いつものように食器を洗って水切り籠に置いたところで、ふと、狭いなぁなんて思った。
それもそうだった。二人分の食器が並んでるんだから。
それでも最初の内は別にそんな手狭な感じはしなかった。
だって一番最初に沙弥香先輩が買ってきたのはお茶碗二つとお箸が一膳。それだけだったものだから、いくら安アパートのちまっこい水切り籠でも、手狭と感じるほどのスペースを取りようもない。
いつからだろう。色々と増えてきたのは。
小皿大皿、汁椀に丼ぶり、それからスプーンフォークにコップ。
少し目をやれば、小さな食器棚にインスタントコーヒーの袋。専ら沙弥香先輩専用だ。
冷蔵庫には福神漬けが増えた。先輩はカレーに入れる派らしい。わたしはなにも入れない派だから、これまで常在してなかったものだ。
お風呂には先輩愛用の各種ケア用品が増えたおかげで、ただでさえ狭いユニットバスがより一層窮屈になった。全く問題がなかった。いや、時々沙弥香先輩が来られない時に勝手に使って沙弥香先輩を感じてるから問題はあるかもしれない。今のところ気付かれてないはず。
洗面所には歯ブラシやメイク用品が。
物がなかったリビングには、カーペットが導入され、沙弥香先輩からもらった手乗りサイズの人工観葉植物によって彩が出た。
——増えた。色んな物が。
真っ白だったわたしの世界は、気付けばこんなにも沙弥香先輩に色付けられている。
それがなんとなしか、ううん、すごく、嬉しい。
物が増えたことで、わたしが広がっている感じがする。
……なにかわたしも色を付けたい気がする。
なにか明確に欲しいものがあるわけじゃない。けど。
……とりあえず桜色のなにかかなぁ。
そこまで考えて、そういえば沙弥香先輩がそろそろ座布団だけでも欲しいなんて言ってたのを思い出した。
ちょうどいい。一つは桜色にしよう。
先輩は緑色が好きって言ってたっけ。黄色? 桜色とも言ってたような。
同じ色だったらいいなぁ。なんて思いながら、わたしは先輩に向けてメッセージを飛ばそうとスマホを取り出した。
緩みそうになる頬を必死に抑え付ける。逆に変な顔になってるかもしれない。
沙弥香先輩。
一目惚れというやつだった。多分。
多分、というのは、わたしのとって交通事故みたいなものだったから。