―――俺の隣の席に座っている花垣君は、どうやらそこそこ有名人らしい。
 金に染めた髪を無造作にセットした青い目を持つ彼は、いつもお付きの人と共に登校している。何をしているのか、どういう人物なのかは分からない。同じクラスとはいえ、彼とは殆ど交流が無いのだ。彼自身は、どういう訳か俺を含めたクラスメイト全員と距離を取っている所為で、いつも一人でただぼんやりと授業を受けている。偶に欠席したかと思えば、顔に傷を負っている事もあって、もしかしたら花垣君は不良の類の人間なのでは? なんて噂する人も居たけれど、結局の所、真相は闇の中である。
 さて、そんな花垣君だけど、常々思うに、彼は『人をよく観察する』という癖を持っているのだろう。何せ彼はひたと視線が合うと、いつもにこやかな微笑みを浮かべながらも、何処か不穏な気配を滲ませているのだ。別に彼が怖い、なんて思う事は無いけれど、花垣君がどうしてそんな風に周囲を警戒しているのか分からず、少しばかり後ろめたく思うのは否めない。
 俺には付き合って間もない彼女が居るが、同じクラスの彼女曰く、花垣君には常に人を寄せ付けないオーラがあると言う。成る程、言い得て妙だろう。彼は学校行事の類を特に重視していない為か、誰とも交流せず、そして重要な式典以外は全て欠席しているのだ。それでも彼が困る事は無いのだから、まあ彼の付き人が上手い事彼に様々な情報を与えているのだろう。
 そういう意味では決して一人とは言えないものの、彼が何を考え、どうしてこの学校に来たのか、知る者は誰も居ない。
 折角同じクラスの隣の席になったのだから、少しは交流したいものだと思う。でもそのきっかけが得られなくて、俺はただ花垣君の横顔をそっと眺めるだけの、ただの銅像と化している。
 俺に勇気があったなら、きっともう少し早く彼と交流出来たのかもしれない。けれど今となってはどうする事も出来ないのだから、意味のない話だろう。
「なあ花垣君、俺と友達になってくれないか?」
 俺はただ、そう言いたかっただけなんだ。
 いつか離れる事など当然の事なのだからと、後一歩踏み出してたら、何かが変わったのだろうか。彼の微笑みを真正面から見る事が出来たのだろうか?
 花垣武道。彼は隣の席に座る同級生で、そして俺にとってはいつまでも手の届かないクラスメイトだった。
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十一代目黒龍の前日譚のようなもの
初公開日: 2022年06月21日
最終更新日: 2022年06月21日
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15分だけ。タイトル通り