「不器用ってわけじゃないのになあ」
 思わず口から出た呟きは、無意識だったせいでそれなりに音量があったようだ。
 きょとんと瞬いた目がくるりと光を反射してこちらを見る。
「何がでしょうか」
「ああ、ごめん、口から出てた。いや、リチャードがさ。不器用ってわけじゃないのに、不思議だなあと思って」
 目の前では、ディッパーにくるくると絡め取られたはちみつが、少し時期が早かったのか甘みの少ないイチゴの上にとろりとした光を含んで降り注いでいる。ぷっくりした形の割に、ハニーディッパーで一回に取れる量はそこまで多いわけではない。キラキラと光をまき散らしながら降ってくる雫がなくなってしまうと、もう一杯分いいですかと問うような顔がこちらを向くが、それには横に首を振って仕上げにベランダで取ったばかりのミントを乗せる。
「完成ですね」
「完成です」
 気泡を閉じ込めた透明なゼリーの間にイチゴのジャムを挟んで、一番上にはリチャードに飾ってもらった形の良いイチゴとはちみつ。
 最後まで自分だけで作って、出来上がったものをエクセレントと褒めてもらうのも好きだけれど、こうやって揃いのエプロンで並んで、真剣な顔つきで、震える手で、一緒に出来上がりを楽しむのも好きだ。
「リチャードが、一緒にキッチンに立ってくれるようになるなんてなあ」
「意外だとでも?」
「まさか。嬉しくて仕方ないよ」
 出来上がった瞬間の、まるで子どものような笑顔はこの一瞬だけのもの。
 それを独占できるのは、隣にいる自分だけ。
「大好きだ」
 それに返る、蕩ける甘さを知っているのも。
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