自分を織姫――ないしは彦星と重ねてみて寂しさを慰める、なんてのは流石に卒業した。
小さい頃から本に触れていたからなのか、わたしの感受性は意外にもポエミーなものらしい。
わたしの中に浮かぶ言葉を燈子に話していたら、返ってきたのがそんな評価だった。
「侑って意外とロマンチストだね」
ついでにそんな評価も付いてきた。
大変不本意である。そも、どの口が。燈子だって大概ロマンチストじゃないか。
……いや、燈子はムード作りよりもがっつきたい方だからそうでもないか。ムーディに感じるとしたら、それは燈子の外見や醸し出す雰囲気であって、当人の行動は直接的だった。
そんなもんだから言い返せずにむすっとしてると、何故か「かわいい」との評価が続いた。とりあえず小突いておいた。
さておき、その評価が不本意に感じたとはいえ、なるほどと腑に落ちもした。今振り返れば、学生時代は思い当たる節がありまくりだ。恋に対して「羽が生えたみたいにフワフワしちゃったり」とか、文字に起こせば確かにポエムだ。
もちろんそれが悪いことだとは思わないし、当時の感受性を否定する気もない。ただ残念ながら歳を食うと当時の切実さが程遠く、またかわいらしく感じてしまう。
まぁそんなだから社会人一年目辺りまでなんかは特に、織姫彦星に当てはめて自分に言い聞かせるように傷心を慰めていた。
多忙な燈子に会えない寂しさと、ひょっとしたら当てつけみたいなものもあったのかもしれない。
それでもその袖を引き留めなかったのは、燈子のやりたいことを尊重したかったから。
そう思えたのも、燈子がちゃんとわたしのことも尊重し、また同時に変わらず「好き」をぶちまけて、時間の許す限りわたしに構ってくれてるからだろう。
もっとも、こうも忙しいと季節の行事を一緒に迎えるのも難しい。とはいえ例の二人よりかはずっと一緒に過ごせられるのだから、まだいい方だろう。
一人の夜も随分慣れた。今日も今日とてドラマを見ながらゆっくり過ごそうと、
「ただいま、侑」
唐突に鳴り響いた開錠の音と、テレビ画面と同じ声に、わたしのぼんやりとしていた頭は一気に覚めた。
すぐさま玄関へと駆けていく。リビングの卓上に立ててある小さな笹と吊るされた短冊が、かさりとわたしを見送った。