――羨ましいな。
目の前で仲睦まじい光景が繰り広げられているのを見て、わたしはそう思わずにはいられなかった。
「これ引いてみるか?」
「なんでだよ、いやだよ」
境内の中にある恋占いおみくじの前でぎゃーぎゃーと燥ぎ立てているのは堂島くんと朱里だ。わたしの隣にいるこよみはそれに呆れた溜め息を吐いている。
二人の関係は堂島くんが隠そうともしないのもあって、ほとんど公然のものになっていた。だからか、違うクラス、違うグループなのにこうやって同じ場所を回って合流、なんてこともできるのだろう。きっと顔を突き合わせて、ここを一緒に回ろうって話をしていたはずだ。
同い年、同じ学年だからできること。
だからこそ、そんな光景を目にしてしまったからこそ、わたしは思ってしまう。
……先輩が先輩じゃなかったらよかったのに。
わたしがあと一週間早く生まれてたら。二人みたいに一緒に……。
まるで意味のないたらればだ。わたしが後輩で先輩が先輩だったから、わたしたちは出会って、一緒にいられてる。
それでも。
同じ時を共有して過ごせたらよかった、と。
あり得もしない空想が、頭をかすめてしまう。
寂しさが込み上げてきて、こよみに釣られて溜め息を零しそうになる。
再び目をやれば、朱里は堂島くんに押し切られたのか、おみくじを開いて悲鳴を上げてるところだった。堂島くんはそれを見て笑ってる。どうやら二人ともよくない結果らしい。それでも楽しそうだった。
「侑、お土産見てこよ。あの二人はもうだめだ」
そんなわたしを見抜いたのか――あるいは人目を憚らずにイチャついてる二人から距離を置きたいのか――そんなこよみの誘いに、わたしは一も二もなく頷いた。
広い境内を抜け、こよみの進むままに着いていくと、整備された道へと出る。土産屋が軒を連ねているそこに、わたしたちは適当に入っていった。
それを幾度か繰り返し、その内わたしたちは和風の小物をメインに置いてあるお店に辿り着いた。
お土産を見にきたはずなのに「どれもかわいすぎるなぁ」なんて自分用を買うつもり満々なこよみに苦笑しながら目を泳がせていると、ふとある物が目に入った。
それは正絹を使った小田巻のブレスレットだった。たまたまなんだろう、黒とオレンジが並んでいて、そこに目が惹かれたのだ。
ふと、去年先輩からもらったお土産を思い出す。和紙で作られたブックカバーと栞。あの幸せに満ちた家路を。
それだけでこうも会いたくなる。
……もう我慢ができなかった。
夜、電話をしよう。
声を聞こう。話をしよう。
一緒の時間は過ごせないけれど。
共有できるものはあるはずだから。
そう決意したわたしは、迷うことなく黒とオレンジのブレスレットを手に取った。
確認のために値段を見てみると、中々の値段。
だけどわたしはそのままレジへと向かっていった。