薄暗い部屋のカーテンを開けると、舞ったホコリがキラキラとひかりだす。その光景を目にしてこの家に来たのはいつ振りだっただろうかと記憶を辿ってみるがどうもアルコールや余裕の無さで脳を支配されていた時ばかりでうまく思い出せない。まぁ、別にどうでもいいんだけど。順番が逆になっているような気もするがようやく壁についたスイッチに触れると、瞬きをするようにゆっくりと部屋に明かりがついた。ハッキリと視界に映る散乱した酒瓶やいつ食べたのかも分からないゴミに脱ぎ捨てた服がリビングを埋め尽くしていて、掃除をした記憶がなのだから当然だとはいえここまで酷かったのかと顔をひきつらせる。
「ひっでーなこりゃあ……」
 タワーと違って片付けをしてくれる者はいない。こりゃ大変だろうな、と怒りを通り越した呆れを過去の自分へと向けてため息をつくと、後ろにいたはずだというのに室内を物色し始めている存在に肩を落とした。
「おーいディノ、散らかってんだからそんなに動き回るんじゃねーよ」
「ごめんごめん、なんだか懐かしくなっちゃってさ」
「こんな散らかってはなかっただろ」
「あはは、確かに。それでも懐かしいもんだよ」
 笑みを浮かべて酒瓶を軽く飛び越えて寄ってくる姿はまるで犬みたいだ。制服を着ているのに無い筈の尻尾と耳がシールのようにディノへ貼り付いて見える。
「それで、キースが言っていた俺の荷物ってどこにあるんだ?」
「あー、それは向こうの……」
 このリビングを何とかしなければ、という思考は一旦横へと置いておく。今日はディノが居ない間に預かっていた荷物を引き取りに来ただけだ。大荷物を持って帰る予想はしていたが、ゴミぐらいは纏めて捨てておくべきだろう。更に持ち帰り予定の荷物が増えることにもう一度ため息をついて、ディノには荷物は別室の寝室にあるクローゼットの中だと伝えるとゴミ袋を取り出して散らかっているものをかき集めていくことにした。「中身確認したら片付け手伝うからな!」と言葉を残して行くディノに簡単な相槌を送る。あいつの荷物もここで断処理させていくべきだろうか、と二袋が一杯になったところでドタバタと駆け寄ってくる足音に手の動きを止めた。
「キース!」
「そんな大声で呼ばなくても分かるっつーの。なんだ、虫でも出てきたのか? そういうの平気だろおまえ」
「違う違う、そうじゃない! これ!!」
 ぐいっと目の前につき出してきたのはヒーロースーツを着てデフォルメされたディノとオレのぬいぐるみだ。と言っても真新しいものではなく、エリオスに入社した頃に作られたまだルーキーだった頃のもの。どのヒーローも平等に作られ、街で販売されているがそのサンプルとして司令部から渡されたものの自分のぬいぐるみなんて持っている柄でもない。扱いに困っていたところでディノがもらってくれた物だった。目を丸くして懐かしいなと発しようとしてはその先の会話を想像して口許を歪ませるだけに留めた。
「なかなか見つからないから捨てられちゃってたのかなと思ってたけど、キースが可愛がってくれてたんだな」
「……別に可愛がったりはしてねぇよ」
「そうなのか? この子達だけベッドの上にあったけど」
 首を傾げ素直に疑問を言葉にギクリと体が固まった。
 ディノがいなくなって、荷物を引き取って。ぽっかりと空いた胸の虚しさを埋めるために酒を飲んでいるとぼやけた思考の中で見つけたぬいぐるみの存在はディノの形を模していることもあって弱った心にするりと入ってくる。柄ではない。ぬいぐるみで喜ぶようなガキではない。そう分かっているのに、人間とは違う感触のぬいぐるみは抱き締めるだけで安堵を与えられるようで簡単に夢へと落ちていくことができた。結局、目を覚ました時に腕の中にある存在に虚しさを感じていたのだけれど。重たい体を起こして部屋から出ようとして、ベッドの上にぽつんと一人でいるディノの横にあげたオレも隣に置いていくことにした。そして後日、酔っぱらって視界に入って、の繰り返し。
 そんな経緯をディノに伝えたいとは思わない。酒に溺れてたことも、ぬいぐるみに存在を重ねていたことも、それに救われていたことも。
「……新しいのも用意されてんだし、そいつらは捨ててくか?」
「えっ!? ダメだよ、絶対にダメだ!!」
 手に持ったゴミ袋を広げて差し出すと、ぎゅっと二体を抱き締めて遠ざけた。
「これは俺の大切なものだから絶対に捨てないからなっ!」
「へいへい、わーったよ……」
 珍しくキツい視線を向けていたものも、袋の口を閉ざせば直ぐに綻んだ。ニコニコと笑っている姿を見ると戻ってきた時にディノに言われた言葉を思い出す。どうしても手放せなかった物と問われてもパッと浮かぶものはないけれど、手放したくなかった存在の楽しそうな姿を目にすることができた奇跡を感じていた。口が避けても言えねぇけどな、と小さく漏らすとさっさと荷物の確認を再開させるように背中を押した。
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20220220キスディノドロライ
初公開日: 2022年02月20日
最終更新日: 2022年02月20日
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