何度目だろう? 君を想うのは?
朝日を浴びながら、天童覚は彼の人を想った。
その人は、いつでもまっすぐで、希望を寄せ集めたみたいな人で。でも、なのに、高校最後の試合で勝利をこぼれ落としてしまった。飛んでいくカラフルなあのボールをコート上の誰もが追いつくことができなかった。
もちろん、天童もだ。そもそもその時、彼はコートの外だった。最も手出しができない場所。そこで、最後の笛の音を聞いた。
夜明けが来ても、夕暮れ以前の自分と何も変わらない思考回路から抜け出せないとき。天童は彼のことを想い、それから、高校最後の試合を想う。
その瞬間が、自分が、本格的にショコラティエの道だけに邁進し始める最初の瞬間だったから。
天童の中で、世界がガラリと変わってしまったあの瞬間。それを思い出すと、自分の無力さを思い出すと同時に、どうしようも無い外界の変化が天童の内面を変えた劇的な瞬間を思い出すことになるから。
今、夜が明ける。おかげさまで、コンペまでの日数が一日減った。
おかげさまで、何の案も出ない自分の無力さに絶望が降りかかってくる。
だがしかし。
これが終りではないのだ。正確に言えば、終わりなのだが、終わりは始まりでしか無いことを天童覚は知っているから。だから、天童は彼の人を想う。
希望の塊。いつだって前だけを見て。落ち込んだ姿など見たことが無い。いや、落ち込むことなど天童が許さない。彼が落ち込んだら絶対に天童が彼を引っ張り上げるのだから。彼が落ち込む天童をいつも希望の光で照らしてくれるように。天童だっていつでも彼を希望の光で照らせるように。
こぼれ落ちる。小さな水滴が、瞳から、額から。それが天童自身を奮い立たせる。ここで終ってしまっては彼の人のマブダチを胸を張って名乗れないぞ? と。
身体中から水分を絞り出すように。真っ白な紙の上に小さな欠片だけでも書き表していく。
何も出ない、という不平不満と駄々をこねる子供のような甘えの時間はもう終った。
終わりは始まり。何もないからこそ生める何かがきっとあるはず。
キラキラと輝きだした日を受けながら、天童覚は彼の人を想った。
次のコンペもいい成績を叩きだして、「ほらネ?」と強がる天童を何の疑いも無くただ静かに頷くマブダチを。
朝日は、きっと、君の横顔によく生える。次、会えるのはいつかと思えば、ピカリと天童の頭の中で何かが光る気がした。
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