俺の隣には、モブ君が座っている。実の所、彼の正確な名前は知らない為、敢えてここでは敬意を持ってモブ君と呼ばせて貰おう。
 彼は本当に魅力的な同級生らしく、人気者で、同じクラスに彼女が居る彼はいつもクラスの中心に居た。対する俺はというと…二つ上の学年にイヌピー君とココ君が居る所為で、実の所親しい友人や同級生は一人も居ない。いや、居るにはいるか。付き人というか、同じ黒龍の護衛役である同級生達が。
 彼等は俺と適切な距離感で接して来るため、友人と呼べるか否か、難しい所だろう。何せ彼等は常に俺をチームのトップとして見ているし、接しているのだから。
 黒龍は現在、非常に排他的なチームとして有名ではあるけれど、その実内部の結束は非常に固い。その為か上下関係もしっかりしていて、新入隊員には上の隊員達が良く補佐しており、新人教育も手厚くなっている。黒龍は少しずつ勢力を拡大させているけれど、基本的には現状黒龍に所属している隊員の紹介や伝手によってしか入隊出来ない為、その間口は驚く程に狭い。それでも黒龍に救われたから、恩を返したいのだと入隊を希望する者は多く、大抵は黒龍の協力者として名を連ねる事となっていた。
 これを取り纏めているのがココ君なのだけど、ココ君の教育は徹底的で、先ず『チームのトップである花垣武道には自ら話し掛けず、接触しないこと』を叩き込むと言う。この時点でかなり可笑しいし、何ならそんな不文律邪魔なだけだと思うのだが、それでは末端の隊員に示しが付かないと言われればぐうの音も出ないというものだ。
 次に”教育”を施された隊員をイヌピー君が指導する。ここでは拳で語り合う、とまではいかないけれど、鉄拳制裁も辞さない構えで徹底的に『花垣武道に対する絶対服従』をその体に叩き込むと言う。…いや、ちょっと待って欲しい。そりゃ言う事を聞いてくれるのは嬉しいけれど、それでも絶対服従など問題有りまくりではないかと思うのだけれど、これに関しては副総長の大寿君ですら「これでも足りない位だ。大体手緩すぎる」と毒舌を吐くのだから、彼等が求める黒龍隊員の在り方とは一体どういうものなのか教えて欲しい。流石の武道も、これには空いた口が塞がらなかった。
 そんなこんなで高校生活に戻るけど、武道の日常は一に黒龍、二にココ君とイヌピー君、三、四が無くて五に黒龍だと言うのだから、余りにも一般人と掛け離れ直ぐている気がしてならない。
 第一、どうして武道が高校に通うだけで護衛役が必要なのか…いや、もう何も言うまい。取り合えずココ君とイヌピー君が武道をどうしても同じ高校に引き摺り込みたくて、結果的にそうなったのは確かなのだから、この高校生活は彼等との貴重な日常を築く上でも重要なウェイトを占めているのだろう。
「花垣さん、そろそろ…」
 そう声を掛けてくる護衛役に返事を返し、受験戦争で忙しい筈なのに、何故か毎日のように武道を迎えに来るココ君とイヌピー君の元へと歩き出した。
 それは三人が付き合う前のこと。未だ、武道が高校生活を謳歌するべく奮闘していた頃の事である。
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