しばらくお待ちください、とスタッフさんが控え室を出ていってようやく一息吐くと、視界の端で燈子がだらしないほどににやけているのが見えた。
「なにさ」
「すごく嬉しいだけだよ」
 全く、相変わらずど真ん中ストレートは健在らしい。
 とはいえそれを受け続けてもいれば、キャッチングはいやでも上手くなるというもの。今更恥ずかしがるようなことはない。
 ただ単純に、同じ気持ちだったものだから、炭酸みたいな感情が次々と湧き上がるだけ。うん。そうったらそう。
「似合ってるよ」
 むしろ燈子に似合わない格好なんてあるんだろうか。
 控え室も衣装も、なにもかもが白一色の中で、燈子の放つ黒色の存在感は際立っていた。
「侑だって、似合ってるよ」
 満面の笑顔を浮かべる燈子に、わたしは思わずむっとする。
 結局身長は伸びないまま、こんな歳にまでなってしまった。もうちょっとあればいくらか格好も付いただろうに。
 もっともここまできたのだ、今更どうしようもないし、仕方ない。
 にしてもわたしには似合ってるかどうかなんて分からないのだけど……まぁ燈子の言葉を信じよう。
 二人して気もそぞろになっていると、スタッフさんたちが時間になったことを告げる。
「行こ、侑」
「行こう、燈子」
 わたしたちは手を取り合い、移動する。
 待ち受けていたのは見知った顔と万雷の拍手。冷やかしのような野次に祝福の言葉。
 その中で、わたしたちは契りを結んだ。
 喜びも、悲しみも、人生も、全てを分かち合うことを。
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