「レイア。すべての不死身の兵士を眠らせたら、俺と一緒に逃げよう」
 
 テイラーが家を出ていき、セオは直ぐにレイアにそう言った。
 アステライゼで不死身の兵士をすべて眠らせたら、レイアの願いは叶うことになる。
 そして彼女は殺される。
 逃亡にエディは力を貸してくれるだろう。
 アーロン、リアム、テイラーはきっと考えを変えない。
 セオはそう思って、レイアに自分の気持ちを伝えた。
「レイアには生きていてほしい。だって、レイアは知らなかったんだ。殺されるのはおかしいじゃないか」
「……私は知ろうとしなかったの。だから、これは私の罪。あんな風に変えられて、誰も構わず襲ってしまう。意識はあるのよ?それがどれくらい地獄はわかる?」
 レイアは珍しく感情的にセオに訴えていた。
「わからない。想像しかできない。だけど、レイア、君のせいじゃないよ」
「ううん。私の血がそうさせたの」
「いや、森の民の血だろ。俺の血だって同じだ。だから、俺たちは森でひっそり暮らしていたんだ」
「だけど、私のお母様が掟を破った」
 レイアは静かに事実を語る。
「あんまり覚えていないけど、お母様はお父様を愛していたと思う。お父様は今でもお母様を愛しているわ。悲しいくらいに。わかる。だけど、それでもお父様は不死身の兵士を作るなどと、恐ろしいことを実行してしまった。最初はお母様の血で、次は私の血で。私は償うべきなの」
「それなら、生きて償おう。沢山の人を助けるんだ。犠牲になった人よりも多くの人を!」
「セオ」
 思ってもいないことを言われ、レイアの涙が止まる。
「償うってそういうことだよ。レイアが死んでも何も変わらない。レイアの血で作った毒薬もすべて回収する必要があるし、どれくらいあるのかな」
 不死身の兵士を眠らせることだけをレイアは考えていた。
 あの毒薬がある限り、不死身の兵士は永遠に作られる。
「お、お父様に聞く必要があるのね」
「戻るのはだめだよ。一回戻ったら、もう二度と外に出られない。血も利用されるに決まってる」
「うん。わかってる。だから城に戻る以外にお父様と会う方法を考えなくきゃ」
「そうだね」
 レイアが少し生きることに前向きになってくれた気がして、セオは嬉しかった。
 テイラーが戻ってきたら、残りの毒薬の回収について話し合おう。
 レイアが殺されないため、どうにか皆を説得したい。
 その手始めにテイラーを説得できたら、とセオを考えていた。
「エディ」
 マリーナにも誘われ、この場に留まっても兵士に見つかるだけだと、彼らの隠れ家に案内された。そこにいたのはエディで、テイラーは軽く衝撃を受けた。
「あれ、あなたたち知り合い?この人は不死身の兵士の襲われていた私の仲間を救ってくれたのよ。あなたみたいにね」
 マリーナはテイラーにウィンクしたが、彼は無視した。
 見なかったことにして、エディに話しかける。
「この組織のことは知っているのですか?」
 エディは頷く。
 彼なりに利になると思って、この組織「反カルシア軍」に参加したのだろう、テイラーはそう判断した。
「あなたたち、本当に強いわね。あのチャーリー王みたいよね」
 チャーリーは敵にも恐れられているくらい、強い兵士として有名だった。
 彼が出てくると不死身の兵士の出現と同じくらい警戒された。
「そうですか。チャーリー王はそんなに強いんですか?」
「ええ。矢で射ぬこうとしたら、その矢を素手で受け止めたらしいわ」
「それはすごいですね」
 森の民の血を得て、狂わなかったが、影響は受けているらしいとテイラーは冷静に話を聞いていた。
「驚かないわね。まさか、あなたもできるの?」
「まさか」
 テイラーは否定したが、マリーナは信じなかった。
「無駄話はこれくらいにして、テイラー。あなたたち、私たちに協力する気あるかしら?」
「協力とはどういうことですか?」
「その力、そして子供たちの力、貸してほしいの」
「子供たちの力とは、いったい」
 
 テイラーはとぼけて見せる。 
 するとマリーナは笑った。
「あの子たち、どっちかが不死身の兵士を眠らせることができるんでしょ?」
 テイラーは答えなかった。
「あなたたちの目的は不死身の兵士の活動停止、それからあの薬なんでしょ?私たちはそれが邪魔なの。あなたたちがそれを取り除いてくれるなら、支援は惜しまないわ」
「……あなた方は何をするつもりなのですか?」
「カルシア国王軍の全面撤退よ。この国の主権を取り戻すの。あるべき姿に戻すわ」
「もしかしてあなた方が、王太子をかくまっているのですか?」
「そうよ」
 マリーナは微笑む。
 その笑みから、テイラーは随分前に見たアステライゼ王の肖像画を思い出す。
「まさか、あなたが」
「秘密よ」
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