新人公演でジャックエースだった君を見たとき、私は君の進む道を応援したいと思ったのです。
 アンバーの新人公演ジャックエースが大成することは多くないと友人から聞いていたけれどそんなことどうでもよかった。スターになるから好きなわけじゃない。華やかで美しい君の姿に心を奪われただけ。ただそれだけだ。
 天才集団アンバーの中で一年生が活躍するのは難しい。それでもセリフがあるだけ君は優秀だった。歌も踊りも目立つところにいて、もしかしたら二年生でジャックエースに成れるかもしれないなんて期待してしまうほどだ。あの立花継希に憧れ目指していると新人公演インタビューで読んだけれど、その言葉に負けない実力があると私には思えた。きらきらとした目で夢を語る君が大好きだった。
 一年が過ぎ、77期新人公演が行われた。……怖いと思った。あの人と同期の根地君が書いた脚本は正直難しかった。ピエロのようなメイクに独特の台詞回し。芸術的な舞台というのはこういうものを言うのだろう。君がいつも通り舞台に立っていたのが嬉しかった。
 夏公演がやってきた。新人公演でもジャックエースを演じた田中右君がまた主役だという。アルジャンヌは根地君。彼がジャックエースだと期待していたのに、という思いは幕が開いた途端に消え去った。私は何を見たのだろう。いっそ怖くなるほどに圧倒的で、気圧されて気持ち悪くなるほどの舞台はユニヴェールフォロワー全ての話題をかっさらっていった。私だってそうだ。この夏公演で私は、君を見つけられなかった。君を見つけようとしなかった。君を、忘れてしまっていた。
 ユニヴェール生がたくさん退学したと噂が流れている。君はまだ舞台に立ってくれているのだろうか。そう不安を感じながら見に行った秋公演、君は舞台に立っていた。だけど目は暗く澱んでしまっていて。君の心は折れてしまったのかな。立花継希を目指すと言った君はどこかにいってしまったの。もうジャックエースは目指していないの。
 冬公演で君はアルジャンヌだった。背が高い君がジャンヌだなんて意外だ。田中右君の相手役だからこその抜擢だろう。本当はジャックエースの君を観たかったけれど舞台の真ん中に立ってくれるのならそれだけで幸せだ。そう思っていたのに、田中右君と並び立つ君は根地君よりも劣って見えてしまっていた。どうして。
 年も明け春が過ぎまたあの夏がやってきた。アンバーの凱旋公演。ユニヴェール生の内に海外公演だなんてめったに無いことだ。君がまた夢を取り戻してくれていたら良いな、という希望を胸に観に来た凱旋公演で私は君を見つけてしまった。
 君は諦めていなかったけど夢を見てもいなかった。顔に布をかけていて目は見えなかったけれどそれでもそう思う。思いたいのかもしれない。「君」の物語に「私」はいないけれど、ずっと私は君のファンなのだから。
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