一日が過ぎるたび、ぼくは弟を失った喪失感を必ず確認するようになっていた。
でも、いくら誰もいないベッドの左側を確かめても、明日には、明後日には、この悪い夢が終わって、 ぼくの隣には弟の寝顔が戻っている――そう期待することをやめられなかった。
だって――だって、さっきまで(・・・・・)いたんだ、弟は。
先生たちがせいいっぱい優しい言葉で、何度もぼくを諭してくれた。でも、どんな言葉も僕には届かなかった。どんな慰めも、ぼくを癒やしてはくれなかった。
ここには、本物の神さまがいるのに。
それなのに、どうしてぼくを助けてくれないの? どうして弟を返してくれないの?
ぼくは大人たちの無責任な優しさに、最初は泣きながら、そして怒りを込めてそう問いかけた。大人たちは決まって、気まずそうに沈黙した。それ以上、それ以外の言葉が返ってくることはなかった。
(ここで章を分けるか)
本物の神さま――創造維持神。
コリエル1号さまに連れられて、その本物の神さまが安置されているという教団施設のいちばん地下には何度か行ったことがある。
トラックが何台も乗れそうな大きなエレベーターに乗って、「聖域(サンクチュアリ)」と呼ばれているそこに向かって降りていくに連れ、なにかが聞こえてきた。
人の声――歌のように聞こえた。
「歌声が聞こえます」と言うと、1号さまは落ち着いた声で「お前には聞こえるのだね」と言った。他の人には、この声は聞こえないのだろうか。
ぼくはエレベーターの上で目を閉じて、その歌声に耳を澄ませていた。やがて大きな音と振動とともにエレベーターは止まった。
エレベーターの目の前の、高い天井まで届きそうな大きな扉がゆっくりと開いていく。
その向こうに見えたのは、長く深い暗闇と、淡い光に照らされた通路だった。
1号さまにストレッチャーを押してもらいながら、ぼくは廊下を進んでいった。聞こえてくる歌声は、すでに耳じゃなくて頭の奥で聞こえるようになっていた。