#チュナGEDの顔1アベリオン(観戦したデータのやつ)
#時系列前後
「ああ、やっぱりここにいた」
 その声を聞いて、メロダークはかすかに身構えた。
 神殿の方から丘を登ってやってくるのは、見慣れた白い髪の魔術師だ。いつもよりも少し、歩みが遅い。見れば、後ろに見覚えのある少女を連れていた。
 まだ日は高く、数週間前なら毎日のように遺跡に潜っていた時間帯だった。アベリオンの声を聞いてから、彼とチュナの歩幅の差の分だけ、メロダークは待たされる。否、彼らに関係なく、もう随分と長く墓地に立っていた。
「メロダークさん、こちらがチュナです。パリスの妹の。一言ご挨拶がしたいと。
 チュナ、こちらがメロダークさん。遺跡ではとてもお世話になったんだ」
「はっ、初めまして! あの、本当に、助けてくれてありがとうございました!」
「……ああ」
 ぺこりと頭を下げる少女のこまこまとした動きが、新鮮であり、どこか見覚えがあるようにも思われた。
 少女は下げた頭を上げかけて、無言のメロダークの表情をうかがう。
 ――言いたいことがあるようだった。
「……確かに、歩いている姿を見るのは初めてだ」
「……ええっと……あの……わたし、覚えてます。アベリオンの後に、あなたも……お祈りを、してくれてましたよね。わたしがまだ寝てたとき」
 意外な言葉だった。
 アーガデウムは討ち果たされ、紫水晶に閉じ込められたありとあらゆる時代の人間たちが息を吹き返した。ホルムの町は、いまもっぱらその対応に追われている。着の身着のまま1000年前から蘇った者すらいるのだ。それでなくとも、頑是ない子供や若者の記憶は不確かなもので、眠り続けていた時の周辺の状況はおろか、見ていた『夢』の内容すらあやふやな事例が多かった。(ラングバード教授は、そんな状況の占いじみた研究に真っ先に取り掛かった内の一人だ。)
 メロダークは、とっさに語る言葉を持たなかった。――僧侶の端くれとして、少ないことだが子供を見舞ったことはある。だが、ホルムでは一度もしなかった。人前では――とりわけ、探索者の筆頭であり、タイタスの末裔とおぼしき魔術師の前では、決して。
「……特別なことはしていない。誰でも哀れに思うだろう」
 少女と目を合わせずに、メロダークは言った。
 彼の目の前に並ぶ真新しい墓の中に、見知った名前がある。この少女は知らないだろう。彼女は一年弱も眠っていたのだから、健全な時ならば同じほどの歳だったかもしれない。
 メロダークの前には、シーフォンの墓碑がある。
*
 記憶が反響する。
「――待て!」
 青ざめた顔でアベリオンが振り向いた。まだ、昨日のことのように思い出せる。
「……なぜ止めるんですか」
「手ごたえがあった。追う必要はない」
「だからですよ!」
 アベリオンの声が、大図書館に何重にもなって響く。
 あの日の記憶だ。神殿軍が探す『鍵の書』をこの目で見て、それを巡って争う魔術師の片方に、あろうことか加担した日のこと。
「早く治療してやらないと、シーフォンの命に関わります。……彼は……幻都に渡ることも出来ない。ここから徒歩で地上に出る道なんて、ほとんど……」
 言いながら、気が急くらしい。足が勝手に動くと言わんばかり、忘我したような表情で歩いていこうとする。
「……傷付いているのは、お前も同じだ」
 メロダークは、アベリオンを止めようとした。当然、理解されると思った。馬鹿げたことを言っているのは彼の方で、けれど聡い男だから、一度腕でも掴めば思い直すと考えていた。
「――触るな!」
 アベリオンがメロダークの手を叩き落とした、ことを、メロダークが認識するかしないかのうち。
「……知っているぞ。あんたが、町の門を開けたこと。先生が、みんなが死んだのは、あんたのせいだってこと!」
 脳が揺れた。
 知られる覚悟はしていたつもりだった。間諜とはそういうものだ。背中から切りかかるのだから、切りかかられる覚悟をしていた。
 見逃される覚悟をしていなかった。
「ホルムの人々だけでなく、僕の友人にまで死ねと言うのか!」
 図星だった。アベリオンならまだしも、あの非行ばかりの妖術師ならば、いつ死んでもおかしくないし、それでいいとさえ思っていた。
 その通りだと答えたかもしれない。
 覚えていたのは、その期に及んで、アベリオンが自分に手を上げようとしなかったことだけだ。
 あの日からずっと、彼の声が反響している。
*
 シーフォンの墓石を彫ったのは、当地出身の石工の弟子で、兼業探索者だった青年だ。あまり勤勉な方でなかったらしい。おそらく彼の師が多くを手掛けたであろうホルムの墓地の墓石の中で、ひときわいびつな形をしている。
 ――広場でメロダークを呼び止めたのは、青年の方からだった。最近知り合いをさっぱり見かけないと言われて、よくよく聞いてみれば、その知り合いとは赤毛の魔術師のことだった。彼とメロダークがそれなりに頻繁に同行していたことを(メロダークからすれば、自分はアベリオンと同行していたのだが)知られていたらしい。
 メロダークが手短に「死んだ」と告げると、青年はぽかんと絶句した。一応は国境の合戦に志願もしたらしいのに、彼は隊伍の隣の兵が頭を打ち貫かれる機会に恵まれなかったようだ。
 しばらくして、青年はぽつりぽつりと語った。自分は石工をしていて、加工された石とそうでないものの見分けが少し付くから、遺跡の石を集めて売っていたのだと。けれども商会の名うてのやくざ者に買いたたかれるばかりで、そんなある時シーフォンがふいと口を挟んできたことから、話すようになったのだと。あいつを尊敬してたんだ、とこぼした頃には、一緒に涙をこぼしていた。
 初めて同志を失った人間。隣の兵が死んだ人間の顔を、メロダークはよく知っている。
 ――大聖エルに曰く。
 他人の妻を卑しい目で見たものは、既に姦淫の罪人である。
 他人の宝を欲したものは、既に強奪の罪人である。
 他人を殺そうとしたものは、当然、殺人の罪人である。
「アレがねえ、ピンピンしてますよ。そんな格好すると傷に触るだろって言ったのに、机に足乗せて。呆れたもんです」
「……そうか」
 そんな、一度は墓碑銘も刻まれた少年がアベリオンと帰還したことに驚いていたのは、はたしてメロダークだけだったかもしれない。なにせ、半年を経て同じことをしたアベリオンと並び称されていた魔術師だ。彼の墓を彫った青年も、泣いていたけど、「信じてたぞ」とも言って、少年の肩をはたいた。彼をよく知る無頼のいくらかが、「やっぱりか」と言った。「殺しても死ぬやつじゃない」は、誰だったか。彼はこの町で、相応にたちの悪い人間たちから、相応の信頼を勝ち得ていたのだった。
「最近なんか遺跡に入ってアレがないコレが消えたってぶー垂れて、もう出て行く気らしいですよ。……まあ、もう少し様子を診ますけど、」
 アベリオンは言葉に詰まった様子で、頭を掻いた。
 ――彼はチュナとは違う。言いたいことがあれば話し出すし、言いたくないならそれでいい。メロダークがそう思って黙っていると、ひとつ息を呑んでから、きっぱりと顔を上げた。
「申し訳ありませんでした。僕は一時の感情で、あなたを傷付けることを言いました」
「それは……」彼のそれまでの態度から、なんとなくそんなことを言われる察しは付いていたのに、やはり言葉に詰まった。「……俺は、そう言われて当然のことをした」
「ううん、でも……不毛でしたよ。謝らせてください。あと……」
 アベリオンは言いながら、何も提げていない自分の腰を探った。――かつて探索で同行していたおりには、ベルトポーチを付けていた。そのことをメロダークが思い出すか出さないかのうちに、隣からチュナがアベリオンをつついて、「鞄だよ」と囁くのが聞こえた。
「……そう、そうだ。つまらないものですが、お納めください」
 そう言って、メロダークには見慣れない手提げの革鞄を開いた。薬篭の一種のようで、中はいくらかの間仕切りに分かれているが、いま入っているのは茶色い半液体が詰まった小瓶が一つだ。
 少女がきもち、胸を張った。
「えっと、ポララポが……お好き? と聞いて、アベリオンと二人で作りました」
「万一お腹を壊すとよくないので、なんというか……『本場』の味とは少し違うかもしれませんが。旅のよすがにでもしてください。師は乾パンに渇を入れるのにいいとか、なんとか、言っていました」
 メロダークは小瓶を手に取ると、しばし沈黙した。
 蓋を取って、においを嗅いでみて、なお沈黙した。
 蓋を閉め、あまりの沈黙にチュナが不安げにアベリオンを見上げた頃に、ようやく口を開いた。
「……郷土料理など……」言葉を探すのに、時間がかかったためだった。「……余所者が上手く作れるわけもないだろうに」
 チュナが僅かに身を竦ませた。アベリオンが彼女の肩に手を置いて、メロダークにはおだやかな表情のまま、続きを促した。
「……自分の料理があれほど褒められたのは初めてだった」
「……いいところでしょう、ホルムは。今ならもっと大勢の人が心穏やかに味わってくれますよ。あー……探索者需要が減ったって言ってる職人もいますけど」
 腰の曲がった老人が、地元の若いもんより余程わかっていると、メロダークのレシピに太鼓判を捺した。喋るばかりで聞く方はさっぱりの別の老人が、井戸端連に食わせてやりたいと、大目に注文をよこした。
 神殿軍の侵攻は、そうした人間を大勢殺した。
「……あの時……」
「僕が、謝りに来たので。よしてください」アベリオンは、こほんと咳払いをした。「もし、本当に料理屋を開きたくなったら……、この町のこと、思い出してくださいよ」
 メロダークは、近くホルムを去るつもりだった。アベリオンや他の探索者に、バルスムスの死について余計な嫌疑がかかることが無ければ。行方をくらましたままのテオル公子が、なにぞ企みを巡らしていないと確信できれば。そういう言い訳を見つけては長居していたが、本当に、そろそろ去るべきだと思っていたのだ。
 アベリオンには、それが知れていたのだろう。ものをよく見て、よく覚えている若者だ。
「…………ありがとう」
 何かを約束することは出来なかったけれど、そう言って差し出された手を握った。
 任地の人間と握手して別れることも、ほとんど初めての経験だった。
「あのー……」
 帰路、神殿の敷地から出たころ、チュナは遠慮がちに口を開いた。他人の噂話は後ろめたいものだったし、大人の会話は難しいものだ。
「お坊さんだと思ってたけど……ポララポで、お店を? って話、してたの?」
「うん。メロダークさんは腕が良いって評判でね。ああ、チュナのところの大家さんも知ってるかも」
 それを聞いて、へえ、と思った。『大家さん』も、意識のないチュナに祈ってくれたうちの一人だった。それまで少し苦手だったけれど、目覚めてすぐに顔を見せに行ったときも喜んでくれたもので、チュナは自分の気持ちをずいぶん反省した。
 それにしたって、ポララポを「料理」に数えるのは、なかなか耳慣れない。アベリオンの表情を読み取ろうとしていると、まだ不思議に思っているのを感付かれたのか、チュナを安心させる顔で、ふわりと笑った。
「大人の味が得意な人なんだ」
 

シーフォンくんは目を覚ましたチュナを見るなり魔力に気付いて「こんなん石に入れとくだけなんてタイタスもバカなことしたなあ」とかほざいてパリスとアベリオンの両方からひっぱたかれたが、タイタスの憑代マジでやったやつが言うならひょっとするとある程度確かなのかもしれないし、なんならちょっと謙虚だったのかもね。
 
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Dust
本当にエンディングのメロダークだと「あんなに墓地に通い詰めてるのにチュナ知らないってことはないだろ!」ってなるな 今気付いた
19:47
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討伐一週間後ぐらいにするかなあ でも別れ際のつもりだったんだよなあ
20:19
Dust
メロダークさんが出る出る言ってしばらくとどまってたことにするか(なんてこと言うんだ)
44:30
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職人の弟子の職人がなんなのか明言あったら詰むからあの職人の弟子だと明言はしないようにしよう(逃げ)
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向き
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