初めての景色。初めての充足感。
「今日はどこに行きましょうか?」
微笑む君に、私も静かに笑顔を返して――
今、私は……ごうんごうんと激しく音を立てる洗濯機の前に座っていた。
「……」
充足という万能感がもたらすふわふわとした夢心地は、今や欠片もない。
いや、あるにはあるよ、念願叶ったんだから。あるんだけど、現実に水を差されたのが納得いかない。
そりゃあ仕方ないんだけどさ。お泊りは公認でも、あれはバレないようにしないといけないんだし。
だけど、こう、もう、さ。納得いかない。
まぁ侑が早起きしてくれたおかげで、起きてからもしばらくベッドの上でだらだらしていようと、時間的な余裕はある。なのでさっさと証拠隠滅しようという侑の提言も当然のことだ。というか私だってしなくちゃなって考えてたから事前に準備はしてたわけだし。
だけどそれはそれ、これはこれ、だ。
実際に現実に直面すると、あれがどれほど夢のような時間で、それに対してこの状況がどれほど冷めてしまうことか。
それがこれほどまでとは想像もしてなかった。
そう考えると自分にとって、逆に昨晩の出来事のすごさというのも分かってくる。
侑の顔。侑の体温。侑の体。侑の手付き。
あぁ。今思い出すだけでも顔に熱が上ってくる。夢心地が舞い戻るかのように。
その追想に浸ろうとした矢先、無遠慮な音が洗濯機から鳴り響いた。
……はぁ。タイミングが悪い。
むぅと唇を尖らせつつも、私は布団を抱えてベランダに干す。あとは昨日の下着類を侑のと一緒に洗えば証拠隠滅終わり。
と、洗濯籠の中に投げ込まれてた侑の下着を取り出した私は、思わずそれをまじまじと見つめてしまう。
……いやいやいや。危ない危ない。
流石に今それをやるのは侑からの視線が痛くなるのが目に見えてる。せめてこれからの時間は楽しいものにしたいから我慢だ我慢。
なんだか洗濯機に放り込むのも申し訳なくなって、ネットにくるんだ下着を恐る恐ると入れてから洗濯機のスイッチをもう一度押した。
ほ、っと一息吐くと、リビングの方からいつもみたいに元気な声が聞こえてくる。
「先輩、ご飯できましたよ」
昨晩聞いた声とは、似ても似つかない声。だけど私の好きな声。
なんだか一緒に暮らしてるみたいな呼びかけに、私は思わず頬を緩ませながら、「はぁい」とリビングの方に歩いて行った。