※大幅に変更される可能性があります。
洞窟を抜ければ、明るい日差しが辺りを照らしてた。
見たこともない光景に絶句する。巨大な建物が並び、空には見たこともない巨大な鳥が飛び、何かがものすごい勢いで走っている。音は常に何かの音を拾い続けて、鼻は嗅いだことのない匂いを訴えている。
「これは……なんだ?」
思わず呟く。一緒に来た面々も俺と同じように目を白黒させて立ち尽くしている。
「ほう、まったく違う進化を遂げたのか。蛇使いの星は」
射手の神だけがしたり顔で、頷いていた。
「どういう、ことですか?」
射手の神を見て、問いかける。射手の神は何かを知っているのだろうか。
「これらは”機械”が進化したものだろう。馬車や、時計などが人間の手によってさらに便利に、加護の力に匹敵するほどになったようだ。オフィウクスは、人間の可能性を信じるヤツだった。手助けをしたのだろうな」
しみじみという射手の神の言葉に、心臓が大きくなった。
「加護の力じゃない……?」
空を飛んでいる大きな鳥も、走っている何かも、見たこともないソレが”機械”だなんて、信じられなかった。人は加護の力もなく、空を飛べる。早く走れる。衝撃だった。
「詳しい話は蛇使いの神――オフィウクスに聞くとしよう。まずは居場所を突き止めないといけないな」
射手の神―サジタリウス様が朗らかに言う。何処にオフィウクス様はいるのだろうか。
高い建物に祭られてる? でも、高い建物はいくつもあってどれかはわからない。派手に祭られてるわけでもなさそうだ。
牡羊の神アリエスのように普段は顔を出さないタイプとか? とりあえず情報が足りなさすぎる。
「星の住人に話を聞きに行っこっか」
俺はみんなに提案する。反対する人はいなくて、みんながそれぞれ話を聞きに行くことになった。
俺も、ひとつの建物の近くへとやってきた。目の前を通る人に声をかける。
「あの、すみません」
訝し気な目で見られて、スルーされた。ショックを覚える。なんだろう、すごく変な感じだ。凹んでても仕方ない、別の人に話しける。
「あの、すみません」
「……なんですか?」
上から下まで見られて、やっぱり怪訝そうに眉根を寄せられる。どうも服装のせいだとわかった。蛇使いの星の人の服装は様々だけど、俺が着ているような麻の服を着ている人はいなかった。それに、俺の服装は長い旅路で薄汚れている。
「えっと、他の星から来たんですが……」
「他の星? お伽噺がお好きなんですか?」
刺々しい口調で目をすがめられた。思わぬ反応に目が白黒する。
他の星のことを知らない? 六千年も出入りがなかったから、古くからの言い伝えになってるのか?
あまり星の話をするのはよくないみたいだ。俺は愛想笑いを浮かべる。
「えっと、神――オフィウクス様のことを知りたくて」
「はあ……昔に科学の一端を担ったオフィウクスのことですか」
オフィウクス様のことを知っているようでほっとした。俺は、会話に多少の違和感を覚えながらも頷いた。
「オフィウクス様ってどこにいますか?」
俺の質問で、目の前の相手は一歩引いた。明らかに警戒されている。どうして?
「昔の人がいるわけないでしょう。もういいですよね」
それだけ言って、踵を返してしまう。あっと思って手を伸ばしたけど、その人が立ち止まることはなかった。
幾人かに聞いた。けど、みんな似たような反応で、一様にオフィウクス様を昔の人だと認識していた。
しばらくして、サジタリウス様たちと合流する。
「なんか、居場所どころか昔の人って言われちゃうんだけど」
肩を落として報告すると、みんな同じだという。
サジタリウス様が眉根を下げて、顎を摩った。
「力が弱って、雲隠れでもしているのかもしれない」
「所在がはっきりしないということですね」
スピカが頷きながらいう。でも、星の人たちの様子を見るとオフィウクス様を神様というより同じ人として見ているように思う。
「本当に、オフィウクス様はいるのかな?」
疑問に思って首を傾げる。
「いないよ」
聞き覚えのある声が間近で返答した。
背中がぞっとして、振り返る。射手の神サジタリウス様が口端から血を流していた。その背後には、銀髪で肌の黒いフードの男、レーピオスが真っ赤な目で俺を見ていた。
スピカがすぐに戦闘態勢に入ろうとするのが目の端で見えた。けれど、大きな音とともにスピカの剣が弾け飛んだ。
スピカが手を抑えながら後ろを見る。サッと血の気が引いた。
「扶翼の騎士ザヴィヤヴァ……」
喉から唸るように、立っていた人物の名前をスピカは呼ぶ。サソリの神だったシャウラを殺そうとした男がいる。
しかも、その後ろには、天秤の星で戦っていたエスカマリさんとオレンジ色の髪をポニーテールにした少女も立っていた。エスカマリさんの後ろには慎重が高い、同じ赤い髪と茶色い瞳でどこか蟹の加護を持つタルフに似た雰囲気の男も一緒だった。
人数が多くて緊張する。でもマルフィクの姿がないことにほっとしている自分もいた。
状況を確認しているうちに、ごほっという血が吐かれる音が耳に届く。
「サジタリウス様!」
膝をつく射手の神に駆け寄る。お腹に穴が開いていて、とめどなく血が流れている。
「スピカ!」
直してほしい。そう思って呼んだのに、目を離したうちにスピカは扶養の騎士に腕と首を取らて、動けなくなっている。
「きゃっ! 離して!」
悲鳴に振り向けば減れがオレンジ髪の少女に膝をつかされて髪を引っ張られている。近くにいるレグルスはエスカマリさんとにらみ合ってて動けない。
なんだ、これ……。蛇使いの星に来ただけなのに、どうしてみんながこんなことになってるんだ?
混乱する。
「話の続きをしようか」
フードの男の口端があがった。レーピオスは、倒れたサジタリウス様をゆっくりと持ち上げる。そのまま口だけは滔々と動く。
「蛇使いの神オフィウクスはもういないよ」
「う、うそだ!」
口から零れ落ちる。じゃあ、なんで俺が加護を与えられたんだ? いないわけがないじゃないか。
「俺に加護を与えたのはオフィウクスの神だった!」
「そうだね。残滓とでも言おうか。自分の力を加護として分割していった神の末路さ。君への加護を最後に、彼は消滅したんだ。完璧にね」
オフィウクスの神がいない? 消滅した? うそだ。じゃあ、なんで星はこんなにも活発に動いてるんだ? 神が死ねば、星はなくなるんじゃないのか?
「どうして、こんなに星は豊かなのに……」
「そうだねぇ。オフィウクスの神は、人に加護を与え続けたせいで力が弱まり、蛇使いの星を維持できなくなったのはたしかだよ。だから、提案してあげたんだ」
レーピオスがサジタリウス様抱えあげて、目の前に手を翳す。地面から、液体が詰まったとめ透明な円形状の箱がせりあがってくる。
十三個の円形状の箱。すでに十個に何かが入っている。見覚えがある顔がいくつかあった。双子の神カストル、山羊の神カプリコルヌス、天秤の神リーブラ……神々が眠ったように目を閉じて箱の中で浮いている。
レーピオスは十一個目の筒にサジタリウス様を放り込んだ。そして、俺に笑いかける。
「神自体が燃料になればいいって」
ぐにゃりと視界が曲がったような不快感。何をいってるのか、頭で理解ができない。
「当たり前だよね。散々、人間を支配してきたんだ。今度は人間の手助けになるべきさ」
両手を挙げて喜々として宣言する。
「これだけ、人間は進化できる。神の導きなどなくても。アスク、今度こそわかってくれるよね?」
レーピオスの赤い瞳が俺をじっと見つめる。冷汗がじんわりと滲みだす。
「アスク、僕たちの仲間にならないかい?」
俺はぎゅっと手を握った。
「ならない」
はっくりと大きな声で拒絶した。レーピオスの過去に神との確執があったのはたしかだ。でも、だからといって、神を虐げていい理由にはならない。
絶対に仲間になるなんてごめんだ。
キッと睨みつければ、レーピオスは肩をすくめた。
「残念だよ。君の力が欲しかった。神でしか星の豊かさを維持できない。だから、神の力を継続させる力は、とても魅力的だ」
レーピオスが近づいてくる。俺は一歩後ろに下がった。けどそれ以上恐怖で動けなかった。神様たちをあんな風にした男が、手を伸ばしてくる。
「でも、別に意識がなくてもいいんだ。僕らの役に立ってくれれば、それで。ね?」
「アスク!」
警告するようにヘレに名前を呼ばれる。でも、ダメだ。足が竦んで動けない。
どうすればいいんだ!?
「情けねぇヤツだな」
聞き覚えのある声がして、首元を引っ張られた。
「みんなを離すやざ!」
こっちはタルフの声だ。そう思ったとたん、目の前が水に覆われた。息はできるけど、水圧に流されそうになる。首元を引っ張った相手――マルフィクにそのまま引っ張られた。
視点変更
スピカVSサヴァイヤヴァ
アスクがフードの男レーピオスの手につかまりそうになった瞬間、タルフとサダルが連携して強大な水の塊を私たちに向かって投げた。後ろにアルディも居たように思う。
扶養の騎士サヴァイヤヴァに首をつかまれたまま、私も流された。
「けほけほっ」
どうやらあの水は分断させるためだったらしい。おかげでサヴァイヤヴァからの拘束も解かれた。
ここは、大きな建物からは離れている。草木が立ち並ぶ平原のようだ。戦うなら、問題はない。
「リヒトメーア」
「此処に」
名を呼べば、愛剣が瞬時に私の手に馴染む。サヴァイヤヴァはじっと私を見ながら、立っている。戦闘態勢を取らない相手に困惑した。
私をバカにしているのか? 苛立ちが募る。
「やはり、貴方はレーピオスに組みいっていたというわけか」
「レーピオス? ああ、蛇使いのアレですか。利害が一致しただけですよ」
質問にも答える。けれど、やはり覇気はなく、私のことなど警戒もしていないようだ。
「それよりも、蠍の神はどこですか?」
目を細めて威圧される。シャウラのことだ。サヴァイヤヴァは乙女の神だけではなく、蠍の神まで殺そうとしている。なぜだ? 私には、神殺しをする理由がわからない。
「なぜ、殺そうとしている……?」
「説明をすれば納得すると? あんなに乙女の神に懐いていた貴方が?」
ひどく見下すような眼を向けられた。軽蔑しているような口調が耳につく。前までなら煽られて、ここで斬りかかっていた。でも、私は力量がわからないほど、バカではない。前に一度完膚なきまでに負けている相手だ。慎重にいかなくては。
「……乙女の神は、貴方に何をしたんだ?」
きっとこれから聞く話は、私が知らない乙女の神の顔だ。信じたくないことを聞かされるのはわかっている。だが、聞くと決めたのだ。手にぐっと力が入る。
「面白いですね。話を聞くのですか? 乙女の神の気に入りである、乙女の騎士スピカが」
私は息を吐いた。挑発に乗ってはいけない。
「ああ。私は……聞く準備ができている。乙女の神は、貴方に何をしたんだ?」
私は愛剣の切っ先を地面へと向けた。戦う意思を放棄してみせた。
「……特段していませんよ」
目を細めて、サヴァイヤヴァは笑いながらいう。一瞬、何を言っているのか理解ができなかった。
「あの日、私は乙女の神に呼び出されました。そして、貴方を乙女の騎士スピカを次世代の神にする。そして私にサポートをお願いしたいと言ってきた」
初耳だ。そんな話。
「私は、自分が神になりたいと思った。だから、邪魔だったので殺しただけです」
にこりと微笑む表情は、サヴァイヤヴァがよくしていた表情だ。いつも優しく、いろいろなことを教えてくれる先輩だった。尊敬もしていた。
それなのに、目の前の相手は、自分が上に立ちたいという欲望で乙女の神に手をかけたのだと、そう零す。
嘘だと叫びたかった。
「乙女の神は誰にでも優しく、平和的な人だった……」
「ええ、同意します。けれど、人を信じすぎるきらいがありました。残念でしたね」
かわいそうにと零して、眉尻を下げる。この人は、本当にそんな理由で乙女の神を殺したのか?
「じゃ、じゃあ蠍の神は!?」
「乙女の神を殺した後、蛇使いのアレが教えてくれたんですよ。蠍の神は後継ぎがいないと。殺せば、蠍の星が手に入りますから」
背中が冷たくなった。理由があるから殺していいことに、なりはしない。だが、理由があるのならば聞いておきたかった。聞いて、相手にも考えがあるのだと案っとくしたうえで、戦いたかった。
不完全燃焼だ。胸がもやもやとする。吐き気すら覚える。
「誰もがみな、崇高な心を持つわけではありません。むしろ、私のように欲に忠実な人間のが多い。相手が妬ましい、羨ましい、引きずり落としたい。自分が一番になりたい。ただ、私はそれを成し遂げる力があった。というだけです」
滔々と語られる内容に頭がぐるぐると回る。胃が引きずり出されるような不快感。
「まあ、話したところで理解されるとは思いません。乙女の神の復讐でもしてみますか?」
微笑んだ相手に、短い呼吸しかできない。圧迫感。自分のことを正義とも悪とも思っていない。説得もできはしない。
復讐などするほどの人間なのだろうか。恨み、それもたしかに私の中にある。けれど、それよりも、こいつを野放しにしてはいけないと頭が警告を出している。これ以上、踏みにじらせてはいけない。ここで、止めなければ。
私は剣を構えなおした。
「なんだ、やっぱり貴方も同じ人間じゃないですか」
「……違う。私は、乙女の星を貴様に渡しはない」
そのために戦う。
「さすが時期神候補。でもね、力の差は歴然ですよ」
サヴァイヤヴァが手のひらに赤い閃光を集める。ボンっという音とともに、剣が、腕がb弾け飛んだ。けれど、それはもう何度も見た技だ。動じない。私には対抗できる力が今はある。
「おや? 再生ですか」
腕の感覚はある。リヒトメーアもすぐに戻ってきてくれている。大丈夫だ、私は戦える。
全身をバネにして、斬りかかった。爆発で剣が押し戻される。地面に足が着くなり、蹴った。次は相手の手の軌道に注意をしながら、身をひねる。
「はっ!」
空いた脇に剣を滑らせた。確かな手ごたえが手に響く。つんとした血の匂いが鼻についた。
「くっ」
が、同時に背中をたたき落された。反転すれば、サヴァイヤヴァの剣が私を襲う。リヒトメーアで受け流して、飛びのく。距離ができて、はぁっと息を吐く。
剣の腕もサヴァイヤヴァのが上だ。何がまずいって、サヴァイヤヴァは完全に加護を自分に取り入れ、新しい能力を手に入れていることだ。あの爆発の技は、乙女の神が持っていなかった能力。対して私は、加護に人格ができた段階。これを取り込めなければ、対等な力とはいえない。
要するに、剣も神の力も、私の方が一段劣るのだ。成長したというのに、悔しい気持ちがこみ上げる。いや、成長したからこそ相手との力量が目に見えてわかるのだ。
「一撃、もらうとは思いませんでした」
わき腹を抑えるサヴァイヤヴァ。けど、致命傷なんかではない。浅い傷跡だ。
「私は、負けるわけにはいかない」
心を震い立たせる。自分より強い相手に立ち向かうのは勇気がいる。だが、私は負けられない。乙女の星のためにも、仲間のシャウラのためにも、そして一緒に旅をしたアスクたちに顔向けするためにも。
「負けるとわかってて挑むわけですか。いいですよ、相手をしましょう。これは、模擬戦なんて軽いものじゃない。殺し合い。ですよ」
先輩として幾度と剣を交わしてきた。勝てたことはない。これは、殺し合いだ。負ければ死ぬ。
「わかっている」
心を決めた。
私が仕掛けられるのは長期戦だけだ。
タルフ、サダルVSベンス
駆けつけるのが遅くなった。せっかくアルディさんたちと潜入して上手く行ってたのに。
タルフが思った以上に反抗して、蛇使いの星に到着した途端に逃げ出すだもん。捕まえて説得するのに時間かかちゃった。
「あーあ、こんな形で分断することになっちゃうなんて」
「最初から言ってくれれば良かったんやざ」
アスクさんたちのところに駆けつければ、事態はひっ迫していた。慌てて、水を使って分断させたのだ。強力な相手を複数相手するなんて無理だから。全員神と同等の力を持つ相手だ。一対一でも勝てるかわからない。
僕とベンスさんを連れて、タルフは建物の方に泳いできた。今はまだ倒れているベンスさんを苦々しく見るタルフに苦笑する。
別にタルフと和解したわけじゃない。僕は希望があるならベンスさんを生き返らせたいと思ってる。でも、アスクさんたちを裏切る真似をするつもりはない。僕というより、タルフはアルディさんに説得されてたと言っていい。
「じゃあ、ベンスさんのことは僕に任せて、他の人のとこ行ってきなよ」
「サダル。ほんに、生き返ると思ってるやざ?」
タルフが僕の腕をとって、じっと見てくる。
乙女、蟹、水瓶、魚、獅子、牡牛、双子、天秤、山羊
牡羊、サソリ、射手、
※ここからネタバレ
レーピオスが、射手の神を機械に繋がっている容器に入れる。
他のひん死の神々も一緒に。
蛇使いの星の燃料は神の力だった。
そんなのオフィウクスの神が許さないだろ!?
もう、神はいないよ
え?
人に加護を与え続けたせいで、力が弱まり、アスクに加護を私のが加護の最後だった。
消えてしまったんだよ。
衝撃。
だから、代わりの力が必要でしょう? 神以外は星を生きながらえさせることができない。
君はかっこうの餌だよ。
させない! とタルフとサダルが協力して、大きな水でみんなを分断。
アスクは、マルフィクとともにレーピオスと対峙する。
ここから各味方視点。
スピカVSサヴァイヤヴァ
レグルスVSエスカマリ
アルディ、ヘレVSヒア
タルフ、サダルVSベンス
ヘレどうしよっか……。アルディのとこかな。