タク武3 試し書き
「ただいまー」
 大荷物を抱えて玄関のドアを開くと、丁度廊下に出ていたらしい武道がリビングのドアからひょっこりと姿を現わした。
「お帰り、タクヤ。あ、俺も手伝うよ」
 パタパタとスリッパを鳴らして近寄って来た武道は、「それにしても多いな」と少しばかり苦笑を滲ませて俺の手からビニール袋を一つ取り上げた。
「これでも足りない分を買って来ただけだから、それ程多くも無いんだけどね」
「そうなの? ああ、いつもは通販で買ってるもんなぁ。いつもありがとな、タクヤ」
「いいえ~。そういえば武道は仕事は終わったの?」
「一応、言われた分はやったけど…後はマコトの確認待ちかな。つか俺の仕事なんて殆ど無いんだから、もっと家事を手伝わせてくれよ。ほら、俺ももっと皆の為に何かしたいかなって」
「その気持ちだけで十分だよ」
 やんわりと武道の主張を退けると、武道は不満そうに唇を尖らせて「だって皆忙しそうじゃん」と寂しそうに目を伏せる。
「皆の役に立ってるって、俺も実感したいんだよ」
「…………十分、役に立ってるよ」
 寧ろ、何もしなくて良いからずっと俺達の側に居て欲しい。そういう本音を押し隠して、「武道は真面目だね」と笑いかけた。
「ほら、またそうやって誤魔化すっ」
「誤魔化しているつもりは無いけどさ、武道は十分やってくれてるじゃん? それに、恋人との時間を家事なんていう雑事で潰したく無いんだよ。武道と一緒にいる間は、武道とだけ触れ合って居たい。そういう貴重な時間を面倒な家事なんかで邪魔されたく無いって、俺は思っているだけだよ」
 武道も、そう思わない? 首を傾けながらそう問えば、武道が顔を真っ赤に染めて「んな恥ずかしい台詞良く素面で言えるな?!」と絶叫する。
「えーそう? そりゃ俺にとって武道は大事な大事な恋人だからね。アッくんもそう思うよな?」
 武道の絶叫を聞きつけて顔を出したアッくんにそう水を向けると、静かに歩み寄って来たアッくんが「その通りだな」と艶やかに微笑んだ。
「俺達にとって武道以上に大事な存在は居ないんだから、それ以外の些事に手を取られるだなんて御免だね」
 肩を竦めて俺と武道から荷物を取り上げたアッくんは、「ほら、先にリビングに行っとけよ」と俺と武道の背を押して後ろから付いて来る。
 武道がこの部屋に監禁され始めて早半年。この生活にも慣れた武道は、すぐさま踵を返して俺の手を取り、連れ立ってリビングを目指した。
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タク武3
初公開日: 2022年07月08日
最終更新日: 2022年07月08日
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