行かなくてはと重い腰を上げて。
そうやって、立ち上がろうとしたときに、その裾をつかまれた。
「どこへいくの?」と言われて、
「どこにでも。」と答えた。
あの子はわらって、「どこかへ消えるんですか?」といった。
「消えやしないさ」と答えた。
「また、会えますか」と聞いた。
「また会えるさ」と、答えたはずだ。
嘘だ。
実際のところ、自信がない。
だって私は、初めての幸福で、胸がいっぱいだったから。
これまでいくつもの人形を買い、そのたびに別れを経験してきた。
それに対して、苦しくはあれど、悲しみはない。
私は幸福なものだった。
幾千ものしあわせなであいを経験した。
だけど、望まれることはなくて。
だからそれが、死ぬほどうれしかった。
寝顔の写真を、最後に取った。
この日誌も、デジタル化してろそろ捨てなくてはならないころあいだ。
この文章をたとえ誰かが拾ってみたとしても。きっと、誰もこの文章を正気の沙汰とは思わないだろう。
だからこれが、私の葬送曲。
だけど今回は、そうならなくて済むらしい。
花嫁衣裳。
今度は、もっと良いものを仕立ててあげよう。
そう思った。
8月27日
見つけた。