カーテンを歯で引き裂いて紐にして首を吊ろうと思ったけど、それもできなかった。
 手術のあとのしばらくのあいだ、僕は自殺をする方法とチャンスを見つけることに日々を費やして、看護師さんや先生たちはそれを止めることに日々を費やしていた。
 それも長くは続かず、僕の自殺願望はいつの間にか枯れ果てて、虚しさだけが体じゅうを満たしていた。霞のかかったような頭で、失ったもののことを――兄さんのことを考える。
 この世で、たったひとりの、僕の兄さん。僕と兄さんは生まれたときから一緒だったのに、一緒には生きられなかった。
 じゃあどうして、僕らは一緒に生まれたの?
 コリエル1号さまが連れて行ってくれた最下層、この教団が崇めている本当にいる神さま、創造維持神がいる「聖域」と呼ばれる場所で、僕は七重のガラスの向こうに閉じ込められた神さまに向かってそう呟いたことがある。
 コリエル1号さまは、困った顔をしていた。
 神さまは……何も答えてくれなかった。
 目の間にいるのに、何も答えてくれなかった。
 コリエル1号さまやこの教団のみんなが、この神さまの言葉を得るためにたくさんの試みを行っていることは、僕も知っていた。にもかかわらず、神さまの言葉を得ることはまだできていないことも。
 僕は、ガラスの箱に閉じ込められた神さまに向かって祈った。
 どうか、この欠落を満たしてください。
 世界そのものを失ったかのようなこの欠落を、満たしてください。
 神さまの言葉で、僕の欠落を満たしてください。
 僕が捧げられるものなら、なんでも差し上げます。惜しいものなんて、もう残ってはいませんから。
 神さまは何も言わない。
 でも、僕は祈り続けた。それしかできることがなかったから。
 ――ダァバール融合というものを僕が知るのは、それからだった。
「僕ではいけないのですか、コリエル1号さま」
 僕と話をしているときのコリエル1号さまは、いつも困った顔をしている。もうそれ以外の表情が想像できなくなってしまいそうなくらいだった。
「――お前はまだ幼すぎる。被験体となるには……」
「被験体の条件は、まだわかっていないはずですよね。なら、僕が適合する可能性もあるはずです」
「しかし……」
「僕も正式なコリエル・メンバーのひとりです。それに、僕のバイタルが創造維持神の波動に安定した反応を示していることは1号さまもご存知のはずです」
 事実だった。
 分離手術前から、僕は創造維持神の波動にさらされても肉体的・精神的な変調を示すことは一切なかった。だからこそ、僕は分離手術前の幼い時期ですでにコリエル・メンバーに形式的とは言え加入されていたのだ。
 
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